第329話 回想〈金色の隼〉 その3

「私の魔法は生物にしか扱えませんが、この力を使えば他の人間の身体能力を数倍にまで上昇させ、治癒魔導士ほどではありませんが人体の回復能力を強化させ、怪我や毒などの状態異常も治す事が出来ます」

「ルイ団長が団長になれたのはこの能力で他の冒険者達の支援を行い、優れた指揮能力を持つ事から他の冒険者達から団長にと推薦されました」

「ですが、私自身の力はそれほどではありません。私の支援魔法は他人と協力する事で真価を発揮します」

「なるほど……そうだったんですか」



イゾウに攻撃されたコネコが攻撃を回避できた理由はルイが彼女に「身体強化」の支援魔法を施し、一時的に彼女の身体能力が強化されたと知ったレナは納得する。肉体の能力を強化する魔法も存在する事にレナは改めて魔法にも色々と種類がある事を思い知った。


今度はルイとイルミナの方がレナに質問を行い、イルミナの方は以前にレナから簡単に付与魔法の特徴の事は聞いていたが、改めて質問を行う。



「それでは今度はこちらの方からお尋ねします。レナ様の魔法はイルミナから話は伺っていますが、聞いていた以上に不思議な魔法というか……」

「そうですか?割と普通だと思いますけど……」

「レナさんの普通の定義が気になる所ですが、とりあえず今回は質問方式で答えてもらえると有難いです」



結局、レナは付与魔法の性質を色々と聞かれ、素直に答える事にした。ダリルがオリハルコンのイヤリングを持ってきた後もルイとイルミナの質問は終わらず、結局は装備品に魔石を取りつける事で能力の強化を行う事まで話してしまう――






――時は戻り、学校からの帰宅の際中にレナ達はダリルの屋敷に向かう。金欠のデブリのためにレナは彼を屋敷に招き、食事を用意する事にした。



「いや、悪いな~……飯を奢ってもらえるなんて」

「兄ちゃんの飯は美味いからな、店でも開けるぐらい美味しいんだぞ。良かったなあんちゃん」

「あれ?コネコちゃん、デブリ君の事をあんちゃんと呼ぶようになったの?」

「まあね、その内にミナの姉ちゃんにも新しい愛称を付けてやるよ」

「あんちゃんというのがデブリさんの愛称という事は、私の場合はドリルの姉ちゃんが愛称なのですの?」

「そうそう、そんな感じ」

「いや、それは違うと思うけど……」



本日の夕食はレナが食事当番のため、全員で市場に立ち寄ってから買い物を終えた後、屋敷へと戻る。最初はミナもドリスもナオも自分達が同行するのは遠慮したが、元々大人数の料理を用意する予定だったので今更人が増えた所で気にせず、レナは全員を招く。



「ちなみに気になる事があるんですけど、この中に料理が出来る方はいますか?」

「あたしは兄ちゃんの手伝いでよく料理はするぞ」

「僕も出来るぞ!!鍋料理しか作った事は無いけど……」

「えっと、一応は勉強中……かな?」

「私はお母様から料理を教わっていますわ」

「僕は……チャーハンぐらいなら何とか」



レナ達の面子は一応は全員が料理を出来るらしく、特にこの中で一番料理が上手なのはレナで間違いない。ダリルの屋敷に世話になった頃に使用人に料理の基礎は教わり、冒険者になった後は一人暮らしも長く、自然と料理を覚えていた。


王都へ訪れてからはダリル商会がカーネ商会の件で潰れかけた事もあり、一時期は使用人も雇えない時期もあった。なので料理は当番制で行うようになり、使用人が雇えるようになった現在でもレナは料理を行っている。別に使用人だけでも料理は出来るのだが、彼等よりもレナの料理が美味しいという理由で定期的にレナが料理を行う。



「それにしても兄ちゃん、相変わらずその買い物の方法はどうかと思うぞ……また、通りすがりの爺ちゃん婆ちゃんに見られて腰を抜かされても知らないぞ」

「え?そんなにおかしいかな?」

「おかしいに決まってるだろ!!傍から見たら幽霊が買い物しているようにしか見えないぞ!?」



現在のレナの周囲には「籠手」に付与魔法を施して浮かばせ、その手には買い物袋を握らせていた。この方法ならばレナは一人で2人分の買い物袋を持ち運べるのだが、その光景を見た通行人達は驚愕の表情を浮かべる。


一緒に歩いているコネコ達の方が注目を浴びて恥ずかしいのだが、レナ本人は特に気にもせずに移動する。しかし、一か月前までは「闘拳」も利用して3人分の買い物袋を運んでいたのだが、残念ながらイゾウとの戦闘で闘拳は破壊されてしまう。



(色々と思い出があったんだけどな……まあ、ムクチさんの新しい闘拳もそろそろ出来上がる頃だろうし、そっちに期待しよう)



今後の事を考えれば現在のレナの装備品は魔銃を除いて一新させる必要があり、速く新しい装備が出来上がる事を祈りながらレナは歩いていると、前方で見知った顔を見つけた。

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