第313話 最後の品物
(カーネの奴め、血迷ったか!?オリハルコンを手に入れるためとはいえ、まさか金貨2000枚も支払うとは……)
(いくら奴が莫大な財産を貯めていると言っても、金貨2000枚も支払うとは……奴の資金力を侮っていたか)
(オリハルコンは取られましたか……ですが、次こそは取ります)
カーネがオリハルコンのイヤリングを落札した事にマドウとサブは悔し気な表情を浮かべ、ルイも手元を強く握りしめる。しかし、結果的にはカーネの資金を削る事には成功し、金貨2000枚も失ったカーネ商会は相当な痛手を被っただろう。
司会を務めるカーネの娘は半ば放心状態に陥っており、まさか父親がイヤリングのために金貨2000枚も支払うなど彼女も予想だにしていなかったのだろう。だが、現実にカーネは金貨2000枚も支払った事実は変わらず、そのまま本日最後の出品物の紹介を行う。
『え、え~……では、本日最後の品物となります。ゴマン伯爵家に伝わる家宝、伝説の魔法金属ヒヒイロカネで構成されたネックレスです』
『おおっ……!!』
オリハルコンのイヤリングの時と同様に招待客が反応が一変し、台座の上に宝石の如く光り輝く赤色の魔法金属で作り上げられたネックレスが登場した。その美しさに招待客の何人かは見とれ、あまり宝石に興味がないレナでさえも美しさに目を奪われた。
ヒヒイロカネで作り上げられたネックレスは招待客を魅了させ、そのあまりの美しさに触れる事もおこがましい。だが、放心状態の司会者はネックレスに対してあまり関心を抱かず、最後の競売を開始する。
『では……値段は金貨300枚から始めます』
「金貨500枚!!」
「金貨600枚!!」
「金貨700枚!!」
先ほどまではふさぎ込んでいた貴族達も一斉に挙手を行い、次々と値段が競りあがる。オリハルコンのイヤリングも美しかったが、やはりヒヒイロカネの方が外見的な美しさに惹かれ、なんとしても手に入れるために貴族達は手を上げた。
「金貨720枚!!」
「金貨740枚!!」
「くそっ……800枚だ!!これ以上は出せない!!」
「なら、こっちは810枚だ!!」
オリハルコンのイヤリングの時は躊躇していた貴族達も覚悟を決めたように高額な金額を提示すると、流石に商会の会長達は手を出せなくなった。しかし、ここで金色の隼のルイが金額を提示した。
「……1200枚!!」
『1200枚!?1200枚が出ました!!』
「ぬぐっ!?」
「くそぉっ!!」
先ほど、オリハルコンを競り落とせなかったのでせめてヒヒイロカネだけでも手に入れたいのか、ルイは提示できる金額の限界まで宣言すると、貴族達は悔しげな表情で黙り込む。
金貨1200枚となると流石に他の貴族もそれ以上の金額を払う事は出来ず、もうこれ以上の金額は上がらないかと思われた時、再びカーネが挙手を行う。
「金貨……1500枚だ」
『せ、せ、1500枚ぃいいっ!?』
「正気かカーネ!?」
「血迷ったか!!」
「馬鹿なっ!?」
カーネの発言に流石にダリルもマドウもサブも黙ってはいられず、先ほど金貨2000枚を提示し、その前にも金貨300枚を失っている彼が更に1500枚提示した事に全員が勝機を疑う。
合計でカーネは金貨3800枚を支払う事になるため、それだけの金額を支払うとなるとカーネ商会も痛手どころでは済まない。下手をしたら商会の維持も難しい。司会者であるカーネの娘も黙ってはいられず、立場を忘れて怒鳴りつけた。
「いい加減にしてくださいお父様!!流石にこれ以上は見過ごせません!!悪ふざけにもほどがあります」
「何を言うか?儂は本気だ……さあ、金貨1500枚だ!!他に誰かいるか!?」
『…………』
競売という形式上、カーネが提示した金額以上の値段を提示しなければヒヒイロカネを得られる事はない。流石にこの事態はマドウもサブもルイも予測しておらず、3人が用意した金額では足りなかった。
マドウとサブは互いの財産を用意して金貨900枚、ルイは1200枚も用意していた。しかし、カーネの総資産は3人を合わせても更に倍近く所有しており、もう打つ手はない。
『で、では……ヒヒイロカネのネックレスは金貨1500枚で落札とします』
「ちょっと待て!!こんなのおかしいだろう!?」
「そうだそうだ!!」
「本当にカーネ会長はそれほどの大金を支払えるのか!?そもそもこの競売は本当にゴマン伯爵が開催しているのか!!」
「ゴマン伯爵は何処だ!!どうして姿を現さない!!まさか、カーネ会長と供託しているのではないだろうな!?」
流石に招待客もカーネの行動には我慢できず、カーネの傘下である商会の主達さえも抗議を行う。本当に今回の競売はゴマン伯爵が元締めであるのか、実は二人が裏で繋がっていて競売で売上金は後で分け合う約束でもしているのではないかと疑う。
マドウもサブもルイも観客たちの言葉に同意し、もしもカーネが裏でゴマン伯爵と何か契約を結んでいた場合、今回の競売は全て「やらせ」を意味する。
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