第290話 立ちふさがる金級冒険者
「下がってろ二人とも!!どす……いや、今の無しだ。えっと……そぉいっ!!」
『ぎゃああっ!?』
盾を構えたデブリ(2号)は駆け出すと、傭兵たちを次々と蹴散らす。その勢いは正に暴走列車を想像させ、彼よりも体格が大きい傭兵でさえも耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。
その光景を見ていた兵士や冒険者達は相手が一筋縄ではいかないと判断し、傭兵たちがデブリに蹴散らされている間に他の二人に狙いを定める。
「ま、まずはあいつらから仕留めろっ!!」
「片方は気を付けろ、とんでもない怪力だからな!!」
「うおおおっ!!」
今度は槍を構えた兵士達がレナとナオの元へ向かい、長槍を利用する事でリーチの差を生かす。だが、ナオは迫りくる兵士達に対して鉄格子を地面に突き刺すと、走り幅跳びの要領で兵士たちの頭上を飛び声、レナに至っては瞬間加速を応用して大きく跳躍を行う。
「頭上注意!!」
「輪脚!!」
「あがっ!?」
「いでぇっ!?」
兜越しに二人は進路方向上の兵士の頭を蹴とばすと地面に着地し、蹴とばして倒れた兵士の武器を回収する。慌てて残りの兵士が態勢を立て直そうとするが、先にナオが二つの長剣を握り締めると、兵士達に切りかかる。
「はいやぁっ!!」
「うわぁっ!?」
「な、何だこいつ!?」
「槍使いじゃないのかっ!?」
まるで中国拳法の剣舞のようにナオは巧みに剣を扱い、次々と兵士達の剣を弾き飛ばす。彼女は槍だけではなく、大抵の武器の訓練は受けており、武芸に関しては並の兵士では相手にならない。本人は本職の人間には遠く及ばないと言い張るが、カーネの元で雇われた兵士達の大半は金目当てで入っただけで心の底から彼に忠誠を抱いているわけではない。
20名近くの兵士をナオ一人が相手にしていると、レナの方は冒険者と向き合う。彼等は護衛という名目でカーネの屋敷に滞在している王都の冒険者達であり、その中には白銀級や金級のバッジを身に着けた冒険者も存在した。流石にこれまでの相手と比べて雰囲気が異なり、中には人間とは思えない風貌の種族っも存在した。
「ふん、中々やるようだな……こりゃ、会長には
「坊主、であってるよな?相手が悪かったな。俺達は金級冒険者だ」
「悪く思わないでね、こっちも雇われている以上は雇い主の機嫌を取らないといけないの」
「ふぁああっ……おいらの出番か?」
レナの目の前に立つ冒険者は全員で10名は存在し、その中の4名は金級のバッジを身に着けていた。他の冒険者の殆どが銀級と白銀級であり、一番下の銅級のバッジの冒険者は存在しない。
どうやら金に任せて王都の腕利きの冒険者を雇い入れたらしく、以前に大迷宮でレナは金級の冒険者を倒してはいるが、相手が油断していた事と相性が良かった事が幸いして特に苦戦もなく倒す事が出来た。
しかし、今回の場合は装備は鎖帷子しか身に着けておらず、下手に付与魔法を見せると正体が気付かれてしまう恐れがある。
(これだけの金級冒険者を相手に何処まで粘れるか……でも、やるしかない)
最初にレナが注目した冒険者は屋敷の壁を背もたれとして利用して眠っていた「大男」だった。とにかく、体格も身長も常人とは比べ物にならない程に大きく、恐らくは「巨人族」と呼ばれる種族で間違いない。
眠たそうに瞼を擦りながら起き上がった大男の体長は4メートルは存在し、鬼の金棒を想像させる金属製の棍棒を握り締めていた。大男はゆっくりとレナの元へ近付くと、他の冒険者は慌てて道を開く。
「皆は下がってろ、おいらが捕まえるぞぉっ……」
「おいおい、ダイゴ!!また前みたいに誤って踏みつぶすなよっ!?」
「殺したら駄目よ、生かした方がきっとカーネ会長も喜ぶわ」
「報酬は分配だからな、分かったな!!」
「んだ、分かったよぅっ」
ダイゴと呼ばれた大男は仲間達の言葉に間延びした返事を返しながらレナに向き合い、棍棒を振り翳す。その行為にレナは呆気に取られ、他の冒険者達も焦り出す。
「せぇ……のっ!!」
「お、おい馬鹿!!何を考えてんだ!!」
「不味い、逃げるわよっ!?」
「くそがっ!!話を聞いてなかったなこいつ!!」
生かして捕えろといったばかりなのにダイゴは棍棒を振り翳すと、レナの頭上に向けて振り下ろす。その光景を見て冒険者達は慌てふためき、このままレナが押し潰されると確信した。
――しかし、上空から振り落とされた棍棒に対してレナは冷静に両手を構えると、棍棒が接近する瞬間を見極め、付与魔法を発動させて衝撃波を生み出す。棍棒の振り下ろされた勢いを衝撃波によって相殺すると、ゆっくりと降りてきた棍棒を両手で受け止める。
傍から見たらレナがダイゴが振り翳した棍棒を正面から受け止めたように見えたのか、冒険者達は呆気に取られた表情を浮かべ、一方でダイゴの方も自分の棍棒をレナが受け止めたという事実に目を見開く。
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