第251話 ブロックゴーレム
(……この通路は確かに通ったはず、迷宮の構造が定期的に変化するとは聞いていたけど、その場合は予兆が起きるはず)
煉瓦の大迷宮は一定の周期で迷宮の構造が変化している事は有名だが、レナは他の冒険者から迷宮が変化するときは必ず地震のような地響きが発生すると聞いていた。だが、ここにレナ達が移動してからせいぜい5分程度しか経過しておらず、予兆らしき現象は起きていない。
レナは唐突に出現した壁に視線を向け、スケボを上昇させれば乗り越えられそうだが、不審に思った彼はスケボから降り立つと魔銃を構える。その行動にコネコは不思議に思い、いったい何をする気なのかを尋ねた。
「兄ちゃん?どうしたんだよ?」
「ちょっと下がってて……もしかしたらだけど、もう見つけたのかもしれない」
「見つけたって……うわっ!?」
壁に向けてレナは躊躇なく発砲を行い、数発の弾丸を撃ち込む。その結果、弾丸は煉瓦の中にめり込み、亀裂を発生させた。その光景を見てレナは確信を抱き、目の前に存在する壁の正体を見抜く。
『ゴガァアアアッ……!?』
「な、何だっ!?」
「やっぱり……こいつがブロックゴーレムか!!」
通路を立ち塞ぐ3メートル程の大きさの壁から人面のような物が浮かび上がり、やがて壁から人間のような手足が出現する。やがてレナが撃ち込んだ弾丸を排出しながら現れたのは「ロックゴーレム」と酷似した魔物であり、大迷宮に入って早々にレナ達は「ブロックゴーレム」と思われる個体と遭遇した。
煉瓦の巨人はレナの弾丸を体内から放出すると、怒りを抱いたようにレナ達に顔を向ける。その恐ろしい形相にレナとコネコは冷や汗を流すが、魔銃の弾丸を受けた箇所に罅割れが起きていることを知ったレナは自分の攻撃が通じると確信した。
(ロックゴーレムよりも硬度は高いらしいけど、この迷宮の壁と比べれば脆いのか)
迷宮の壁に魔銃を撃ち込んだ時は弾丸は先端部しかめり込まなかったが、ブロックゴーレムの場合は貫通とまではいかないが、弾丸が全て入り込む程度の損傷は与えられていた。その事からブロックゴーレムの硬度は迷宮の壁と比べると脆い事が発覚する。
しかし、いくら脆いと言ってもロックゴーレムの岩石の外殻ですら貫通するレナの魔銃の弾丸を受けても、表面に小さな罅割れ程度のしか損傷を受けなかったブロックゴーレムの防御力は侮れない。
しかも攻撃を受けた事で完全にレナ達を敵と認識したらしく、ブロックゴーレムは通路を塞ぐために横たわらせていた身体を起き上げると、全長が6、7メートルは存在する煉瓦の巨人がレナ達に襲いかかった。
「ゴオオッ!!」
「うわっ!?」
「早いっ!?」
ロックゴーレムを上回る速度でブロックゴーレムは動き、二人に向けて足を突き出す。咄嗟にレナとコネコは左右に避けて回避する事に成功したが、その際に空中に浮揚させていたスケボが蹴り飛ばされてしまう。
身体がミスリル級に頑強な煉瓦で構成され、しかも怪力を誇るらしく、たった一撃でレナのスケボが曲がってしまう。もしも直撃していればレナもコネコも無事では済まず、即死は免れないだろう。
「ゴオオッ!!」
「また来たぞ兄ちゃん!!」
「くっ……反発!!」
今度は右腕を振り翳してきたブロックゴーレムに対してレナはコネコを庇うように左手を差しだすと、付与魔法を発動させて重力の衝撃波を生み出す。
ロックゴーレム程度の攻撃なら弾き返せる程の威力の衝撃波だったが、ブロックゴーレムの場合は攻撃の軌道を逸らすのが限界で二人の頭上に拳が空振りした。
「ゴアッ……!?」
「こいつ、やばい……コネコ、走れ!!」
「わ、分かった!!」
瞬間加速を発動させたレナと、全力疾走で駆け出したコネコはブロックゴーレムの足元を潜り抜け、仲間達が待つ場所へ向かう。その際にレナはしっかりと付与魔法で弾丸とスケボの回収も行い、二人は距離を開くために急いで移動を行う。
「ゴオオッ……!!」
「兄ちゃん、あいつ追いかけてくるぞ!?」
「コネコ、乗って!!」
しかし、巨体でありながらロックゴーレムよりも動作が素早いブロックゴーレムは二人に目掛けて後を追う。歩幅が違うせいでブロックゴーレムは小走りでもレナ達に追いつこうとしたが、咄嗟にレナは足元に浮上させていたスケボに乗り込む。
多少形は歪になったが、どうにかスケボに乗り込んだレナはコネコを抱えて迷宮内の移動を行い、ブロックゴーレムとの距離を開く。このままならば逃げ切れるかと思われたとき、前方の方角から騒動を聞きつけてきたのかドリス達が姿を現す。
「な、何事ですの!?」
「レナ君、コネコちゃん、無事!?」
「……巨人!?」
ドリス達は1本道の通路で煉瓦の巨人に追いかけられているレナ達の姿を確認して驚愕の表情を浮かべ、まるで狙ったかのようにとんでもない状況で再会を果たしたレナ達は迫りくるブロックゴーレムと向かい合う。
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