第143話 ゴロウの忠告
「おっと、そろそろ行かないとまずいかな……これを片付けたら学校へ行くか」
そろそろ登校しなければ遅刻するかもしれず、急いでレナは裏庭の片づけを行うと、魔法学園へ向かう準備を行う。ちなみにこの勝手に持ち出した人形に件に関しては魔法学園の教師たちからきつく説教をされた――
――朝に教師に呼び出されて人形の件で説教を受ける羽目になったが、その後は大人しく授業を受けて本日分の内の勉学を終わらせたレナは荷物を整えて下校の準備を進めていると、騎士科の担当教師であるゴロウから呼び出しを受ける。
「レナ、ちょっといいか」
「ゴロウ先生?どうかしたんですか?」
「少し話がある……付いてきてくれ」
「あ、はい……皆、悪いけど先に行っててくれる?」
「別にいいが……」
「うん、分かった。なら、大迷宮の広場で待ってるからね?」
「兄ちゃん、早く戻って来いよ」
デブリ、ミナ、コネコは先に大迷宮へ繋がる広場へと向かい、3人と別れたレナはゴロウの後に続くと、彼は近くの空き教室に入ってレナに座るように促す。誰にも聞かれないようにゴロウは扉に鍵を施し、そして用件を伝えた。
「レナ、お前最近何かしたのか?」
「え?」
「盗賊ギルドの連中がお前を狙っているという噂が流れている。何か奴等に恨まれるような心当たりはあるか?」
ゴロウの言葉を聞いてレナはカマセとリッパーの件を思い出し、盗賊ギルドが本格的に自分の命を狙っているという話を聞いて冷や汗を流す。そんなレナを見てゴロウはため息を吐きながらも忠告を行う。
「奴等が本当にお前を狙っているとしたら、これからの行動は気を付けろ。盗賊ギルドの連中は命を狙う相手に容赦はしない、今後は街に出るときは護衛を同行させるか、あるいは常に戦闘の準備だけは整えておけ」
「はい……分かりました」
「それと、お前が狙われるというのであればもしかしたらお前の友人や知人にも危機が及ぶかもしれん。しばらくの間は目立つ行動は避けて大人しくしておけ。万が一の事態に陥った時は俺に相談しろ、以上だ」
「あ、ありがとうございます」
「話はこれだけだ。それと、魔法科との対抗戦に関して何か相談したい事が俺の所へ来い。魔術師と戦う時の戦闘法の助言ぐらいはしてやる」
「はい!!その時はよろしくお願いします!!」
ゴロウの言葉を聞いてレナは彼が自分を心配してくれて忠告を行った事、そしてゴロウも騎士科の生徒を応援している事を知り、素直に頭を下げて感謝の言葉を告げる。ゴロウはそんな彼を見て軽く手を振って教室から立ち去る。
残されたレナは自分が狙われていると理解してゴロウの忠告通り、戦闘準備だけは常日頃から整えておく事を決めて今後は街へ出るときも闘拳、籠手、ブーツ、そして最後に魔銃の装備だけは忘れないようにする事に決めた――
――教室を抜け出した後、急いでレナは大迷宮に繋がる広間へ向かったコネコ達を追いかけるため、学園を抜け出してすぐに走り出す。今から走れば3人に追いつくかと思ったレナだが、不意にゴロウの言葉が気にかかり、移動速度を落として周囲の様子を伺う。
(盗賊ギルドが本当に俺を狙うとしたら……こういう街中で一人で行動している時が絶好の襲撃の機会だと思うはず。なら、慎重に進まないと)
リッパーの時の様に凄腕の暗殺者が自分を狙っているかもしれないと判断したレナは敢えて急がずにゆっくりと街を歩き、常に周囲を警戒して動く。コネコが傍に居れば尾行する人間の存在に気付くことも出来たかもしれないが、生憎と今は彼女はいない。
レナは周囲を警戒しながらも路地を発見すると、敢えて路地の方へ移動して人気のない場所へ移動を行う。もしも既に誰かがレナの尾行を行っていたとしたら、人気のない場所に訪れた瞬間に襲ってくるはずであり、レナは迎撃の準備を整えて路地を進む。
(……来た!!)
しばらく歩いていると、路地の入口の方で商人のような恰好をした男が立ち止まり、それを確認したレナは男の様子を調べると、相手は懐からカマセも利用していた「小杖」という道具を取り出す。それを見たレナは相手が盗賊ギルドの刺客だと判断して反撃の準備を整える。
「喰らえっ!!ボルト!!」
「土壁!!」
相手はカマセと同様に雷属性の砲撃魔法を放つが、それを予測していたレナは掌を地面に押し付けた瞬間、付与魔法を発動させて地面の土砂を隆起させて「壁」を作り出す。
その結果、放出された電流は土の壁によって遮られ、電流は地面に流れて無効化された。その光景を見た男は慌てふためく。
「なっ!?ば、馬鹿な!?」
「ちょっと、何してのよ!!」
「ちっ、役立たずが!!逃げられるだろうが!!」
商人に変装していた魔術師の男以外にも同行者が存在したらしく、土壁の向こう側から二人の男女の声が響く。
それを聞いたレナは土壁を解除させて隆起させた土砂を崩すと、こちらへ駆け込む獣人族の女性と人間の男性の姿を確認する。女性の方は短剣を構え、男性の方は剣を握り締めていた。
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