第195話 何処かでお会いしました?

「あれ?そういえばドリスさんが連れてくるお友達は一緒じゃないんですか?」

「あら?ちょっと、何をしているですの。早く馬車から下りてきなさい」

「し、しかし……この恰好で人前に出るのは恥ずかしいです」

「ん?」



馬車の中から聞き覚えのある声がしたレナ達は首を傾げ、最近何処かで聞いたような声だった。だが、馬車の中から現れたのは白色のドレスを身に着けたドリスにも劣らない美少女が姿を現す。


外見は赤色の髪の毛を三つ編みに纏め、身長はレナと同程度であり、ミナ同様に発育の良い体型の美少女が姿を現す。ドリスが赤色のバラを想像させるドレスに対し、こちらは白色のバラを思わせるドレスを身に着けていた。



「紹介しますわ、皆さんも知っているかもしれませんが彼女名前は……」

「わぁっ!!わああっ!!」

「うわっ!?びっくりした!?」



ドリスが当たり前のように名前を告げようとすると美少女は騒ぎ出して彼女の口を止め、そのまま馬車の方まで連れ込み、何事か話し合う。美少女の言葉を聞いてドリスは訝し気な表情を浮かべながらもレナ達の元へ戻り、改めて彼女の紹介を行う。




「……えっ?どうしてそんなことを……別に正体ぐらい構わないじゃないですか」

「いいから、お願いします……!!」

「はあ、しょうがないですわね……皆様、失礼しました。この方は私の友人のナノさんですわ」

「ど、どうも……ナノと申します」

「あれ、その声、何処かで聞いたような……前にお会いした事ありましたっけ?」

「え、えっと……実は僕、いえ、私も魔法学園に通っていまして」

「え、そうなんですか?なるほど、だから見覚えがあったのか……廊下とすれ違っていたのかな」

「……?」



ナノと紹介された美少女にレナとダリルは首を傾げ、何処かで会ったような気がするが思い出す事が出来ない。だが、シノは何か心当たりがあるのか不思議そうに首を傾げ、どうして「彼女」がそんな恰好をしているのか疑問を抱く。


しかし、ナノに質問する前に王城から出迎えの馬車が到着し、商会の前にドリスとナノが乗り込んできた馬車よりも豪勢で大きな馬車が立ち止まる。



「レナ様、ダリル会長、お迎えに上がりました。馬車にお乗りください」

「あ、はい!!おい、お前等早く乗り込め!!」

「分かりましたわ。では、ナノさん。一緒に乗りましょう」

「え、ええ……そうですわね」

「なんですかその変な口調は?いつも通りに話せばいいじゃないですの」

「んんっ?」

「レナ、あの子は前に来た……」

「わぁっ!!わああっ!!」

「おい、何を騒いでんだお前等!?早く乗れって!!」



シノがナノの正体をレナに話そうとすると、慌ててナノがそれを引き止め、そんな彼等の様子を見たダリルが焦った表情を浮かべながら馬車へ乗るように指図する。


パーティーが始まる前から騒ぎを起こす不安な面子であるが、今更引き返す事は出来ずに全員を乗せた馬車は出発した――






――王城の方では既に数多くの出迎えの馬車が立ち止まり、城内に通されるとレナ達は裏庭の方へ案内される。どうやらアルトの希望で今回のパーティーは室内ではなく外で行われるらしく、既に大勢の貴族が集まっていた。



「あ、お~い!!レナ君、こっちだよ~!!」

「こら、ミナ……そう騒ぐんじゃない」

「ミナ……それと、もしかしてその人がミナの?」

「うん、この人が僕の叔父さんだよ」



パーティー会場には既にミナの姿も存在し、彼女の隣にはダリルよりも少し若い男性が立っていた。身長は180センチ程存在し、体格も太く、見るからに「武人」という言葉が相応しい外見をしていた。


ミナの父親と叔父は帝国の将軍を勤めているという話はレナも聞いており、初めて会うミナの保護者にレナは丁寧にお辞儀を行う。



「初めまして、ミナさんにはよくお世話になっているレナと言います」

「おお、君がレナ君か!!なるほど、姪の話の通りに男とは思えない程に綺麗な顔立ちをしているね」

「あはは……よく言われます」

「いや、すまない。気を悪くしたら謝るよ。君の話はよくミナから聞かされている。何でも優秀な魔法学園の生徒のようだが、最近は学園の方に顔を出さなくて寂しいとよくぼやいていたよ」

「ちょ、叔父さん止めてよ!?そ、そんな事……少ししか言ってないからね?」

「初めまして、レナの保護者のシノです」

「おい!!保護者は俺の方だろうが!?すいません、うちの子が迷惑を掛けて……ダリル商会の会長を勤めているダリルと申します」



ちゃっかりと自分がレナの保護者だと名乗り出るミナにダリルは慌てた様子で口を挟み、そんな彼にミナの叔父は改めて自己紹介を行う。



「おお、これは失礼。こちらの自己紹介がまだでしたな。私はヒトノ国の第二将軍を務めるジオと申す。以後、お見知りおきを」

「第二将軍……?」

「大将軍、第一将軍の次に偉い将軍職。分かりやすく言えばこの国で3番目に偉い将軍」



シノがこっそりとレナに耳打ちを行い、どうやらミナの叔父はヒトノ国の中でも相当高い地位の将軍であるらしく、その割には貴族ではない一般人であるダリルやレナ達にも礼儀を払う立派な人物に思えた。

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