第311話 捕まったコネコ

「――ふがっ!?な、なんだぁっ!?」



コネコは目を覚ますと、自分が薄暗い場所に倒れている事に気付く。夢の中で巨大化したデブリに飲み込まれそうになった所、食べられる寸前で目を覚ます。



「いてて、くそっ!!変な夢見た、いったい何がどうなってんだ?」



首筋を撫でながらコネコは起き上がると、自分が檻の中に閉じ込められている事に気付く。まさか警備兵に突き出されて牢獄にでも送り込まれたのかと考えたが、それにしては様子がおかしい事に気付く。


檻の中に彼女以外の人間は存在せず、看守らしき人間も見当たらない。窓の類は見当たらず、燭台はあるが蝋燭は取りつけられていなかった。随分と埃臭く、かなり長い期間、人の手が行き届いていない様子だった。



「何だここ……おい、誰かいないのか!?」



駄目元で人を呼ぶが反応はなく、どうやら見張りもいないらしい。この時点でコネコは自分が警備兵の元に送り付けられたのではなく、誰かに監禁されていると判断した。


意識を取り戻したコネコは気絶する前に何が起きたのかを全て思い出し、彼女は悔し気な表情を浮かべて壁を蹴り飛ばす。不意打ちとはいえ、まさか自分が他の人間に気絶させられるなど恥でしかなかった。



(くっそう、多分だけどあたしが気絶してからそれほど時間は経ってないはず。という事はここはまだ屋敷の中か?窓が無い所をみると地下か?なんで屋敷の地下に牢があるんだよ!!あのおっさんの趣味か!?)



自分をこのような辛気臭い場所に閉じ込めた事にコネコは怒りを抱き、一方で意識を失う前に最後に出会った人物にコネコは疑問を抱く。どうしてあの「男」に自分が気絶させられたのか彼女は不思議に思い、同時に怒りを抱く。



(畜生!!あんな親父にあたしが気絶させられるなんて……絶対に許さねえっ!!ここを出たら蹴り飛ばしてやる!!けど、その前にどうやって抜け出そう……?)



檻には鍵が施されており、残念ながらコネコの力では鉄格子を破壊できそうにない。これがレナやデブリならば鉄格子を破壊して抜け出す事も出来ただろうが、彼女の力では鉄格子は破壊できない。


コネコの長所は「瞬発力」から繰り出される蹴り技であり、加速した状態ならば打撃力も上昇する。しかし、彼女の攻撃方法は広い場所を走り回って十分に加速した状態でなければ威力は引き出せない。狭い檻の中で走り回る事は出来ず、仕方なく彼女は鍵を外す方法を探す。



(へへへ、これぐらいの鍵なら先が尖った物があれば簡単に外せるぜ。何かないかな?)



実はシノから「ピッキング」の技術を密かに教わっていたコネコは檻の中で先のとがった物を探し、そして檻の中に存在する燭台に気付く。燭台には蝋燭を突き刺す突起物が存在し、それを利用すれば鍵を外す事は出来そうだった。



「おらぁっ!!」



コネコは跳躍を行うと燭台が存在する壁とは反対側の壁に飛び込み、三角飛びの要領で壁を蹴りつけて燭台の元へ向かう。


そして全体重を乗せた蹴りを叩き込むと、燭台が外れて地面に落ちた。彼女は燭台を拾い上げると突起物の方を鍵穴に差し込む。



「ここをこうして……よし、出来た!!」



鍵穴をしばらく弄ると鍵が外れる音が鳴り響き、コネコは扉を開く事に成功する。用済みとなった燭台を手放すと、彼女は階段へ向けて駆け出す。



「待ってろよあの親父……うらぁっ!!」



階段を昇りつめて扉を発見すると、コネコは階段を登りながらも加速して扉を蹴りつける。最初の頃と比べ、魔法学園に通うようになってからは毎日の訓練や鍛錬によって彼女も鍛えられ、体力を身に着けていた。


扉を蹴り開くとコネコは兵士の待機所だと思われる部屋に飛び出し、まだ地下なのか上に続く階段を発見した。彼女はそのまま階段を移動しようとした時、妙な臭いを感じ取った。まるで何かが腐ったような臭いを感じ取った彼女は恐る恐る振り返ると、そこには壁際に倒れ込む「死体」が存在した。



「う、うわぁっ!?」



死体を見たコネコはあまりの驚愕に尻もちをついてしまい、慌てふためく。死体の方は死亡してから時間が経過しているのか、蠅がたかっており、苦悶の表情を浮かべた状態で死んでいた。どう見ても生きているとは思えず、恐る恐るコネコは近づいて様子を伺う。


間近で死体を見るのは初めてのため、動揺しながらもコネコは恐る恐る男の顔を確認して更に驚き、どうしてこの人物がこんな場所で死んでいるのかと動揺を隠せない。



(し、死んでる……けど、何でだ?さっきまで生きていたはずなのに……)



コネコは自分が気を失う前に遭遇した人物と、目の前の男が同一人物である事に気付く。しかし、目の前の死体は明らかに死後から相当な時間が経過しており、少なくとも1日以上は経過しているだろう。


一方でコネコの方は気絶していたとはいえ、まだそれほど時間が経過していない事は自覚しており、どうして自分を気絶させた男がこのような腐った死体に変わり果てたのか疑問を抱く。



(あたしと会った後に誰かに殺された?けど、いくらなんでも死体が腐るのが早すぎるだろ……じゃあ、別人なのか?いや、こんなに顔がそっくりなのに有り得ねえ……)



目の前の死体は間違いなくコネコが最後に会った人物と同じ顔をしていたが、彼女が気絶していた間に殺されたとしても死体の腐敗化があまりにも早すぎた。コネコは何が何だか分からないが、一刻も早くこの場を離れる事にした――

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