第386話 起きろ!!
――イルミナとの交渉を優位に勧める事が出来たレナ達は馬車に戻ると、真っ先にコネコは自分の手柄を自慢するために馬車に残された者達に声を掛ける。
「へへっ……姉ちゃん達、やったぞ!!交渉は大成功だ!!」
「ふがぁああっ……」
「むにゃむにゃっ……」
「ZZZ……」
「いや、何で寝てんだよ!?こら、起きろ!!こっちが苦労してるときに先に寝るな!!」
馬車の中にはミナたちが横たわり、全員が眠っていた。数日は寝ないでも平気だと言い張っていたシノに至ってはどこから取り出したのかハンモックで身体を休めていたため、コネコが怒りの声を上げて全員を起こす。
最も時間帯的には既に夜を明けて朝方を迎えようとしているため、全員の眠気がピークに達して眠ってしまうのは仕方がない。レナとダリルも状況が状況でなければ眠気に襲われていただろうが、故郷が危険だというのに落ち着いて眠っていられるはずがない。
「ほら、起きろ姉ちゃん!!ケツ叩くぞ!!」
「ううっ……あれ、もう朝?」
「……はっ、レナが女の子になって無双する夢を見ていた」
「どこの世界線の兄ちゃんの夢を見てんだよ!!ほら、いいから起きろ!!」
「ううんっ……あ、あと5分眠らせてほしいですわ」
「いいから早く起きろって!!」
コネコに急かされて全員が渋々と目を覚ますと、一先ずは馬車を移動させて屋敷へと戻る。イルミナの方からはルイが戻り次第、ダリルの屋敷に出迎えの馬車を送るという事で全員が一先ずはダリルの屋敷へと向かう――
――移動の際中にレナは交渉の出来事をミナ達に話すと、本当にコネコが大活躍した事に全員が驚き、彼女がヒヒイロカネのネックレスを所有していた事に戸惑う。
「まさかあの時に消えたヒヒイロカネのネックレスをコネコさんが持っていたなんて……」
「というか、何で僕達にまで黙ってたんだ!?」
「だって、しょうがないだろ?これはあたしがシデの奴から貰ったんだからさ。その内に皆に見せつけて驚かそうと思ってたんだよ」
「何にせよ、コネコのお陰で交渉は上手く勧められたよ。偉いぞコネコ」
「へへへっ……」
レナがコネコを抱き寄せて頭を撫でまわすと彼女は照れくさそうな表情を浮かべ、一方でナオの方はコネコに注意を行う。
「ですがコネコさん、そのヒヒイロカネのネックレスは大切に保管しておいた方が良いと思います。盗賊ギルドの連中もそうですが、それは非情に価値の高い代物です。他の人間に知られたら狙われる恐れがあります」
「あ、それもそうか……どうしようこれ、おっちゃんが預かってくれる?」
「いや、ダリルさんに預けるのはちょっと……またゴエモンが現れた時に盗まれるかもしれないし、ここはジオ将軍に預かって貰うのはどうかな?」
「え、叔父さんに?僕は問題ないと思うけど……」
「というか、兄ちゃんが持ってれば安全じゃないのか?交渉の時も兄ちゃんが身に着けていれば役立つだろうし、ほらほら付けてやるよ」
「え、俺が……?」
コネコはレナにネックレスを渡すと、仕方なくレナは預かる事にした。コネコの言葉も一理あり、再交渉は本日中に行われる事を考えれば確かに他人に預けるよりもレナが装備していた方が良いかもしれなかった。
屋敷まで馬車が辿り着くと、レナ達は今に移動してとりあえずは眠気を抑えるためにコーヒーを飲む。ルイが戻り次第に金色の隼が出迎えの馬車を用意するとの事なのでレナ達はそれまでは身体を休める。
「ふうっ……やっと落ち着いた」
「お前ら、昨日から大変だったな。折角試合に勝ったというのにこんな事が起きるなんてな……」
「ダリルさんだって昨日から寝てないじゃないですか。辛いのは皆一緒です」
「俺はの事はどうでもいいんだよ。それより、問題はここからだ。なあ、レナ……お前、その……イチノの街に戻るつもりか?」
『っ……!!』
これまで話題を避けていたが、ダリルが意を決したように尋ねる。その言葉を聞いてコネコ達は顔を上げると、レナは神妙な表情を浮かべて頷く。
「イチノの街には俺も同行させてもらいます。金色の隼だけに任せる事は出来ないし……それに、あの街を襲ったのは俺が暮らしていた村を滅ぼした連中です。野放しには出来ない」
「そうか……そうだよな、お前が冒険者になったのも自分の村を取り戻すつもりだったからな」
「なら、レナ君は敵討ちが終ったあとに王都へ戻ってくるの……?」
ミナの不安そうな言葉に他の者達も黙ってレナを見つめると、レナは即答は出来ず、無意識に天井を見上げる。最初は彼が王都へ戻って来たのは自分がより強くなるためであり、魔法学園に入ったのも他の人間と交流して訓練を受ける事で自分が強くなると信じていたからである。
もしもイチノに戻って敵討ちを果たしたとき、レナは魔法学園に入学した理由を失う事に等しい。レナが強くなりたいという気持ちの根本は自分の村を奪った魔物達の「復讐」のためだった。
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