第131話 盗賊ギルドの掟
「ちっ……何もかもお見通しか」
「あ、白状した。証拠がないからただの当てずっぽうだったんだけど……」
「なっ!?てめえ……」
レナの言葉にカマセは悔しげな表情を浮かべるが、これでカーネ商会の仕業だと確定した。カーネ商会は盗賊ギルドとも繋がっている事が判明した。
「あんた達以外に俺を狙う奴等は居るの?」
「さあな……答えると思うか?」
「まあ、言うはずがないか……なら、前の時のようにこのまま警備兵に突き出す」
「よし、また懸賞金もいただきだ!!」
「ふん、そんな事してもどうせすぐに釈放されんだよ!!俺には盗賊ギルドが味方しているからな!!」
「いや、お前はもう必要ない」
拘束された状態にも関わらずにカマセは悪態を吐くと、彼の頭上から声が掛けられ、全員が驚いた表情を浮かべると何時の間にか建物の屋根の上に立つ人影が存在した。
全く気配を感じさせずに現れた人物に驚き、特にコネコでさえも接近に気づけなかったという事実に動揺した。太陽の逆光によってレナ達の位置からは姿は良く分からないが、声を聞いただけでカマセの顔色は変わる。
「だ、誰だお前は!?」
「一体何時の間に……」
「あ、あんたは!?嘘だ、どうしてあんたがここに……!?」
デブリとミナは驚きの声を上げ、カマセは屋根に立つ人物の顔を見て顔面蒼白となり、身体を震わせる。その反応からどうやらカマセは相手の正体を知っているらしく、レナは何者なのかを尋ねる。
「誰?知り合い?」
「ま、待ってくれ!!俺はまだ役に立つ!!だから、殺さないでくれ!!」
レナが話しかけてもカマセは聞こえなかったように取り乱し、股間から小便を漏らすほどに怯える。その様子を見た屋根の上の人物は地上へ音も立てずに降り立ち、その光景を見てレナ達は異様な雰囲気を感じとる。
突如として現れた人影の正体は顔面に刺青を施した男性で、片目には眼帯をしていた。フードで全身を覆い隠しているが、身長は150センチ程度で小さく、体型もやせ細っている。白髪頭が目立ち、年齢もそれほど若くはないと思われた。
「カマセ、貴様は与えられた任務を失敗するだけではなく、盗賊ギルドの名を語った。盗賊ギルドの掟に従い、お前を殺す」
「嫌だ、止めろ!!止めてくれぇえええっ!!」
「あ、おい!?」
両足までは拘束されていなかったカマセは立ち上がると、街道へ向けて駆け出す。そんな彼をレナ達は引き留める前に男が先に動き、目にも止まらぬ速さで移動を行う。
老人といっても過言ではない年齢だと思われるのだが、男はコネコを上回る速度で走り抜け、フードの下に隠してた短剣を引き抜き、レナ達を飛び越してカマセの背後から刃を振り下ろす。
「くたばれ」
「あがぁっ!?」
「や、やりやがった!?」
カマセの背中に飛び降りた男は彼を地面に叩きつけ、頭部へ向けて短剣を突き刺す。断末魔の悲鳴をあげたカマセから短剣を引き抜くと、男はレナ達の方へ振り返り、血がこびり付いた短剣を振り払う。
「……退け、そこの男達の始末する」
「ひいっ!?」
「皆、僕の後ろに下がって!!」
「こいつ、マジでやばいぞ!!きっと、あたしと同じ暗殺者だ!?」
「なんてことを……」
レナ達の傍で気絶している4人組の命も狙い、短剣を構えた男はゆっくりと近づく。ミナは全員を守るために槍を構えるが冷や汗が止まらず、相手の力量差を嫌でも思い知らされる。
(この人、強い……僕じゃ太刀打ちできないかもしれない。けど、友達を守らないと!!)
ミナは逃げ出したい気持ちを抑えつけて迫りくる男に槍を構えると、そんな彼女に対してレナは耳元で囁く。
「ミナ……俺が合図したら全力で槍をあいつに向けて突き出して」
「えっ……けど」
「大丈夫、俺に考えがある。俺を信じて欲しい」
「……うん、分かった」
「ほう……この俺を相手に何か策でもあるというのか?舐めるなよ、ガキどもが!!」
男は短剣を両手に構えると、凄まじい速度で突進を仕掛ける。コネコの言葉通りに男の「暗殺者」の称号を持ち、彼女以上の速度で駆け抜け、まずは先頭に存在するミナに襲いかかろうとした。
しかし、狭い路地内で男がどのように動くのかは予測できたレナは小袋から「銀玉」を取り出し、掌に握り締められる程の銀玉を掴むと付与魔法を発動させ、男の頭上に目掛けて放つ。
「喰らえっ!!」
「何だとっ!?」
無数の銀玉がレナの言葉に従うかのように降り注ぎ、事前に地属性の付与魔法の効果で重量が増加した状態で落ちてくる十数個の銀玉に対して男は咄嗟に両手の短剣で弾き返す。
短剣でどうにか全ての銀玉を弾く事に成功したが、予想外の頭上からの攻撃に男は上空からの防御に専念してしまい、隙が生まれる。それを見逃さずにレナが合図を行うとミナは槍を突き出し、男の腹部に目掛けて放つ。
「はああっ!!」
「ぐぅっ!?」
「や、やった!?」
「いや、まだだ!!」
ミナの槍を受けた男は後方へ吹き飛び、その光景を目撃したデブリは歓喜の声をあげるが、コネコが注意する。
彼女の優れた動体視力は男が槍が突き刺さる前に咄嗟に後方に飛んで致命傷を避けた姿を捉え、案の定というべきか男は腹部を抑えながらも立ち上がる。
「ぐうっ……!?」
「そんな、まだ動けるのか!?」
「このっ!!」
腹部を抑えたまま立ち上がった男にミナは追撃を加えようとしたが、男は寸前で上空へ跳躍を行い、壁を蹴って更に上昇すると建物の屋根の上へ移動を行う。
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