第393話 皆で一緒に
「あ、あれは……」
「飛竜!?どうしてこんな場所に!?」
「どうなってんだいったい!?」
――シャアアアッ!!
街道から現れたのは飛竜であり、鳴き声を上げながら地上を歩いてくる飛竜の姿を見て全員が警戒態勢に入るが、レナはすぐに飛竜の背中に乗っている人物に気付く。
飛竜の背中にはミナと、彼女の背中に抱き着くコネコが存在した。その光景を見て誰もが唖然とした表情を浮かべ、レナとダリルでさえも理解が追い付けずに呆気に取られてしまう。
「ミ、ミナ!?それに皆も!?」
「レナ君!!僕達も一緒に行くよ!!」
「へへ、やっぱりあたしも行くぞっ!!」
「良かった、間に合いましたわね!!」
「ふうっ……置いていかれたらどうしようかと思った」
「うおおおおっ!!待たせたな、レナ!!」
「いえ、僕達の事は待ってはいなかったと思いますけど……」
馬車の中にはデブリ達の姿もあり、彼等はレナの姿を見ると腕を振る。どうやらアリス商会の馬車を飛竜に繋げたらしく、道行く人々は馬車を引く飛竜の姿を見て度肝を抜かれた。
唐突に飛竜に乗り込んで現れたミナ達に誰もが戸惑い、混乱する中で彼等は馬車を停止させるとレナの元に集まる。レナはミナ達が訪れた事に困惑し、どうしてここへ来たのかを問う。
「皆、どうしてここに……」
「どうしてじゃないよ!!勝手に出発するなんて酷いよレナ君!!」
「いや、それは……」
「へへっ……色々と相談したんだけどさ、やっぱりあたし達も一緒に行くぞ!!兄ちゃんの故郷を救うんだ!!」
「友達が困っている時に力を貸すのは当たり前の事ですわ!!」
ミナ達の言葉にレナ達は驚かされるが、イルミナは飛竜を連れて来たミナに視線を向け、すぐに彼女の正体に気付いた。
「あ、貴女は確かジオ将軍の姪の……いえ、カイン将軍の娘さんですか!?」
「え?えっと……確かアルト君の誕生会で会った、イルミナさん?」
『おいおい、どうなってんだ?竜騎士にしか乗りこなせない飛竜をなんで嬢ちゃんが乗りこなしてるんだ!?』
「シャウッ?」
飛竜がミナに顔を近づけて擦り寄る光景を見てイルミナもカツも呆気に取られ、全員が飛竜を乗りこなしているミナに戸惑う。レナもダリルもイルミナたちと同じ疑問を抱き、どうしてミナが飛竜を乗りこなしているのかを問い質す。
通常の飛竜は竜騎士以外の存在は背中に乗せず、そもそも従う事もない。魔物使いなどの特別な職業の人間でも飛竜を従えても乗りこなす事は出来ないはずだが、何故かミナの場合は飛竜を完全に乗りこなしていた。
「ミナ、この飛竜は……」
「あ、えっとね。実はこの子だけは僕を乗せてくれるんだ!!お父さんに頼んでこの子だけを借りて来たんだ!!」
「借りてきたって……じゃあ、ミナの嬢ちゃんは竜騎士だったのか!?」
「え、違いますよ?僕は槍騎士だよ?」
槍騎士の称号の持ち主だと思われたミナが飛竜を乗りこなしている事に動揺が広がり、どうして竜騎士でもない人間に飛竜が乗りこなせるかというと、ミナがこちらの飛竜の出生に関わっているという。
「実はこの飛竜は卵の時から僕が育てたんだ!!だから、僕の事を家族のように思っていてくれて懐いてくれるんだよ」
「シャアッ!!」
「か、家族?なるほど、刷り込みか……だけど、そんな方法で飛竜を乗りこなせるのか?」
「ううん、この子は僕がずっと一緒に居て面倒を見ていたから背中に乗せてくれるけど、他の人は絶対に背中を乗せないんだ」
「そのせいであたしも姉ちゃんにしがみつかないと背中に乗せてくれなかったんだよ」
「そ、そうだったのか……」
「飛竜の生態は謎に包まれていると聞いてましたが、まさか竜騎士以外の称号の人間でも飛竜を乗りこなす事が出来るなんて……」
ミナの言葉にイルミナは衝撃を受けた表情を浮かべ、魔物の専門家でもある冒険者達でさえも飛竜の生態に関しては完全に解明していなかった。
だが、移動手段である飛竜を連れて来たミナはこれでレナの手伝いが出来ると確信し、彼の両手を掴んで頼み込む。これならば自分達も一緒に同行できることを告げ、一人だけ危険な目に遭わせない事を宣言する。
「レナ君、これで皆一緒に行けるよ!!皆で力を合わせて戦おう!!」
「ミナ……でも、気持ちは有難いけどこれから俺達が向かう場所は……」
「危険だから付いてくるな、なんて今更いうなよ」
「ここまで頑張って準備したミナの気持ちを裏切るのは筋が通らない」
「そうですわ!!友達ならば遠慮は不要、困った時はお互い様ですわ!!」
皆を危険な目に遭わせるかもしれない事にレナはミナ達の協力を拒もうとするが、全員がここまで来た以上は意地でも同行するという覚悟を抱き、他の者にも協力を申し込む。
「僕達も一緒に行きます!!もうお父さんと叔父さんの許可は下りてます!!」
「カイン大将軍とジオ将軍の!?」
『……まあ、そういう事なら仕方ないんじゃないのか?』
「将軍といえど、自分の娘と姪には甘かったか……いや、この場合は、敢えて危地に送り込む事を考えると、厳しいのか?」
ミナが将軍の名前を出すと金色の隼もサブの弟子達も何も言えず、正直に言えば飛竜という戦力は戦闘の際には期待できる存在だった。
それに同行を申し出たミナ達の実力も決してサブの弟子達には劣らず、戦力としては非常に心強い事は対抗戦の審判役を務めたイルミナも知っていた。
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