第353話 対抗戦第四試合〈ナオVSブラン〉
「な、何か凄い試合だったな……今まで一番恐怖を感じたぞ」
「そ、そうだな……あのヒリンとかいう姉ちゃん、いや兄ちゃんか?とにかく、凄かったな」
「魔術師の方なのにどうしてあれほどの力を……もしかしたら特異体質かもしれません」
「……怖かった(←ベンチの下に彼ながらも怯えるシノ)」
「まあ、けどミナもよく頑張ったよ。これで2勝と1引き分けか……となると、俺とナオ君のどっちかが勝てば対抗戦は俺達の勝ちだね」
「そういう事になりますね」
ミナは勝利する事は出来なかったが、引き分けに持ち込んだ事でブラン達の勝利は亡くなった。仮にこの後の試合をブラン達が勝ち続けても対抗戦の結果は引き分けで終わるため、彼等の勝利はなくなった。
だが、レナ達のほうも敗北がなくなったからといって油断は出来ず、残された相手は4人の魔法科の生徒を倒し、ドリスを追い詰めたブランと実力が未知数のヘンリーという少年だった。
「まさかヒリンの奴が引き分けとはな……ちっ!!次の試合は負けられねえか、おい!!今度は俺が出るぞ!!」
「……なら、次の試合は僕が出ます」
ブランが名乗りを上げるとナオが目つきを鋭くさせて前に出た。レナではなく、ナオが名乗りを上げた事にブランは少し驚くが、すぐに余裕の笑みを浮かべる。
「なるほど、俺の相手はお前か……そういえばあの金髪女の親友だと言っていたな?はっ、馬鹿な奴だぜ。親友があんな目に遭ったのに俺に挑むのか?」
「敗者が偉そうに語るな。勝ったのはドリスだ!!」
「何だとてめえっ……」
「待たんか!!試合が始まる前に争ってどうする馬鹿者が!!」
「うむ、ナオよ。気持ちは分かるがお主も挑発紛いの言動は控えよ」
「「……すいません」」
サブとマドウに注意されてナオとブランは渋々と謝罪するが、視線だけは相手から目を離さず、火花を散らせながら闘技台へと向かう。その様子を見てイルミナは本当にこの二人を戦わせて大丈夫なのかと不安を抱く。
互いに強い敵意を抱く相手同士を戦わせれば大怪我を追う危険性は高く、下手をしたら最悪な事態に陥る可能性もある。しかし、対抗戦は試合であると同時に互いの誇りを賭けた「決闘」でもあるため、本人たちが承諾したのならばイルミナには止める事は出来ない。だが、万が一の場合を考えて自分達もすぐに動けるようにするため、イルミナは注意を行う。
「事前に警告しておきますが、もしも相手に必要以上の危害を加える行動をすれば試合はすぐに中断します。良いですね?」
「ああ、問題ない」
「構いません」
「……では、試合を開始します。準備してください」
ブランが西側に移動すると、ナオの方は隠れるつもりはないのか闘技台の中央部に移動を行う。その様子を見てイルミナは準備が整ったことを確認すると、彼女は合図を行う。
「試合開始!!」
遂に試合が始まると、ナオは真っ先に西側の石壁に隠れたブランを探すために動き出す。ドリスとの戦闘でブランが扱う魔法は把握しているナオは慎重に行動を行い、石壁に身を隠しながらブランの捜索を行う。
(シノさんとコネコさんならきっとすぐに見つけられるんでしょうが……未熟な僕では探すのは難しいですね)
暗殺者と忍者であるシノとコネコは他人の気配を感じ取って位置を掴む事が出来るが、ナオの場合は二人ほど上手くは他人の気配を感じとる事は出来ない。しかし、ある程度の距離まで近付けば位置を捉える事は出来るため、ナオは石壁に身を隠しながらブランの位置を探る。
相手はドリスを傷つけた憎き男とはいえ、魔術師としての実力は一流である事は間違いなく、決して油断はしない。ナオは上手く身を隠しながら隠れているはずのブランを探しだそうとした時、頭上の方から熱気を感じ取って彼女は上空を見上げた。
「なっ……!?」
――ナオの視界に映し出されたのは、上空に3つの黒炎が出現し、地上へ向けて落下する。それを見たナオはこの場に留まるのは危険だと判断すると、彼女は石壁を乗り越えて闘技台の中央部まで避難した。
結果的にはそれが功を奏して上空に放たれた3つの黒炎は西側の石壁に覆いこまれた通路に衝突した瞬間、黒炎が広範囲に散らばって通路を覆い尽くす。もしもナオが反応に遅れて石壁に遮断された通路内に存在すれば黒焦げと化していただろう。
「黒炎流槍!!」
しかし、闘技台の西側の端からブランの声が響き渡ると、今度は2つの黒炎が上空へ向けて放たれ、まるで投擲された槍のような軌道で闘技台の中央部へと放たれた。それを確認したナオは咄嗟に東側の石壁に遮られている通路に逃げ込むと、今度は闘技台の中央部に黒煙が衝突し、炎が拡散した。
その様子を見てナオはブランの意図に気付き、彼は西側から黒炎を空に放って攻撃を行い、闘技台を炎で覆いこんでナオを追い詰めようとしていた。ブランの作戦に気付いたナオは歯ぎしりを行い、姿を見せずに自分を仕留めようとする彼に怒りを抱く。
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