第332話 対抗戦、再び
『まったく、サブの言う通りに血の気が多いのう……この者はそういっておるが、他の者はどうじゃ?』
「異論はない」
「別にいいんじゃないの~?」
「えっとえっと……」
「…………(黙って親指を下に向ける)」
最初に騒ぎ出した弟子以外の4人にもマドウは尋ねるが、意外な事に全員が反対を示さず(一人だけ迷っている態度の者がいるが)、彼等も自分達と魔法科の生徒が同列に扱われる事には納得していないらしい
魔法科の生徒と5人がにらみ合う様子を確認したマドウはその場で考え込み、仕方なく彼等の望み通りに勝負をさせることにした。マドウ自身もサブが送り込んだ5人の弟子の実力を計りたく、決闘を認めた。
『ふむ、儂としては魔法科の生徒諸君が承諾するのであれば今回の勝負、実行しても構わないが……意見を聞かせて貰おうか』
「勿論、やってやりますよ!!」
「サブ魔導士の弟子だからって調子に乗りやがって……!!」
「魔法科の生徒の力、思い知らせてやりますわ!!」
「お~いいぞ!!ドリスの姉ちゃんやっちまえっ!!」
「頑張れ~!!」
魔法科の生徒を代表してドリスが前に出ると、他の生徒達も応援を行う。少し前までは魔法科の生徒を敵対視していた生徒達も応援を行い、こんな形ではあるが魔法学園の全校生徒の心が一つになった。
挑発を行った男も退く気はなく、自分達こそが優秀である事を示すために堂々とドリスを睨みつける。二人の間に火花が散り、一触即発の雰囲気に陥るがマドウが杖を地面へ叩きつけた。
「ぬんっ!!」
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
『うわっ!?』
マドウが杖を突いた瞬間、地面に振動が走って興奮状態に陥っていた生徒達は驚愕する。その様子を見てマドウは生徒達を強制的に落ち着かせると、冷静に対抗戦を承諾を宣言する。
『皆の意思は伝わった。ではこれより、1時間後に対抗戦を行う。その間に魔法科の生徒は5名の選手を厳選し、準備を行うのだ』
「わ、分かりましたわ……」
「流石はヒトノ国最強の魔導士……恐れ入るぜ」
ドリスもサブの弟子もマドウの気迫に圧倒され、逆らう事は出来ずに言われた通りに全員が行動を開始する。
その様子を見ていたレナはドリスを心配する一方、サブの弟子たちの事も気にかかり、対抗戦が行われるまでの間に彼等と接触できないかと思ったが、マドウの言葉に遮られた。
『対抗戦が行われるまでの間、騎士科の生徒は教室で自習を行いなさい。また、今回の試合は教室にて用意されている映像水晶を利用し、室内での観戦を認める。くれぐれも勝手に教室から出て行かないように!!』
「何だよ、今回は観客席から見れないのか」
「それだと、応援できないね……」
「仕方ないだろ。前にあんなことがあったからな……」
「…………」
前回の騎士科と魔法科の対抗戦の時の騒動の件もあり、生徒の安全のために今回の対抗戦は観客席は設けず、室内での観戦となった。その話を聞いたレナ達はドリスを応援出来ない事に落胆するが、その一方でレナは教室に映像水晶を用意するというマドウの言葉に違和感を抱く。
以前にレナはアルトの誕生会にてマドウとサブの策略によってシデと戦わされた事を思い出し、今回の対抗戦も二人が仕組んだのかと考えた。だが、サブの弟子たちの反応は演技とは思えず、もしかしたら彼等も嵌められたのではないかと推察した。
(シデ君の話だと、サブ魔導士の弟子の中でも優秀な人材らしいけど、妙に血の気の多い奴もいたしな……朝礼前にマドウさんが何か吹き込んだのかな?)
一人だけやたらと魔法学園の生徒に対抗心を抱いている弟子がいたのは間違いなく、マドウが何かを仕掛けた可能性が高いのは最初に挑発を行った男の可能性が高い。
(まあ、今はドリスさんの心配と、サブ魔導士の弟子がどれほどの実力者なのかしっかり見ておこう)
魔法科の生徒の中で間違いなくドリスは指折りの実力者である事は間違いなく、レナの見解ではドリスも対抗戦以降、魔法の腕に磨きが掛かっていた。実際に合成魔術をいくつか編み出し、大迷宮の探索の時も彼女が居なければ危ない場面もあった。
ドリスに対してサブの弟子たちはどのように戦うのかは気になり、レナ達は1時間後に行われる対抗戦を心待ちにした――
――しかし、この対抗戦は開始されてからわずか30分足らずで終了してしまい、結果としてはサブの弟子が4勝、魔法科の生徒は1勝で終わってしまう。勝利したのは大将を勤めたドリスのみであり、他の生徒はサブの弟子であるブランに敢え無く破れてしまう。
たった一人だけ勝利したドリスの負傷も激しく、彼女は勝つには勝ったが右半身を火傷し、まともに立つ事も出来ない状態だった。1勝4敗という形で魔法科の生徒は敗北を喫した事により、魔法学園の生徒達はサブの弟子の実力を嫌という程思い知らされた。
レナ達は医療室に運び込まれたドリスの元に急ぎ、アイラの治療を受けてどうにか意識を取り戻したドリスから話を聞く。彼女は悔し気な表情を浮かべ、涙を流しながらも試合の内容を答えた。
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