第200話 サブ魔導士
「凄く人が集まって来たけど、ここにいるの全員が貴族なのかな?」
「王都以外にも地方の貴族さん達が来ているらしいよ」
「それだけじゃない。中には有名な冒険者や傭兵も交じっている」
「……あれを見てください。もしかしてあそこにいるのはサブ魔導士では?」
食事を行いながらレナ達はパーティーに集まった者達を観察していると、ナノが驚いた表情を浮かべて貴族に取り囲まれている老人を指差す。
年齢はマドウと大差はないと思われるが、彼と比べて毛髪は存在せず、髭だけが異様に長い。さらに老人の周囲にはレナ達と同世代と思われる子供達が立っていた。
背格好で判断する限り、恐らくは城勤めの魔術師である事は間違いなく、サブと何事か話し合う。魔法学園内では見かけない生徒であり、もしかしたらサブの弟子かもしれない。
「レナ、あれがサブ魔導士で間違いない。前に見たことがある」
「え?シノさん会ったことがあるの?」
「カーネ商会で世話になっていた時、よくカーネ会長の元へ訪れていた人」
「へえっ……で、サブ魔導士というのは有名な人?」
『…………』
レナの質問に他の3人は黙り込み、何か変なことを口走ったのかレナは首を傾げると、シノでさえも少々呆れながらも説明してくれた。
「サブ魔導士はこの国でも有名な魔術師……マドウ大魔導士の片腕としてずっと支えてきた立派な魔導士。単純な魔法の腕はマドウ大魔導士にも劣らないと言われている」
「そんなに凄い人なの?」
「凄いどころじゃないよ!!サブ魔導士は昔、将軍の職にも就いていた事があるんだよ?魔法だけじゃなくて武芸も優れていた人なんだからね」
「え?魔導士なのに将軍……?」
ミナの言葉にレナは戸惑い、魔導士であるサブが将軍職にも就いていたとはどういう訳なのか分からなかった。基本的に魔術師の称号を持つ人間は身体能力は戦闘職の人間には大きく劣るはずため、大抵の将軍は戦闘職の称号の持ち主である。
それにも関わらずにサブが将軍を勤めていたという言葉にレナは疑問を抱き、軍略や戦略を編み出すのが上手くて将軍職に任せられたのかと思ったが、話を聞く限りではサブ自身が自ら戦場に赴き、敵を撃退してきたという。
「サブ魔導士は本当に凄い人なんだよ。昔は叔父さんがなる前の第二将軍を勤めていた事もあるんだって」
「それにサブ魔導士は魔法使いではありますが、有名な剣士でもあります。魔法と件を巧みに扱い、あらゆる魔物や他国の軍勢を退いたとか……」
「剣?魔法使いなのに剣も扱えたの?」
ミナとナノの言葉に益々レナは混乱し、魔導士でありながら魔法だけではなく剣の腕も優れているという言葉に不思議に思う。
まさか自分のように魔法と武器を組み合わせた戦法を得意とするのかと思ったが、付与魔術師以外にそのような称号が存在するのか気にかかり、サブの称号を尋ねようとした。
「ねえ、サブ魔導士の称号はいったいどんなの……」
「儂の称号は魔法剣士じゃよ、お若いの」
『えっ!?』
レナは背後から声を掛けられ、その場に存在したミナ達でさえも驚く。何時の間にかレナの後方にはサブ魔導士と彼に従う子供が1人立っており、咄嗟にレナは身構えてしまう。
「いったい何時の間に……!?」
「おい、お前何だその態度は?わが師に対して失礼だろう!!」
「これこれ、落ち着かんか。すまないのう、うちの弟子は血の気が多くてな」
サブの傍に立っていた子供はレナの態度が気にくわないのか文句を告げるが、それをサブが宥める。弟子は不満げな表情を浮かべるが、師であるサブの言葉には逆らえないのか渋々と引き下がった。
その光景を見てレナの方も急に背後から話しかけてきたサブに驚かされたが、すぐに肩の力を抜いて自分の非礼を詫びた。
「すいません、咄嗟でつい大げさに反応して……」
「よいよい、気にせんでいい。それよりもお主らがマドウ大魔導士が創設した魔法学園の生徒さんじゃな?なるほど、確かに逸材揃いじゃ」
「逸材、ですか?」
レナ達を見渡してサブは目元を鋭くさせると、視線を浴びたレナ達はまるで猛禽類の動物に睨まれた感覚に襲われる。年老いた老人とは思えない程の鋭い眼光であり、自分達の事を観察していると知ったレナはサブに質問を行う。
「あの、それで俺達に何か御用でしょうか?」
「うむ、マドウ大魔導士が珍しく自慢をしていたからのう。何でも魔法学園の生徒の中に優秀な人間がいるとな……その中には我が弟子にも匹敵する実力者がいるともな」
「弟子、ですか?」
サブの言葉を聞いてレナは彼の隣に立つ男子に視線を向けると、彼は鼻息を鳴らして腕を組み、その腰元には何故か奇妙な剣を装備していた。パーティー会場では武器の持ち込みは禁止されているはずだが、どうしてサブ魔導士の弟子と思われるこの男子だけが武器を装備している事に疑問を抱く。
男子が装備している剣の外見は柄の部分が「杖」の柄のような形をしており、小さな魔石がいくつかはめ込まれていた。鞘の部分にも同様に魔石が埋め込まれており、レナの所持する「魔銃」と同様に魔道具の武器である可能性が高かった。
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