第197話 黄金級冒険者

「で、ではアルト王子様、ジオ将軍、私はしばらく失礼させてもらいます。レナ君、またあとでな」

「……はあ、どうも」



カーネはアルトとジオにだけ頭を下げると、最後にレナの肩に手を一度置いてそのまま立ち去っていく。そんな彼の姿を見てアルトはため息を吐き、ジオは険しい表情を浮かべていた。



「アルト王子、あの男を招待したのは誰ですか?」

「僕は何も聞かされていないよ。だけど、恐らくはマドウ大魔導士だろうね」

「大魔導士……どうしてあの御方はあのような男を気に入っているのですか?あくまでも噂ですが、自分の孫と奴の娘を婚約させようとしていると聞いておりますが……」

「それは僕ではなく、本人に尋ねてくれ。では、僕は他の人に挨拶しないといけないから失礼するよ。レナ君、それに皆もパーティーを楽しんでほしい」

「アルト君……いや、アルト王子様、ありがとう」

「アルトでいいよ。知人が困っているのを黙って見過ごせないからね、気にしないでくれ」



カーネから助けてくれたアルトにレナは礼を告げると彼は笑みを浮かべて立ち去り、他の貴族に挨拶回りを行う。その様子を見てドリスは頬を赤めてうっとりとした表情を浮かべる。



「アルト王子、相変わらず素敵な御方ですわね。王子様なのに偉ぶりもせず、お優しいお方ですわ」

「……そうだね」

「う~ん……凄く優しい人だとは思うけど、なんだろう。やっぱりちょっと怖い感じがする」



ドリスの言葉にナノは同意するが、ミナは何故か不思議そうな表情を浮かべ、アルトを見ていると彼女は落ち着かなかった。武人としての本能なのかアルトが内に何かを抱えていると察し、どうしてもアルトに一歩引いた態度を取ってしまう。


レナは自分を助けてくれたアルトに感謝する一方、招待状を送り込んだマドウの姿を探す。まだ宴の席には参加していないようだが、アルトの話では後に姿を現すと思われ、その間は適当にミナ達と雑談を行おうとすると、背後から声を掛けられる。



「君、ちょっといいかな?」

「え?」



話しかけられたレナは振り返ると、そこには3人組が存在し、一人は身長が3メートル近くも存在する大男、その隣にはミスリル製の甲冑を身に着けた男性、さらに隣には森人族と思われる金髪の美女が存在した。


唐突に話しかけられたレナは3人を見て戸惑い、何処かで会った覚えはない。特に身長が異様に大きい男性に至っては一度見れば忘れるはずがない。彼等を見て驚いたのは他の人間も同じらしく、ダリルが唖然とした表情を浮かべて呟く。



「あ、あんた……巨人族か?」

「ああ、そうだ。よく分かったな」

「いや、分かったなって……見れば分かるだろうが」

「すまない、うちのダンゾウは冗談が下手でね。あまり気にしないでくれ」

『おいおい、ルイ団長。その前に自己紹介ぐらいしておこうぜ、俺達が黄金級冒険者の「金色の隼」だってな』

「黄金、級……!?」



レナは冒険者の最高位である黄金級を名乗る甲冑の男性の言葉に驚き、全ての冒険者の憧れにして目標でもある「黄金級冒険者」が自分の前に現れたことに動揺する。そもそも彼等が何故アルト王子の誕生パーティーに参加しているのかと全員が戸惑うと、ジオが喜んだ声を上げてルイと握手を行う。


将軍であるジオと親し気に話しかけている辺りは只者ではないのは分かるが、格好を見ても普通の貴族とは思えない。いったい何者なのかとレナは聞き耳を立てると、気になる会話が聞こえてきた。



「おお、ルイ団長とカツ副団長ではないか!!遠征から戻って来たのか?」

「お久しぶりですね、ジオ将軍。お察しの通りに牙竜の討伐を終えて戻ってまいりました」

『いやぁっ、いつも通り今回の相手もきつかったぜ。なあ、ダンゾウ?』

「ああ、そうだな」



将軍であるジオと3人は親し気に話し合い、その様子を見て不思議に思ったミナが皆を代表してジオに尋ねた。



「叔父さん、この人達って……」

「ああ、すまない。紹介が遅れたな、彼等は王都の冒険者ギルド「大虎」に所属する黄金級冒険者の集団(パーティ)を組んでいる「金色の隼」だ」

「金色の隼……あの有名な!?」

「す、凄い!!」

「本物……!?」

「おおっ……初めて見た」

「「……?」」



ジオが彼等の紹介をした途端にドリス、ミナ、ナノ、シノの4人は驚いた表情を浮かべるが、生憎と辺境の街から訪れたダリルとレナは彼等の存在を知らず、首を傾げる。


レナ達の態度を見て自分達の存在を知らない事を察したのか、ルイと呼ばれたっ金色の隼の団長を務める女性は苦笑いを行いながら改めて自己紹介を行う。



「初めまして、金色の隼の団長を務めるルイと申します。君がレナ君でいいかしら?」

「あ、はい……えっと、俺の事を知ってるんですか?」

『当たり前だろ、坊主自分がどれだけ有名なのか知らないのか?』

「冒険者ギルドでもお前の噂で持ち切りだ。戻ってきて早々にとんでもない冒険者が現れたという話は聞かされている」

「そう、それで興味を抱いた私達は貴方に会いに来たというわけ」

「はあ、そうだったんですか」

「ちょ、ちょっと!?レナさん、どうしてそんなに反応が薄いんですの?あの黄金級冒険者の金色の隼が会いにに来てくれたのですわよ!?」

「ドリス、落ち着いて!!君が興奮してどうするの!?」



レナの反応が薄いのに対して部外者のドリスの方が興奮し、慌ててナノが彼女を抑えつける。そんな彼女を見て金色の隼という存在が余程この王都では人気の高い存在だとレナは知った。

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