第127話 5人目の選手
「あのさ……僕、決闘に出てくれそうな人に心当たりがあるんだど」
「え、誰?俺たちの知っている人?」
「ううん、レナ君とコネコちゃんは知らないと思う。別の教室の人だから……けど、凄く強いよ」
「へえ、誰々?」
「……アルト君という人なんだけど」
「あ、アルト!?」
ミナがアルトという人物の名前を出すとデブリは驚愕の声を上げ、レナとコネコもその名前には聞き覚えがあった。この学園でも有名な人物であり、入学生の中でも恐らくは最も名前が知れ渡っている人物で間違いない。
「それって……もしかして、アルト王子?」
「それって確か、この国の第二王子様だろ?」
「な、なな、何を言い出すんだミナさん!!よりにもよって、王子様を誘うなんて……!!」
「うん、やっぱり不味いかな~……?」
――アルトはヒトノ国の第二王子であり、年齢はレナ達と同世代でこの魔法学園に通っている。どうして一国の王子が訓練校に通っているかというと、アルト王子は特別な称号を身に着けており、その才能を伸ばすために国王の提案で彼は魔法学園に入学させている。
アルトの称号に関しては一般の生徒には知られておらず、彼が成人するまでの間は称号の存在は秘匿する事が決まっていた。それでも騎士科の生徒として入学している時点で彼の称号が戦闘職である事は間違いないのだが、何故か公表はされていない。
「前に授業で席が隣同士になった時に少しだけ話したんだけど、王子様と言っても結構気さくな人だった気がするんだけど……」
「だ、駄目だ駄目だ!!もしも王子様の身に何か起きたら、僕達の首が飛ぶぞ!?」
「と言っても、他に心当たりはあるの?」
「ううっ……だ、誰か声を掛ければ一人ぐらいは引き受けてくれるかもしれないし、とにかくアルト王子は駄目だ!!」
デブリはアルト王子を勧誘する事を拒み、レナ達も彼が頑なに拒むのであれば仕方なく諦めようとした時、廊下を通り過ぎようとしていた青年が立ち止まり、レナ達に話しかけてきた。
「ちょっといいかな、君たちもしかして僕の名前を今呼ばなかったかい?」
「あ、アルト王子!?」
「きゃああっ!!アルト王子よ!!アルト王子様が来たわっ!!」
「アル様ぁっ!!こっち向いてぇっ!!」
「あ、手を振ってくれたわ!!私に手を振ってくれたわ!!」
レナ達の会話の途中で金色の髪の毛が特徴的な美青年が近づき、その顔を見たデブリは反射的に彼の名前を叫ぶ。彼こそがヒトノ国の第二王子であるアルトであり、彼が教室に入ってくると女子たちが騒ぎ出す。
教室中の女子たちがアルトの姿を見ただけで騒ぎ出し、そんな彼女達にアルトは困った風に腕を振ると、更に歓喜の悲鳴が響く。アルトはレナ達の元へ赴くと、男性とは思えぬ魅惑的な笑顔を浮かべて話しかけてくる。
「やあ、君たちは確か……レナ君、コネコ君、ミナさん、デブリ君だね」
「えっ……俺たちの名前を知ってるんですか?」
「当然だよ、君たちは有名人だからね」
「……なんであたしは君付けなんだよ。ミナの姉ちゃんはさん付けなのに」
アルトが自分達の事を知っていた事にレナは驚くが、彼によるとレナ達はこの魔法学園でも有名な存在らしく、むしろ知らない人間がいる方がおかしいという。アルトは全員に軽い挨拶を行うと、本題に入った。
「それで、さっき廊下を通り過ぎる時に僕の名前が聞こえたような気がしたんだけど、何か僕に用事があるのかい?」
「い、いいい、いえ、何でもありません!!」
「いや、緊張し過ぎだろ。何言っているか全然わかんねえよ……」
デブリはアルトを前にして緊張気味に歯を震わせて喋り、そんな彼の態度にアルトは困った表情を浮かべ、事情を尋ねるためにレナの方に視線を向ける。ここまで本人が来た以上は隠し事は出来ないと判断したレナは仕方なく話す事にした。
「実は俺たち、このデブリ君から決闘の選手として出場して欲しいと言われたんですけど、最後の1人が誰がいいのか決まらなくて話し合ってたんですよ」
「そうそう、それでミナの姉ちゃんがあんたを選手に加えられないのか提案してきたわけ」
「あ、あんた!?お馬鹿、このガキ!!アルト王子に失礼だろう!?」
「いや、別に僕は気にしてないよ。けどね、コネコ君。君のような可愛い女の子がそんな言葉遣いをしては駄目だよ。もうちょっとだけ女の子らしい話し方をする方が君には似合うよ」
「けっ、あたしはこういう話し方しか教わってないんだよ」
アルトは優しくコネコに語り掛けるが、当のコネコはアルトのようなタイプは気に入らないのかレナの背中に身を隠す。
そんな彼女の反応にアルトは困った表情を浮かべ、これまでに大抵の女子はアルトが笑いかけるだけで言う事を聞いてきたが、コネコのように正面から言い返されたのは初めてらしい。
レナはコネコを庇いながらここにアルトが来た以上は一応は話をするべきかと判断し、彼に決闘の選手として出場できないのかを質問する。
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