第335話 一触即発
「こんな物、ぶっ壊してやる!!」
「無駄、そんな事で壊れはしない」
コネコが魔法陣を蹴りつけるが、鋼鉄のように硬い壁に弾かれたような感触が広がる。魔法陣によってレナ達はサブの弟子と遮られ、苛立ちを浮かべながらどなりつけた。
「いったい何の真似だ!!どうしてこんなことをする!!」
「れ、レナ君……こいつら、レナ君に会いに来たと言ってきたんだ」
「何だって……!?」
被害を免れた騎士科の生徒達が口を挟み、彼等によると教室で待機中に唐突にサブの弟子たちが押し入り、レナの事を尋ねてきたらしい。だが、騎士科の生徒達は彼等の事を怪しく思い、レナ達が医療室に向かったことを黙っていると唐突にブランが襲いかかって来たという。
ブランは学校内では禁止されている魔法の使用を堂々と破り、黒炎を見せつけて脅しにかかった。それで何人かの生徒が止めようとしたが、逆に返り討ちに遭った倒されたという。
「こいつら、頭がおかしい!!何もしていない俺達に襲いかかってきやがったんだ!!」
「そうよ!!いったい私達が何をしたというのよ!?」
「おいおいおい、寝ぼけた事を言ってんじゃねえぞ……お前等が俺達の質問にはっきりと答えれていればこんな事にならなかったんだろうが?ああっ!?」
「あ、あの……ブランさん、それは流石に言い過ぎでは……この人達も悪気はなかったようですし、ね?」
「ヘンリー!!てめえはどっちの味方だ!?」
「ひいっ!?ごめんなさい、ごめんなさい!!」
少女のように小柄で顔立ちが整った少年がブランを止めようとしたが、ブランは少年を怒鳴りつけると彼はあっさりと頭を下げる。そんな情けない彼を見て魔法陣を維持していた少女は呆れたように魔法の解除を行い、事情を説明した。
「私達がここに来たのはサブ老師が話していた魔術師に用事があるだけ、ただそれだけだ」
「けど~皆さん、誰もレナさんの居場所を答えてくれないから困ってたんですよ~」
『こちらとしても無用に争うつもりはない』
「……おい、ちょっと待て。なんでそいつだけ喋らないんだよ。何処から取り出したんだそのでかいノート」
残りの二人の弟子も話に加わり、一人はシノよりも身長が高い大柄な少女、もう一人は全身をフードで覆い隠した青年だった。片方はおっとりとした口調に対し、もう片方は異様に大きいノートに筆談で会話を行う。
5人それぞれが別々の特徴を誇り、全員がレナに用事があるといって訪れてきたらしい。だが、会いに来るだけならばわざわざ騎士科の生徒達を痛めつける必要はなく、いくら彼等が聞かれた事に答えなかったとしても攻撃を仕掛けるのはやりすぎだった。
「俺がレナだ。お前等、いったい何の用だ!!」
「お前がレナか……なるほど、確かに聞いていた通りに男の癖にやたらと綺麗な顔をしてやがる」
「シュリ君といい勝負~お姉さんの好みかも~」
「す、すす、すいません!!怒って当然ですよね!!でも、僕達も貴方に用事があるんです!!」
「……サブ老師からお前の事は聞いている」
『うちの後輩のシデを破ったそうだな。中々に優秀な魔術師だと聞いている』
レナに巡り合えた5人はそれぞれがここへ来た目的を話す。彼等によるとレナの存在はサブから聞いていたらしく、実際にどんな人物なのかを確かめるために会いに来たという。
「サブ老師はお前の事をやたらと誉めていてな。なんでも弟子に加えたいとまで言っていたぜ」
「私達はそれが気に喰わない」
「ろ、老師は滅多に僕達以外の魔術師は褒めないのに……嫉妬します」
「だから~どんな人なのか気になって会いに来たの~」
『もしもサブ老師の言葉通りに優秀な魔術師だった場合、放置はできない』
「……どうでもいいんだよ、そんな事」
「れ、レナ君?」
5人の言葉を聞いてレナは徐々に怒りを抱き、別に自分に会いに来たまではいい。だが、自分の居場所を言わなかったからといって騎士科の生徒に手を出した事が許せず、レナは5人の元へ歩み寄る。
レナの様子がおかしい事に気付いた5人は咄嗟に身構え、最初に動いたのはシュリだった。彼女は再びレナの前に「結界魔法」と呼ばれる魔法陣を形成した。
「止まれ、お前とやり合うつもりは……」
「うるさい」
しかし、目の前に出現した魔法陣に対してレナは掌を伸ばすと、付与魔法を発動させて紅色の魔力を滲ませる。その様子を見た5人の魔術師は驚き、本当に彼が自分達の師が言っていた通りの「付与魔術師」である事を知る。
付与魔術師は世間一般では魔術師の落ちこぼれだと思われているが、そんな魔術師をサブが褒め称えていたという事実に5人は疑問を抱き、いったいどのような人物なのかと会いに来た。だが、実際に出会ったレナは顔が綺麗な点を除けば何処にでもいる普通の少年にしか見えなかった。
――しかし、彼等の認識は次のレナの行動によって崩壊し、彼等は最も怒らせてはならない存在を本気で怒らせてしまった。
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