第334話 教室に襲来
「……学園長は私の勝利と認めてくれましたけど、正直に言えば試合に勝って勝負には負けましたわ。相手は明らかに本気を出しておりませんでしたし、それに負傷も私の方が激しかった。もしもこれが試合ではなく、実戦だったとしたら……私の敗北でしたでしょう」
「何言ってんだよ!!ドリスの姉ちゃんはよく頑張って!!」
「コネコの言う通りだよ、それにマドウ学園長がドリスさんの勝利を祝ったのは最後まで意識を保っていたからだよ。あれは誰が見てもドリスさんの勝ちだ」
「二人の言う通りだよドリス、気に病む必要はない」
「よく頑張った」
「ドリスさん、格好良かったよ!!」
「ああ、お前はよくやった!!だから恥じることはない!!」
「……皆さん、ありがとうございます。ですが、今は一人にさせてください」
レナ達はドリスを慰めるが、彼女はどうしても自分の勝利を認めることが出来ず、涙を流しながら全員に退出を促す。そこまで言われるとレナ達は何も出来ず、アイラに彼女の事を任せて医療室を退室した。
「ドリスさんの事は任せてください。私が必ず完璧に治療しますからね」
「ありがとうございます、アイラさん」
「いえいえ、では皆さんも他の人に気付かれないように気を付けて帰ってください。本当は今の時間は教室の外へ出る事は禁止されているんでしょう?」
「はい……」
「誰にも言いませんから皆さんも早く戻った方が良いですよ」
『ありがとうございました』
アイラの言葉にレナ達は礼を告げ、医療室を退室する。廊下に出た瞬間に全員の表情が暗くなり、対抗戦の結果は間違いなく魔法学園側の「敗北」だった。魔法科の生徒とサブの弟子たちの実力は大きな差がある事を思い知らされる結果になった。
一応はドリスがブランを破った事で面目は保たれた感じだが、まさか魔法科の生徒があれほど圧倒的な敗北を喫するとはレナ達も想像しなかった。
「あいつら……態度はでかいが、本当に強かったんだな」
「うん、悔しいけど、認めたくないもないけど……あの子達は強い」
「ああ、くっそ……なんかむしゃくしゃする!!魔法科の生徒の奴等なんてドリスの姉ちゃん以外は嫌いだったはずなのに」
「気持ちは分かる」
対抗戦で魔法科の生徒と激闘を繰り広げたレナ達だからこそ、まさか魔法科の生徒がサブの弟子に圧倒的な敗北をする光景を見て落ち着く事が出来ない。自分達と切磋琢磨した魔法科の生徒が敗北した事にレナ達も落ち着かず、無性に悔しい思いを感じた。
魔法科の生徒は決して弱くはなかった、少なくとも日々の訓練によって彼等も実力を身に着けているはずであり、将来は立派な魔術師になれる才能はあった。だが、サブの弟子たちは格が違い、同世代の魔術師でも大きな力の差を示した。彼等の戦いぶりを見てはレナでさえも勝てる自信はない。
(あの子たち、確かに強かった……シデ君の言う通りだ)
レナがアルトの誕生会にて戦ったシデは決して弱いわけではなく、むしろ魔法科の生徒と比べればドリス以外に生徒にも勝る実力は持っていた。だが、そのシデでさえも自分が敵わない存在だと認める5人の弟子の事を思い出すだけでレナは拳を握り締める。
学科が違うの必ずしも顔を合わせるとは限らないが、レナは魔法学園にとんでもない奴等が訪れた事を自覚する。全員が落ち込んだドリスの姿を思い浮かべてため息を吐きながら教室に戻ろうとした時、唐突に激しい振動が襲い掛かる。
「うわっ!?な、何だ!?」
「教室の方から音が……」
「いったい何があったんだよ!?」
慌ててレナ達は教室の扉を開くと、そこには数名の生徒が倒れており、何故かサブの弟子達も教室内に存在した。倒れている生徒の全員が騎士科の生徒であると知ったレナ達は何が起きたのかを理解し、サブの弟子達に向き合う。
「お前等、何をしている!!」
「あんっ?誰だてめえら……」
レナが怒鳴りつけると、騎士科の生徒の一人の頭を掴んだ「ブラン」が振り向く。彼は既に治療を終えたのかドリスから受けた傷跡は完治しており、生徒の頭を握り締めながら廊下から現れたレナ達を見て訝しむ。
「ぐっ……こ、この野郎!!」
「おっと、下手に動くなよ。俺の魔法は知ってるだろ?黒焦げにされたいのか?」
「ひいっ!?」
「おい、何をしている離せっ!!」
「んだと……誰に命令してんだてめえっ!!」
「お前だよ馬鹿っ!!」
ブランはレナの言葉に怒りを示すが、同じ騎士科の仲間を痛めつけられて怒りを抑えきれるはずがなく、レナは彼の元へ向かう。
他の者達も我慢できずにブランの凶行を止めようとした時、彼の隣に立っていた小柄な少女が間に割って入った。
「プロテクト」
「うわっ!?」
「これは……結界魔法!?」
「ちっ……邪魔をするなシュリ!!」
シュリと呼ばれた少女は魔剣を引き抜くと刃の先端から「魔法陣」を生み出し、ブランに詰め寄ろうとしたレナ達を遮る。先頭を歩いていたレナは魔法陣によって弾かれ、慌てて後ろに立っていたミナとコネコが受け止める。
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