第183話 マドウに相談

「貴様等の仕出かした行為は決して許される行為ではない!!この対抗戦は魔法科と騎士科の競い合いだけではなく、お互いの能力を披露する場でもあった!!しかし、よりにもよって公平な立場に立つべき教師が不正を行うなど言語道断!!イヒド、貴様は魔導士の称号を剥奪する!!」

「そ、そんなぁっ……!!」

「そしてゴマンといったな、君は王国貴族でありながら教師の不正に加担し、しかも犯罪者ギルドと接触した容疑がある!!しばらくの間は我々の元で監視下におくぞ!!」

「な、何だって!?どうしてそこまで……」

「お主、自分が何をしたのか理解しておらんのか?いくらイヒドに頼まれたとはいえ、お主は貴族の立場でありながら盗賊ギルドと関係を持った。つまり、お主は奴等に弱味を握られたのだ。この意味が分かるか?」

「あっ……」



ゴマンはマドウの言葉を聞いて顔色を青くさせ、この王都で暮らす人間で盗賊ギルドの恐ろしさを知らぬ者はいない。今更ながらにゴマンは自分の仕出かした行為の恐ろしさを理解すると、身体の震えが止まらない。


やっと自分達の立場が危うい事を理解した二人を見てマドウはため息を吐き出し、残りの魔法科の生徒に視線を向けて確認を行う。



「君たち3人は彼等が不正を行っていた事を知っていたか?」

「い、いえ……知りませんでしたわ。ですが、試合中に魔石を使用したときも普段よりも魔法が上手く扱える感覚があったのが気付いていました」

「俺は魔法を使う暇もなく倒されたので、魔石が入れ替えられていたのは気付かなかったです……」

「ぼ、僕は知りませんでした!!本当です、嘘じゃありません!!」



ドリスは試合中にいつも使用する魔石よりも出力が高い事に薄々気付いていた事を素直に告げ、他の二人は魔法を使う機会がなかったので魔石が入れ替えていた事は気付かなかったと申告する。


嘘を言っている様子には見えないが、気づいていなかったという証拠がない以上はそう簡単に信じるわけにはいかないが、3人の言葉を聞いていたシノがマドウに声を掛ける。



「学園長、この3人は「嘘」をついていないと思う。忍者の勘」

「むっ……そういえば君は忍者か、確か忍者の中には嘘を見抜く能力を持つ者もいると聞くが、君も持っているのか?」

「相手の顔と声をしっかりと聞いていれば嘘は見抜ける」



マドウの言葉にシノは同意すると、彼はドリス達に視線を向け、ここは忍者の称号を持つ彼女を信じて保留を言い渡す。



「よろしい、それでは君たち三人は不正とは関わらず、魔石が入れ替えていた事を気付いていなかった事を信じよう。だが、いくら知らなかったとはいえ、試合中に訓練用ではない魔石を使ったという事実は覆せん。よって今回の対抗戦は試合に不正が行われたという事で一時中止とする!!」

「ううっ……」

「何でこんな事に……」

「悪い事をするから罰が当たったんだよ、きっと……」



対抗戦の中止を言い渡されたイヒドとゴマンは地面に突っ伏して落ち込み、その様子を見てレナが呟く。結局、今回の対抗戦は勝敗は有耶無耶なまま中断されてしまうが、まだ一つだけ大きな問題が残っていた――





――対抗戦の中止が言い渡されてから1時間後、レナはマドウに呼び出され、学園長室にて彼と向き合う。レナが呼び出された理由は当然「ウカン」が関係しており、部屋に辿り着いて早々にマドウは結論を告げる。



「魔法学園に入学したウカンという生徒、調べた限りではどうやら盗賊ギルドの人間だと判明した。彼が学園に入学した理由は君の命を奪うために訪れたと自白した」

「そうですか……」

「だいたいの事情はゴロウ先生から既に聞いておる。なんでも、カーネ商会に目を付けられて盗賊ギルドの連中に狙われているらしいのう」



レナの相談を受けていたゴロウは事前にマドウに話を通していたらしく、彼のさり気無い気遣いに感謝しながらレナはマドウに相談を行う。



「あの……学園長はカーネ商会の会長と付き合いがあると聞いたんですけど」

「ふむ、儂がカーネの奴に君を狙う事は辞めるように言って欲しいのだな?」

「はい、どうかお願いします!!」



マドウは考え込む素振りを行い、立場的にはカーネはマドウには逆らう事は出来ず、彼が一言告げるだけでカーネはレナを狙うのを止めるはずだった。


どうにかここでマドウからカーネに注意をしてもらえばダリル商会に迷惑は掛からないと思ったレナは頭を下げて頼み込むと、マドウは難しい表情を浮かべて向き合う。



「魔法学園の生徒の頼みとあれば聞いてやりたい所だが……その願いを聞くのは厄介な問題が出てくる」

「問題、ですか?」

「知っての通り、既に盗賊ギルドは君の命を狙って刺客まで送り込んでいる。しかし、話を聞くところによると君は何度もその刺客を撃退しているようだな?」

「撃退というか……まあ、結果的には」



レナ一人で盗賊ギルドから派遣された刺客を全員撃退していたわけではないが、マドウの言葉にレナは頷くと、マドウは何かを決意した様に語りだす。



「君は七影という存在を知っているか?」

「七影?」



マドウの言葉にレナの脳裏にウカンの顔が思い浮かび、戦闘の際中に彼が「七影」という単語を使っていた事を思い出す。

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