第192話 大魔導士からの呼び出し

――ナオとの手合わせを終えた後、レナはコネコとシノと共に屋敷へ向かう。その途中、コネコは気になったようにシノに尋ねる。



「そういえばシノの姉ちゃんは普段何してんだ?ダリル商会に雇われたんだよな?なら、どんな仕事してるのか気になるんだけど……」

「基本的に私の仕事は他の商会の動向を探ったり、レナや商会主のダリルの警護を任されたりする。けど、今は別の仕事で忙しいからあんまり一緒にはいられない」

「別の仕事?それって何だよ?」

「大切な仕事だから内容は話せない……レナ以外には」

「俺以外には?」



シノは周囲の様子を伺い、尾行されていないと判断すると二人を人気のない場所へ移動させ、彼女は手紙を差しだす。手紙を渡されたレナは不思議に思いながらも受け取ると、シノが耳元に囁く



「これはある人からレナへの手紙。内容はレナだけが読んで欲しい」

「手紙?」

「何だよ~あたしは除け者か?見せろよ兄ちゃん~」

「コネコは私と遊ぶ。ほら、猫じゃらしも持ってきた」

「あたしは猫じゃねえよっ!!ちょ、顔の前に近づけるなって……にゃああっ(威嚇)」



コネコの相手がシノが行う間、レナは手紙の差出人を確認しようとするが封筒には記されておらず、仕方なく中身を確認する。中身は用紙と招待状と記された紙が入っており、手紙の差出人が大魔導士のマドウである事が発覚する。


内容を要約すると『明後日にアルト王子の誕生パーティーが開かれるため、魔法学園の生徒として王城へ訪れるように。尚、ダリル商会の会長の同行も求む。友人も誘ってもよし』と記されていた。


招待状にはレナ、ダリル、それと3名の友人を誘ってもよいらしく、ここでレナは不思議に思う。どうしてマドウがわざわざ自分達をパーティーに誘ったのか意図が掴めず、自分達に用事があるのであれば魔法学園に呼び出せばいい話である。



(何か考えがあるのかなマドウさん……それにしても3名か、誰を誘おうかな?)



レナの友人といえばコネコ、ミナ、デブリ、シノの4名に当たり、一人は残念ながら除外しなければならない。その前に全員に明後日の用事を尋ねる必要があり、明日は魔法学園に赴き、友人たちに相談する事にした――





――翌日、久しぶりに魔法学園に訪れたレナは騎士科の生徒の教室にて久しぶりにミナ達と再会し、アルト王子の誕生パーティーに呼ばれた事を伝えると全員が驚愕する。



「お、お前……アルト王子の誕生パーティーに呼ばれたって、それがどんなに凄い事なのか分かってるのか!?」

「そんなに凄い事なの?」

「王族の、しかも王家の跡取りの誕生を祝う宴だぞ!?当然、呼び出される人間は将軍とか大臣とか、貴族や大商人ぐらいだぞ!!」

「あ、実は僕も叔父さんと一緒にそのパーティーに来るように言われてたんだった」

「そういえばミナの姉ちゃん、前に叔父さんが将軍だって言ってたよな」

「うん、だから僕も一応は誘われてるんだけど……」



ミナの叔父はヒトノ国の将軍を務めており、彼女もアルト王子の誕生パーティーに家族と共に招待されているという。最もミナはパーティーには気乗りしないらしく、貴族や王族が開くパーティーはあまり好かないらしい。


一応は将軍の娘として何度かパーティーに参加した事はあるが、外見が優れているせいでよく他の貴族から婚姻を申し込まれたりもしたという(ちなみに全員にきっぱりと本人が断った)。



「前に親戚の貴族のパーティーに参加した事があるんだけど、招待された人たちは貴族の人ばっかりでつまらなかったな。皆、家柄の自慢ばっかりしてくるもん。それに僕が貴族じゃないと知ると途端に偉そうな態度を取るし、かといって大将軍の娘だって言うとペコペコと手のひらを返してくるし……だからアルト王子の誕生パーティーも参加するつもりはなかったけど、皆が来てくれるなら僕も行こうかな」

「じゃあ、丁度良かった。この招待状だと3名まで同行してもいいらしいから、皆で行こうか」

「じょ、冗談じゃない!!僕はいかないからな、お偉いさんが集まるパーティーなんて絶対に楽しめないじゃないか!!」

「あたしも行きたくはないかな……貴族とか王族とか、そういう奴等に気を遣わなきゃならないんだろ?面倒そうだし、いいや別に」

「私は別にどっちでもいい」



ミナは既に招待されているので同行の必要はなく、レナは丁度いいのでデブリたちを誘おうとするが、デブリとコネコは拒否する。シノは特に賛成でも反対でもなく、レナに判断を委ねる。


マドウ直々の呼び出しなのでレナも断れるはずがなく、ダリルとだけ行くのもなんなのでシノだけでも参加してもらいたいと思い、彼女の同行は決まる。となると2名分の枠が空き、この際に誰か他の人間を誘うか考えた。



「あと二人か……誰か誘えないかな?」

「レナ、それなら私が最近仲良くなった人を呼んでもいい?」

「え?誰?」

「レナも知っている人……授業が始まる前に呼びに行く」

「俺も知っている人……?」



シノに連れられるままにレナは彼女の後に続き、教室を離れる。そして廊下を歩く途中、シノが向かう方向が魔法科の生徒の教室だと気付く――






――数分後、魔法科の教室の前でレナは対抗戦で見かけたドリル髪の金髪美少女が現れ、彼女は話を聞くと上機嫌で承諾してくれた。



「アルト王子の誕生パーティーと招待となれば私も当然参加しますわ。お誘いいただきありがとうございます」

「あ、はい……あの、シノの友人って」

「ドリス、対抗戦の後に色々と気が合って仲良くなった」

「あの日以来、私達は強敵ともから戦友ともになりましたわ」



あまりにも意外な組み合わせにレナは驚き、何時の間にか仲良くなっていた二人に驚きを隠せない。





※作者も二人の仲の良さに驚いてます。どうしてこうなった……(;´・ω・)!?

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