魔法学園編
第121話 魔法学園の生活
――ダリル商会の危機を救ってから一か月が経過する頃、レナとコネコはダリルの元で世話になり、魔法学園へ通えるようになった。3人は晴れて騎士科の生徒として魔法学園へ入学し、騎士科の教師を務めるゴロウの元で指導を受ける。
魔法学園の授業は騎士科と魔法科の生徒で異なり、騎士科の生徒は朝から学園内の敷地にて実戦訓練を行う。騎士職の職業の指導官が数人が相手を行い、生徒たちに訓練の指導をする。そして騎士科でありながら唯一の魔術師であるレナの相手はゴロウが勤めるのが恒例になっていた。
「はああっ!!」
「ぬんっ!!」
魔法学園の訓練場にてレナとゴロウの気合の雄たけびが響き、他の生徒たちも訓練を中断して固唾をのんで見守る。コネコとミナはレナの応援を行い、他の生徒たちもゴロウを相手に善戦するレナを見て圧倒される。
「やっちまえ兄ちゃん!!」
「頑張れレナ君!!」
「す、すげえっ……」
「あいつ、本当に魔術師なのか?」
現在のレナの装備は右腕にミスリルを加工して強化された闘拳、左腕にはこちらも同様にミスリルによって強化された籠手、更にゴイルが持ってきてくれた特殊のブーツを装着して戦う。
今回は試験の時と違って鎧を身に着け、更にミスリル製の大盾を構えたゴロウに対し、レナは右腕の闘拳に付与魔法を施す。
「
「ほうっ……一瞬で魔法を重ね掛けしたか」
レナは闘拳に一瞬にして二回分の魔法の付与を行い、それを見たゴロウは大盾を構えて防御の体勢に入った。かつてレナの闘拳は付与魔法を重ね掛けすると負担が大きくてすぐに壊れてしまったが、魔法金属であるミスリルの加工が施された闘拳は以前よりも頑丈さと耐久力が増し、魔法の耐性も身に着けていた。
ゴイルによって強化された闘拳のお陰でレナは武器が壊れる心配もせずに全力で戦えるようになったため、ゴロウを相手に本気で挑む。ゴロウの方も相手が子供だからと油断せず、盾を身構える。
「重撃!!」
「ぐっ……!?」
大盾に闘拳が衝突するとゴロウの肉体に衝撃が走り、数十センチほど後退る。だが、それでもゴロウは瞬時に体勢を持ち直し、逆に大盾を突き出してレナを吹き飛ばそうとした。
突き出された大盾に対してレナは左手を構えて重力から作り出した衝撃波を放ち、衝撃を緩和させる。大盾が止まった瞬間、レノはブーツに意識を集中させ、付与魔法を発動させる。
「
「ぬうっ!?」
今度はレナの右足のブーツに紅色の魔力が宿り、それを目撃したゴロウは咄嗟に大盾を引こうとしたが、レノは回し蹴りの要領で大盾に放つ。
「だああっ!!」
「うおっ!?」
先ほどの攻撃よりも強烈が衝撃が大盾に走り、ゴロウは体勢を崩す。その隙を逃さずにレナは最後の一撃を加えるために右腕に更なる強化を施す。王都に訪れてから訓練を重ねた結果、更にレナの付与魔法の技術は磨かれ、二重強化の状態からさらに重ね掛けを行う。
「
「っ……!?」
右腕に宿る紅色の魔力がより一層に規模を増し、威力を更に上昇させた拳を放つ。まともに受ければ無事では済まない一撃に対し、ゴロウは大盾を手放して身体を反らす。
次の瞬間、大盾にレナの拳が衝突して派手に弾き飛び、ゴロウの頭上を横切って十数メートルは先の地面に墜落する。恐らく、重量は数十キロは存在すると思われる巨大な円盤型の盾がフリスビーのように吹き飛んだ光景に誰もが唖然とした表情を浮かべ、その一方でレナは全身から汗を流してゴロウを見下ろす。
「はあっ……ふうっ……先生」
「……見事だ。今日の訓練はお前の勝ちだ」
「やった!!」
「凄いよ、レナ君!!」
ゴロウの言葉にレナよりも先にコネコとミナが喜び、レナの元へ駆けつける。その様子を見て他の騎士科の生徒たちも拍手を送る事しか出来ず、ゴロウも笑みを浮かべた。
レナは額の汗を拭うと付与魔法を解除させ、一息を吐き出す。以前よりも付与魔法を扱えるようになり、更に一か月の魔法学園の生活のお陰で体力は身に付いた。だが、未だに地属性の「二重強化」や「三重強化」を発動させると大きく体力と魔力を消耗してしまう。
(先生は訓練だから手加減してくれてたけど、もしも本気で戦っていたら勝負にならなかったな)
今回の組手ではレナは勝利したが、それはあくまでもゴロウが守備に徹した事であり、彼は反撃の際にしか攻撃を行わなかった。仮にゴロウが本気で戦う場合、防御だけに専念せず、攻撃を行っていればレナも勝てたとは限らない。
盾騎士は防御力に特化した職業ではあるが、だからといって攻撃に適していないわけではない。彼等の殆どは普通の武器よりも重くて頑丈な盾を扱うので腕力や脚力は自然と鍛え上げられ、格闘家や剣闘士の職業の人間にも負けない筋力を誇る。そんな筋力で攻撃された場合、無事では済まない。
(地属性の付与魔法の重ね掛けはやっぱり普通よりも魔力をかなり使うな……けど、前よりも発動時間が短くなった)
今までのレナは地属性の付与魔法を発動させる際は時間が掛かったが、この一か月の間に一度目の魔法の発動で最高で3回分の魔法の付与を行えるようになった。反面に魔力の消耗量も大きくなってしまったが、瞬時に魔法を発動出来る事で戦闘でも上手く活用できるようになった。
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