第252話 力を合わせて

「ゴガァアアアッ!!」

「き、来ますわっ!!」

「皆、離れてっ!!三重強化トリプル!!」



レナは闘拳に意識を集中させ、先ほどよりも魔力を込める。そして掌を構え、闘拳に付与させた魔力を一気に解放した。



衝撃解放インパクト!!」

「ゴアアッ……!?」

「うわぁっ!?」

「こ、これは……!?」



通路内に強烈な衝撃波が発生すると、ブロックゴーレムの巨体が揺らぎ、耐え切れずに倒れ込む。レナの付与魔法の中でも数少ない遠距離攻撃ではあるが、衝撃波は拡散してしまうので威力自体は離れていると大きく下がり、破壊までには至らない。


それでも時間を稼ぐ事には成功し、体勢を崩したブロックゴーレムは壁際に転倒して身体を衝突して倒れてしまう。その際にブロックゴーレムを構成する煉瓦の一部が欠け、それを見たレナはやはり迷宮を構成する煉瓦と比べてブロックゴーレムの肉体の硬度は舌であると見抜く。



「さ、流石はレナ……けど、まだ動いてるぞ!?」

「この巨体、それにこの外見……まさか、これが噂のブロックゴーレムですの!?」

「ええっ!?もう見つけたの!?」

「今はそんなことを言ってる場合じゃないですよ!!来ます!!」



ナオの言葉を聞いて他の者達も戦闘体勢に入り、ブロックゴーレムもゆっくりと起き上がる。そしてレナを警戒するように視線を向けて動かず、先ほどの攻撃を至近距離で受ければまずいと判断したのか動こうとしない。


硬直状態が続くかと思われたが、ここでドリスが「魔丸薬」を取り出すと、一粒飲み込んで掌を構える。今回の彼女は持参した魔法腕輪を装着しており、火属性と風属性と水属性の魔石を装着させていた。



「私が隙を作りますわ!!皆さんはその間に接近して攻撃してください!!」

「隙って……何をする気だよ?」

「こうするのですわ!!氷塊!!」



ドリスは両手を重ね合わせると、掌から氷の塊が出現した。水属性の初級魔法の「氷塊」と呼ばれる魔法で彼女は魔法の氷を作り出すと、氷の大きさを徐々に巨大化させ、やがて1メートルほどの大きさへと変化させる。


さらにドリスは作り出した氷塊の形も自在に操作できるのか今度は形状を徐々に変形させ、やがて「丸鋸」を想像させる形へと作り変えた。



「これが私のとっておき、その名前も回転氷刃!!」

『おおっ!?』

「ゴオッ……!?」



円盤状に変形させ、終端を鋸の刃のように変形した氷塊が空中で高速回転を行い、ブロックゴーレムの元へ放たれる。回転を加える事で勢いと切れ味を強化させた氷の刃はレナが過去に苦戦したボアや赤毛熊でさえも切断する威力は誇るだろう。


ドリスが最近作り出した魔法の中でも一番の威力を誇り、生身の生物ならば触れただけで切り裂くだろう。殺傷能力は火炎槍よりも高く、それでいながら魔力の消費量も少ないため、魔物との戦闘では役立つと考えられた。



「ゴオオッ!!」

「う、受け止めたっ!?」

「そんな馬鹿なっ!?私のとっておきが!?」



だが、ブロックゴーレムは正面から迫った回転氷刃に対して両手を伸ばすと、そのまま左右から受け止めて氷塊を停止させようとした。煉瓦が削れる音が鳴り響くが、やがて勢いが殺されて回転氷刃は停止してしまい、徐々に全体が罅割れて砕け散ってしまう。



「こ、壊された……私のとっておきが……」

「ドリス、落ち込んでいる場合じゃないよ!!」

「そうだぞ、すぐに近づいてくる……あれ?」



自信のあった魔法を破壊された事でドリスは膝を崩してしまうが、ブロックゴーレムは氷塊を破壊する事に成功したにも関わらずにレナ達に近付く様子はなく、何故か氷塊を受け止めた両手の掌を見つめて立っていた。


その行為にレナ達は疑問を抱くが、ドリスの宣言通りに彼女の魔法で敵の隙を作る事には成功した。この隙を逃さずにレナは皆に声をかけ、攻撃を仕掛ける。



「皆、行くよ!!」

「援護する」

「くそ、あたしも行くぞ!!」

「あ、ちょっと!?」



ミナが呆然としたように動かないブロックゴーレムに向けて駆け出し、それにシノとコネコが続く。迂闊に近づくのは危険だとレナが制止する前に3人はブロックゴーレムに迫ると、まずミナがミスリルのトライデントを構えた状態でブロックゴーレムの右足を狙う。



「螺旋槍!!」

「ゴガァッ!?」



手元で高速回転させて突き出された槍の刃はブロックゴーレムの右足の膝の部分に命中するが、あまりにも頑丈な煉瓦によって金属音が鳴り響き、攻撃を仕掛けたミナの方が腕が痺れてしまう。


それでも煉瓦の表面の部分だけでも削り取る事には成功し、続けてコネコが両手に短剣を構えながら反対の足を狙った。



「乱切りっ!!」

「ゴアッ!?」



コネコが跳躍を行うと空中にて身体を回転させながら無数の斬撃をブロックゴーレムの足に放つが、やはりミナと同様にミスリル製の武器でも掠り傷程度しか与えられない。


だが、ブロックゴーレムの注意を引く事には成功したらしく、二人に意識が引かれている内にシノが両手に短刀を握り締めた状態でブロックゴーレムの頭上へ舞い上がり、顔面部に刃を突き刺す。



「辻斬りっ」

「ゴアアアアアッ!?」



気配もなく自分の頭上から現れたシノに対してブロックゴーレムは驚愕の声を上げ、目元の皺の部分にシノは剣を放つ。

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