第240話 合成魔術

「今のは……合成魔術ですか?」

「ええ、その通りですわ!!」

「合成……魔術?」

「し、信じられないだ……一流の魔術師でも扱える人間が少ないと言われる高等技術だべ!!」



合成魔術という単語にレナは疑問を抱くが、チョウは知っているのか驚愕の表情を浮かべ、イルミナも感心した表情で頷く。どうやらレナ以外の人物は合成魔術という言葉の意味を理解しているらしい。


ここで質問すると常識知らずかと思われるかと思ったレナだが、都合が良い事にイルミナが合成魔術の説明を行ってくれた。



「合成魔術……別属性の魔法を組み合わせて生み出す高等魔法術、使用するには高い技術を要し、一流の魔術師でさえも扱える人間は少ないと言われてます。しかもドリスさんの齢で合成魔術を習得している方はそうはいないでしょう」

「お褒めの言葉、ありがとうございます。ですが、あくまでも私の見解ですけど、初級魔法は実は合成魔術に適した魔法ではないのかと最近考えています」

「ほう……というと?」

「普通の魔術師の方が扱う砲撃魔法で合成魔術を生み出すのは至難の業だという事は知っていますわ。ですが、私の扱う初級魔法は砲撃魔法と異なり、威力が劣る分に応用性が非常に高く、合成魔術も扱いやすいんじゃないのかと思います」

「なるほど、それは興味深い考えた方ですね」



ドリスの言葉にイルミナは非常に興味を抱いたのか彼女は考察するように腕を組み、初級魔法しか扱えない初級魔術師だが、合成魔術に関しては他の魔術師よりも適性た高いのではないかとというドリスの言葉は信憑性を感じられた。


砲撃魔術師が扱う砲撃魔法は威力が大きい分、精密な操作は難しく、合成魔術を発動させるのは難しい。しかし、初級魔術師の初級魔法の場合は威力は砲撃魔法に劣るがその分に応用性は高く、別属性の魔法同士を組み合わせた合成魔術を扱いやすいというドリスの理論はイルミナも共感を抱く。



「初級魔術師は初級魔法に特化した職業、つまりはどの魔術師よりも初級魔法を扱う事に関しては長けた職業ですわ。そして初級魔法が合成魔術に最も適性が高いとしたら、きっと私以外の初級魔術師の方も今の様に合成魔術を扱えると思います!!」

「確かに……それは調べてみる価値はありそうですね。それとドリスさん、貴女の実力はよく分かりました。もしも貴女さえよかったら、魔法学園の卒業後は金色の隼の魔術師として就職する気はありませんか?」

「えっ!?」

「貴女の魔法と、初級魔術師が合成魔術に適した魔術師であるという見解は非常に興味をそそられます。もしもドリスさんさえ良ければ金色の隼の副団長として貴女に推薦状を書きたいと思っています。どうですか?卒業後は私達と共に働いてみませんか?」

「す、凄いべドリスさん!!本当に金色の隼に入れるのか!?」



まだ試験が終わっていないにも関わらず、イルミナはドリスの勧誘を行う。ドリスの方も王都で最も有名な冒険者組織の誘いに感激するが、ここで彼女はある事を思い出す。



「あ、お気持ちは嬉しいんですけど……私、卒業後は実家を継ぐために商人の勉強をしなければならないので……」

「実家?ドリスさんは貴族ではないんですか?」

「いえ、商家の娘です。何故かよく勘違いされるのですが……」

「そ、そうでしたか……それは残念です。ですが、金色の隼は貴女のような人はどんな時でも受け入れます。もしも卒業後までに考え直してくれるのなら私の方に連絡をください」

「は、はい!!それは嬉しいですわ!!」



イルミナから金色の隼の連絡先を記した羊皮紙を受け取ったドリスは感動した表情を浮かべ、まさか自分が本当に金色の隼に勧誘される事になるなど思いもしなかったのだろう。金色の隼は優秀な人材を求めており、そんな組織に招かれたというのであれば暗にドリスは優秀な人材と定められた事を意味する。


ドリスの試験は結局は左側の人形を破壊した事で終わってしまったが、彼女の実力は十分に証明され、最後にイルミナはレナに視線を向ける。彼女は目つきを鋭くさせ、レナを注意深く観察しながらも促す。



「……では、最後にレナさんの実力を見せて貰います。団長からアルト王子の誕生会の決闘の件は聞いていますが、私も直にレナさんの扱う付与魔法というのがどういう物なのか気になります」

「はあ……あの、武器を使ってもいいんですか?」

「ええ、問題ありません。それと、距離を不必要に開く必要はありません。準備が整い次第、自分の判断で行動しても構いませんよ」



イルミナから許可を得たレナは残された二つの人形に視線を向け、ミスリル製の盾を装備する人形、同じくミスリル製の鎧を身に着ける人形に視線を向け、壊れやすい人形だけが残った事に頭を掻く。


ドリスとチョウも自分達のせいでレナの番だけ壊れにくい人形が残った事に不安を抱き、彼がどのような手段で人形の破壊を試みるのかを緊張した面持ちで見つめる。一方でイルミナの方もレナの一挙一動を見逃さないように視線を注ぐ。

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