第126話 決闘

「デブリ君、それにゴマン君!!また貴方たちですか!!いったい何を騒いでいるんですか!?」

「先生!!デブリの奴が僕に絡んできたんですよ!!騎士科の生徒の癖に、魔法科の僕に逆らうのがいけないんだ!!」

「こいつ、まだ言うか!!」

「止めなさい!!」



ゴマンの言葉にデブリは掴みかかろうとするが、それを教師は慌てて抑えつける。そんな二人に対して廊下の方から声が上がる。



「ならば戦ってみるがいい!!」

「こ、この声は……学園長!?」

「学園長だ!!」

「大魔導士が学園に!?」



廊下から二人に声を掛けてきたのはこの国の大魔導士である「マドウ」であり、彼の姿を見て生徒たちは騒ぎ出す。何しろ彼は滅多に学園には顔を出さず、レナ達も入学式以来に彼の顔を見た。


先ほどカーネが学園長に用事があって訪れたと言っていた話を思い出したレナは彼の話しが本当だった事を知り、マドウは騒ぎを起こしている二人の生徒の元へ移動すると、魔術師でありながら圧倒的な威圧感で二人を恐縮させる。



「君たちの会話は聞こえていた。ゴマン君といったな、君は本当に騎士科の生徒が魔法科の生徒よりも劣っているというのか?」

「いや、あの……」

「デブリ君、君も先ほど魔術師は守られなければ何も出来ないと言っていたが、その言葉は本気で思っているのか?」

「うっ……そ、それは……」



マドウに問いかけられたゴマンとデブリは何も言い返せず、彼の気迫に押されて全身から冷や汗を流す。老齢とはいえ、その迫力は現役の将軍であるゴロウにも劣らなかった。


それは他の生徒も同じであり、この国の2番目に位置するといっても過言ではない存在に問いかけられて緊張しない人間はいない。



「君たちの言い分はよく分かった。それならこの学園の規則に則り、決闘を行うといい。先生、決闘の審判を任せる」

「け、決闘!?」

「何もそこまでしなくても……」

「いや、これは必要な事だ。本当に魔術師が誰かに守られなければ役に立たないのか、戦闘職の人間が魔術師の捨て駒でしかないのか、はっきりとさせなければならん」



決闘という単語にゴマンもデブリも驚愕し、他の教師は流石にやりすぎだと止めようとしたが、マドウの言葉に逆らえる人間はいない。


この魔法学園において彼が一番上の立場の人間という理由もあるが、現役の将軍でもあるゴロウにも負けず劣らずの気迫を放つ彼を前にすると生徒も教師も言い返す事も出来ない。



「ですが学園長、決闘場に関しては先日の魔法科の生徒同士の使用で破損状態が酷く、未だに修理は完了していません。すぐに決闘を行うのは不可能です」

「むっ……そういえばそうだったな。では、修理に幾日かかる?」

「恐らく、三日程度かと……」

「そうか……ならば丁度良い機会だ。この際に決闘の人数を増やそうではないか」

「はいっ!?」



マドウの言葉に教師は驚き、他の生徒たちも何を言い出すのかと驚愕するが、学園長は裏庭に集まった生徒達に宣言する。



「三日後、この魔法学園の決闘場にて魔法科と騎士科の生徒の合同訓練を行う!!内容は今年入った新入生の中で5名の生徒を選抜し、決闘を行う!!」

「5名!?」

「合同訓練!?」

「ここにいるゴマン君やデブリ君と同じ考えを持つ者も多いだろう。それならば選抜は彼等に任せ、生徒同士で大々的に競い合おうではないか!!」



予想外すぎるマドウの言葉に生徒達に動揺が走るが、学園長の決定ならば誰も逆らう事は出来ず、ここで魔法科と騎士科の合同訓練が決まった。生徒の選抜は今年に入学した生徒に限り、決闘の発端人であるデブリとゴマンが騎士科と魔法科の生徒から5名を選ぶ事が決まった――





――学園長が自ら大々的に魔法科と騎士科の生徒の決闘を認め、しかも5名の生徒同士で決闘を行うという話は即座に学園中に知れ渡り、大きな騒ぎになった。これまでに魔法科と騎士科の生徒が騒動を起こしたのは初めてではないが、学園長が介入するような事態は一切なかった。


決闘に出場する生徒の選抜を任せられた2人の生徒は三日以内に決闘に出場する選手を用意しなければならず、しかも今年入学した生徒に限定される以上、当然ながらに生徒の中でも目立っているレナ、コネコ、ミナの教室にデブリはやってきた。



「頼む、3人とも!!どうか決闘に協力してく……」

「うん、いいよ」

「いいぜ」

「魔法科の生徒と決闘か……魔術師と戦うのは初めてだからどきどきするね」

「決断早いな!?いや、有難いけれども!!」



デブリの言葉にあっさりと3人は承諾し、逆に驚かれてしまう。レナはこの際に魔術師と戦闘を積むことは悪い事ではないと判断し、コネコの方はデブリと同様に普段から騎士科の生徒を見下す魔法科の生徒が気に入らず、ミナの場合はそろそろ騎士科の生徒以外と戦ってみたいという欲求があったのであっさりと承諾する。


あまりにも簡単に決闘を引き受けた3人にデブリは戸惑うが、入学制の中でも成績が上位に位置する3人の協力は有難く、これで後1人を選抜するだけで決闘の人数は集まる。だが、その最後の一人が誰にするのかが重要だった。



「デブリ君、最後の1人は誰にするの?」

「いや、まだ決めていないけど……」

「別に誰でもいいんじゃねえの?あたしと兄ちゃんとミナの姉ちゃんが3勝すればいいだけなんだろ?数合わせで適当に選ぼうぜ」

「おい!?僕は負ける事は前提に話してないか!?」

「まあまあ……」



コネコの言い分にデブリは憤慨するが、ミナは最後の一人に心当たりがあるのか、ある人物を推薦する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る