第236話 金色の隼の到来
『フンガよ、お主は確かに優秀な生徒じゃ。だが、貴族という理由だけで優遇しろというのは認められん。この学園は才能があり、努力を怠らないものが大成するための教育施設だ。お主もいつまでもそんなつまらない事に拘らず、学友と共に精進すると言い』
『……はい』
まがりなりにも尊敬するマドウの言葉に対して停学処分を受けいれたフンガは自宅で謹慎するようになり、ここで問題が発生した。対抗戦に出場した生徒が一人減ってしまい、フンガの代わりとなる生徒を用意する事になった。
マドウは調べた限りでは学園の生徒の中で成績が上位、というよりも現時点で能力が優れている生徒はレナ達だけで間違いなく、騎士科の生徒はレナ、コネコ、ミナ、デブリ、シノ、ナオの6名、魔法科の生徒はドリス、チョウの2名、フンガが抜けた事で魔法科の生徒は2名しかおらず、対抗戦に出場した選手は10名の内の2名は退学、1人は停学でいない。
金色の隼の要望として彼等は魔法学園の中でも優秀な人間を紹介してほしいと連絡を受けていたマドウは困り、レナ達以外の生徒の中で現時点では特に秀でた能力を持つ者はいない。
一応、アルト王子はレナ達にも負けない逸材ではあるが、まさか一国の王子を冒険者に紹介するわけにはいかず、結局は時間がなかったという事もあってこの8名を紹介する事にした――
――翌日、午前の授業を終えるとマドウの指示を受けて8名の生徒が集まり、学園に訪れた金色の隼の冒険者達に紹介を行う。金色の隼から訪れたのは団長を務めるルイと、レナ達は初めて出会う眼鏡を掛けた黒髪の女性だった。
学園長室にて集められた生徒は既に待機していた二人の黄金級冒険者と相対し、緊張した面持ちを浮かべる。そんな彼等に対してマドウは二人の紹介を行う。
「この中で何人かは顔を合わせた事はあると思うが、改めて自己紹介しよう。こちらが金色の隼の団長を務めるリル殿、そしてもう1人が副団長を務めるイルミナ」
「初めまして……といっても、半分くらいは顔を合わせた事があるかもしれないけどね。皆、今日はよろしく」
「……どうも」
生徒達に対してフランクに接してくるルイに対し、イルミナと呼ばれた女性は素っ気なく挨拶を行う。どちらも美人である事に間違いないが、性格は正反対であり、特にイルミナの方は目つきが鋭く、何名かの生徒が怖気づく。
「はは、初めまして……デブリと申しますです!!」
「デブリ君、緊張し過ぎだよ……どうも、レナです」
「ミナです!!」
「あたしはコネコ、よろしくな姉ちゃん達」
「シノ……シノビンでもいい」
「ナオと申します」
「ドリスですわ!!今日はよろしくお願いします!!」
「チョウ・チョだべ」
「ふふ、随分と個性的な子達ですね……え、ちょっと待って。最後の子は語尾が変じゃなかった?」
「……こちらこそ、今日はよろしくお願いします。ではこの中で魔術師の称号を持つ方は手を上げてください」
「魔術師ですか?」
「はい。できれば正確な職業名も答えてください」
イルミナの言葉に全員が顔を見合わせ、この中で魔術師の称号を持つのは3名であり、最初にレナが名乗を上げた。
「俺は付与魔術師です」
「……なるほど、貴方が団長の言っていた子ですか。確かに男の子とは思えない程に綺麗な顔立ちをしてますね」
「はあ……どうも?」
「おっと、失礼しました。男性に対して綺麗という言葉はおかしかったですかね、すいません」
「リル、彼が噂の付与魔術師ですよ。貴方の目から見てどう思う?」
「外見だけでは何も分かりませんよ。実際に能力を見ない限りは私は納得しません。それに今回の目的は彼だけではありませんので」
「それもそうですね、では他に魔術師の子はいますか?」
「あ、はい!!私は初級魔術師ですわ!!」
「おらは砲撃魔術師だべ」
「えっ……チョウ君、自分の事をおらというの?」
「では私の案内は御三方に頼みます。残りの生徒の皆さんはルイ団長にお願いします」
「え?あ、はい……」
「まさかあのイルミナ副団長と会話できる機会があるなんて……光栄ですわ!!」
「はわわっ……緊張してきたべ」
「チョウ君!?君、そんな性格なの!?」
魔術師であるレナ達はイルミナの案内役を任せられ、残りの者達はルイの案内役を頼まれる。生徒達は別れて二人の校舎の案内を行う事になり、マドウに挨拶を行ってから部屋を退室した――
――廊下に出ると二組に分かれた生徒達は別々に校舎内の案内を行い、ある程度の説明を終えるとイルミナは案内役の生徒3名に素直に感心した様に声を掛ける。
「なるほど、確かに噂通りにこの学園は素晴らしい所ですね。生徒同士を競わせる事で向上心を高め、訓練の設備も十分に整っている。それに教師を行っている人々も退役した将軍や、現役の将軍を勤める方もいるせいか訓練の内容も効率的で悪くないです」
「そうでしょう!?この魔法学園のお陰で私達は確実に成長していると実感してますわ」
「ドリスさんの言う通りだべ。おら達はこの学園に入れただけで運が良かっただ」
「うん、この学園に入れて本当に良かったと思っています」
魔法学園の事を褒め称えるイルミナに対してレナ達も嬉しく思い、実際に魔法学園に入った事で自分が成長しているという実感を抱いていた。しかし、そんな3人に対してイルミナは表情を一変させた。
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