第392話 まさかの援軍
「……行っちまったな」
「ミナさん、結局は戻ってきませんでしたね」
「いったい何処へ行かれたのでしょうか……あら」
「ん?何だ、急に暗く……」
「おい、何か音がしないか?」
「上の方から聞こえるような……うわっ!?」
「っ……!?」
完全に見えなくなるまで馬車を見送ったコネコ達は戻ってこなかったミナを心配し、彼女が何処へ行ったのか疑問を抱く。このままミナだけはレナとちゃんとしたお別れをせずに終わってしまうのかと思われた時、唐突にコネコ達の立つ場所に影が差す。
不思議に思ったコネコ達は上空を見上げると、そこには巨大な生物が上空からゆっくりと降りてくる光景が映し出され、慌てて全員がその場を離れた。
「シャアアアッ!!」
「な、何だぁっ!?」
「魔物っ!?」
「いえ、これは……ひ、飛竜ですわっ!?」
「どうしてこんな場所に……」
街道に降り立ったのは背中に翼を生やした蜥蜴のような生物であり、体長は4メートルは存在した。間違いなく、ヒトノ国の竜騎士隊が操る「飛竜」と呼ばれる竜種で間違いなく、唐突に現れた飛竜に対してコネコ達は警戒態勢に入る。だが、そんな彼女達の前に飛竜の背中からある人物が話しかけて落ち着かせる。
「待って待って!!皆、僕だよ!!」
「あ、貴女は……!?」
その人物を見た瞬間、全員が驚愕のあまりに目を見開いた――
――十数分後、時刻は夕方から夜を迎えようとした頃、レナ達の乗り込んだ馬車は金色の隼が経営する建物の前に到着する。
そして建物の前には既に3台分の馬車が用意され、黄金級冒険者のイルミナ、カツ、ダンゾウの3人、それにマドウが送り込んだ腕利きの魔術師が8名揃っていた。
「……え、ちょっと待って。何で君たちがここにいるの?」
「何だ?知り合いかレナ?」
「ちっ……」
「……昨日ぶりだな」
『…………』
「ど、どうも……」
「あらあら~」
「はあっ……」
マドウが用意した魔術師の内の6名はレナの知っている人物であり、昨日の対抗戦にて激闘を繰り広げたサブの弟子達と、先日に決闘を仕掛けた「シデ」も含まれていた。彼等がこの場所に存在す事にレナは驚くが、ブランが代表して説明を行う。
「俺達がここにいるのはあんたの援軍のためだよ。老師からだいたいの話を聞いている、故郷を取り返すためにあんたも戦うんだろう?だから俺達が来てやったんだよ」
「あ、あの……それと、老師から伝言も受けています。昨夜はすまなかったと……」
『そういう事だ。今回ばかりはお前の味方をしてやる』
「……老師に言われたから来ただけだ。馴れ馴れしく話しかけたりはするなよ」
「よろしくね~」
「……ふんっ」
ブラン、ヘンリー、ツルギ、シュリ、ヒリン、シデの6名はサブに命じられて今回のホブゴブリンの軍勢討伐のために送りつけられたらしく、恐らくはレナに攻撃を仕掛けて牢屋に閉じ込めた事に罪悪感を抱いたサブの取り計らいだろう。
マドウから命じられて弟子たちを送り付けたというのもあるだろうが、確かに全員が年齢は若いが魔術師としての腕前は確かであり、サブの贔屓で彼が自分の弟子を送り込んだとは言い切れない。だが、昨日に全力で戦った相手を送り込んでくるあたり、少々自分の言う事を聞かなかったレナに対しての嫌がらせも混じっているように思えた。
「よ、よろしくお願いします……それと、シデ君も来てくれたんだ」
「ふん、まさかあの小娘がお前の所の人間だったとはな……まあいい、あんな物は僕には必要ない。僕は親父とは違うんだ……」
「シデ君?」
「放っとけよ。そいつ、親父がいなくなってからいつもそんな感じだ」
シデはぶつぶつと小声で自分は親父とは違うと呟き、そんな彼にレナは心配するがブランが抑える。ブランの言う通りに今はシデを放っておいた方が良いと判断したレナはここにいないサブに感謝する。
性格はともかく、戦力的に考えればブラン達の同行は有難く、特に広域魔法が扱えるヘンリーは集団戦では大いに役立つと思われた。だが、気になったのは他の2名の魔術師が姿が見えない事だった。
「あと二人の魔術師は何処にいるの?確か話では8名の魔術師を用意すると聞いていたけど……」
「ああ、先に馬車に乗って待機してるよ。愛想の悪い奴等でな、あんな奴等と一緒に馬車で何日も過ごすと思うと気が重くなるぜ」
「で、でもでも……マドウさんの弟子だからきっと凄い人達だと思います」
「そうね~確かに只者には見えなかったわ~」
残りの二人の魔術師は既に馬車に移動しているらしく、レナ達もブラン達との会話を切り上げるとイルミナの元へ向かう。今回の遠征は彼女が指揮を執る事になっているため、出発前に挨拶を行おうとした。
「イルミナさ……ん?」
「どうした、レナ?」
イルミナの元へ近づこうとしたレナは何故か立ち止まり、不思議に思ったダリルは彼に視線を向けると、レナは何故か急に振り返る。その行為にダリルは疑問を抱いて同じく振り返ると、途轍もない光景を目にした。
「な、何だありゃああああっ!?」
『うおっ!?』
「何事ですか!?」
「どうした?」
ダリルの驚愕の声に全員が驚愕の表情を浮かべて振り返ると、彼の視線の先の光景に気付き、全員が大口を開いて呆気に取られてしまう
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