第70話 コネコ

――3人の追剥ぎを気絶させた後、すぐにレナは街の警備兵に報告を行い、彼等を引き渡す。付与魔法の能力を利用して3人組を担いできたレナに対して警備兵は驚かれたが、すぐに対応してくれた。


どうやら最近王都で人さらいを行っている集団のメンバーだと判明する。しかも1人は賞金が掛けられていたらしく、報酬金も貰った。



「これが賞金だ。それにしてもお前達のような子供がよくこいつらを捕まえられたな……」

「ありがとうございます。一応、冒険者も務めているので……」

「ん?兄ちゃんも冒険者だったのか!?あたしも冒険者だよ!!」

「えっ!?そうだったの?」



警備兵から賞金が入った小袋を受け取る際にレナが冒険者である事を知ったコネコも驚き、自分も冒険者である事を明かす。コネコの言葉を聞いてレナは驚き、彼女の話が事実ならばコネコは最低でも13才を超えている事になる。


どうみても外見は10歳程度にしか見えないが、コネコとレナの年齢差は1才ぐらいしか違いはなく、外見は子供のように見えても先ほどの盗賊たちを圧倒した素早さは見事だったので冒険者だとしてもおかしくはない。むしろ冒険者だからこそ、追剥ぎなどに恐れずに立ち向かう度胸があったのだろう。



「冒険者と言う事はコネコちゃんは何歳なの?」

「ちゃんづけは止めてくれよ……あたしの年?あたしは13才だよ。けど、最近になって国の法律だかのせいで冒険者資格を剥奪されたけどな……」

「ああ……やっぱりね」



コネコも最近までは冒険者だったらしく、彼女は銅級冒険者として活動していたらしいが、折角厳しい試験を突破して冒険者になれたにも関わらずに一か月でヒトノ国が定めた法律によって冒険者資格を剥奪されたらしい。


だからこそ生活の収入源を奪われてしまい、仕方なく賞金首を捕まえて生活費を稼ごうとしていたらしい。


レナを助けたのは只の偶然ではなかったらしく、彼女は賞金首を探しているときに3人の追剥ぎの事を聞きつけ、調査しているときにレナに絡んでいる3人組を見つけて助けに入ったという。



「本当に国の奴等はむかつくよな!!あたしがどんな苦労をしてあんな厳しい試験に合格したと思ってるんだよ!!」

「おい……我々の前で堂々と国の事を卑下する言葉は使わないでくれないか?」

「あ、すいません!!コネコ……さん、あっちに行こうか?」

「さん付けもいらないよ……コネコでいいよ」



警備兵が険しい表情を浮かべたのでレナは慌ててコネコを連れて駐屯所を離れ、彼女の愚痴を聞く。




――何でもコネコは元々はこの王都から離れた街の孤児院で暮らしていたらしく、他の沢山の子供達と暮らしていたという。しかし、孤児院は経営難で子供達に与える御飯も碌に用意出来ない程に貧しかったらしく、彼女は孤児院のために自分が働いて仕送りをする事を決める。


まだ成人年齢に達していないコネコでは働ける場所は限られるため、彼女は冒険者ならば危険な仕事と引き換えに高額な報酬を貰えるという噂を耳にして孤児院を飛び出したという。


冒険者の試験を受けるための資金や当面の生活費に関しては先ほど遭遇した追剥ぎのような連中から金を巻き上げていたらしい。


コネコの両親は小さい頃になくなったらしく、親戚は誰も彼女を引き取らずに孤児院に押し付けた。だが、彼女は孤児院の人達に優しく育てられ、他の子供達とも協力しあって生きてきた。だからこそ孤児院が潰れないように頑張ってお金を稼いで仕送りするために日々身体を鍛えてきたらしい。


どうやらコネコは「暗殺者アサシン」という戦闘職の称号を持つらしく、名前は物騒ではあるがレナの付与魔術師と同様に「希少職」と呼ばれる職業だった。同系統には「盗賊シーフ」と呼ばれる職業が存在し、この二つは戦闘職ではあるが実際には戦闘以外の場面で活躍する事が多い。



「あたしの称号はなんか知らないけど、偵察や逃走向きの能力ばっかりでさ。あんまり戦闘向けの戦技は覚えにくいんだってさ。だから仕事を引き受けるときは他の冒険者と組む事が多かったかな」

「へえ、どんな事をしてたの?」

「まあ、偵察とか捜索とか連絡役とか……とにかく、地味な事ばっかりやらされたよ。戦闘の時も他の奴等の援護ばかりやらされてた」



残念ながらコネコの暗殺者の職業は格闘家や剣闘士のような戦闘向けの職業ではなく、彼女は足が速いが力が弱いらしく、戦闘ではあまり活躍できなかったという。せいぜいが敵を翻弄したり、他の仲間の援護程度しか出来ず、いつも歯痒い思いをしていたという。



「あたしにとって冒険者という職業はさ、こう敵をばさばさと倒したり、悪い魔物をやっつける感じの仕事だと思ってたんだよ。でも、実際の冒険者の連中って金回りが良くない仕事は引き受けないし、面倒そうな仕事は新人に押し付けるし、本当にがっかりだよ」

「ああ……まあ、そういう人もいるよね」



レナの冒険者ギルドの冒険者達にもコネコの語るような面倒な冒険者も何人か存在したが、レナが階級を昇格する度に危機感を覚え、今では殆どの冒険者が真面目に仕事をしている。しかし、コネコの場合は加入した冒険者ギルドの人間の質が悪かったのか、彼女は冒険者という職業に失望したという。


それでも子供の彼女が金銭を稼げるのだから文句は言えず、地道に活動を続けてやっと孤児院にまともな仕送りが出来ると思った時に国からの使者が訪れ、彼女は強制的に冒険者資格を剥奪されたらしい。当然だがレナと同様に彼女は納得出来ずに抗議したら、魔法学園の入学を勧められた。

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