第330話 シデの再戦
「あれ、あの子……」
「ん?誰だあいつ?」
「知り合いか?」
「あれは確か……シデさんでしたっけ?」
「思い出した!!アルト王子の誕生会にいた……」
「サブ魔導士の弟子のシデさん、でしたよね」
レナの声を聞いてデブリとコネコは前方に視線を向けると、2人は知らない顔の少年が立っており、ミナ達の方は驚いた声を上げる。
先日に行われたアルト王子の誕生会に参加していた者達はシデの存在に気付くと驚いた声を上げ、一方でシデの方もレナ達の存在に気付き、表情を歪ませる。しかし、すぐにレナの元へ歩み寄り、彼の前に立ち止まった。
「お前……ようやく見つけたぞ!!」
「見つけたって……」
「丁度いい、ここであの時の借りを返してやる!!俺と勝負しろ、マドウの弟子!!」
「ええっ!?急に何を言い出すんですの!?」
シデはレナを指差して決闘を宣言すると、通行人は何事かと視線を向け、慌ててミナが間に割って入る。
「ちょ、ちょっと落ち着いて!!シデ君、でいいんだよね?」
「何だお前は!?こいつの女か!!俺の邪魔をするな!!」
「えっ!?いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「そうだぞ!!兄ちゃんの女はあたしだからな!!」
「そうなのっ!?」
ミナはレナの恋人と勘違いされて満更でもない表情を浮かべるが、すぐにコネコが言い返す。だが、シデは二人を振り払うとレナの肩を掴み、瞳に炎を宿して決闘を申し付けた。
「俺ともう一度勝負しろ!!あれから僕は修行したんだ、もう二度とお前の様な奴に後れを取るか!!」
「何だこいつ……急に勝負なんて変な奴だな」
「ははん、分かったぞ。こいつ前に兄ちゃんに負けて仕返しするために探してたんだな?」
「う、うるさい!!外野は黙ってろ!!」
「ちょっと、止めてください」
軽口を叩くコネコにシデは腕を払おうとしたが、その腕をレナは掴んで止めると、彼は怯みながらも怒鳴り散らす。必死に引き剥がそうとするが意外とレナの握力は強く、振りほどく事が出来ない。
ちなみに今回は付与魔法の類で拘束しているわけではなく、レナの純粋な握力で腕を掴んでいるだけなのでシデの筋力がレナよりも劣っている事を意味している。最も日頃から厳しい訓練を重ねるレナに対し、魔法の練習しかしていないシデが腕力で勝てるはずがなく、彼がどれだけ力を込めようとレナの手を引き剥がせない。
「くっ……このっ、離せ!!」
「……勝負がしたいというのなら場所を移動しよう。ここからそう遠くない場所に空き地がある。そこで勝負するのはどうですか?」
「うっ……いいだろう!!但し、他の奴等は付いてこさせるな!!これは僕とお前の勝負だからな!!」
「何なんだよこいつ……勝手な奴だな」
「レナさん、どうしますか?」
あくまで二人だけ勝負をしたいと言いつけるシデに対し、ナオはどのように対応するのかを問う。盗賊ギルドの件もあり、出来ればレナは単独行動は避けなければならない立場だが、シデに勝負を承諾した以上は断れないと判断して彼の言葉に従う。
「悪いけど、皆は先に行っててよ。俺はシデ君と勝負が終ったら家に戻るから」
「ふん、無事に戻れると思うなよ……俺はあれからもっと強くなったんだ!!もう油断はしない、全力で叩き潰してやる!!」
「……仕方ありませんわね。では、私達は先に戻ってますわ。荷物は私達が運んでおきます」
シデの態度を見てドリスはため息を吐き出し、彼女はデブリに指示を出して空中に浮かんでいる籠手が所有している荷物を運び込む。レナは皆に礼を告げてシデと共に街道を移動し、勝負の場所に都合がいい空き地へと向かう――
――数分後、路地裏を通り抜けて以前にも入ったことがある空き地へとレナは辿り着く。この場所でかつてレナはリッパーと対峙しており、人目に付かない場所なので勝負をしても問題はないと判断してシデと向かい合う。
シデの方はサブが愛用する「魔剣」を既に取り出しており、剣と杖を組み合わせた独特の武器を握り締めて身構える。その姿に対してレナは籠手を装着すると、お互いに離れて距離を開く。
魔術師同士の決闘の場合は10メートル以上離れるのが規則だが、生憎とこちらの空き地はそれほど敷地が広いわけではないのでせいぜい7、8メートル程度の距離しか離れられない。
「あの時は油断していただけだ……絶対に負けないからな」
「御託はいいから、かかってきなよ」
「な、何だと!?」
レナはシデの言葉を聞いても全く動じず、その余裕の態度が気に入らないのかシデは怒りを抱き、それでも問答無用で先に仕掛けることはない。彼は一枚の銅貨を取り出すと、レナに宣言する。
「この銅貨が落ちたら勝負の合図だ!!文句はないな!?」
「分かった」
「ふん、後悔するなよ!!お前の戦闘法もう調べ尽くしたんだ!!」
「いいから早くしなよ」
シデは銅貨を空中に弾くと、お互いが落下する銅貨に注目し、地面へ触れた瞬間に同時に動き出す。レナは勢い良く踏み込んでシデに向かうと、それを予測していたようにシデは魔剣を横薙ぎに振り払い、牽制を行う。
剣を横に振り払われた事で正面から近づこうとしたレナは立ち止まり、それを見たシデは即座に懐から隠し持っていた小杖を取り出す。杖先をレナに構え、魔法を発動させようとした。
「喰らえ、ファイアボー……!!」
「反発っ!!」
「うわっ!?」
しかし、魔法を発動させる前にレナは右手を伸ばすと衝撃波を発生させ、彼の小杖を吹き飛ばす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます