第60話 レナの成長
「何だろう今の馬車……ダリルさんが乗っていた馬車よりも凄い豪勢だったな。何処かの貴族の馬車かな?」
イチノ街に向かった馬車を見送ったレナは不思議に思いながらも自分も街へ向かおうとした時、後方から今度は複数の足音が響く。先ほどの馬車を狙っていたのか、ゴブリンの集団が駆けつけてきた。
『ギィイイイッ!!』
「……ちっ、面倒だな。疲れているときに……
帰って身体を休ませたいときにゴブリンの集団と遭遇したレナは左腕を構え、弾腕のスリングショットを解放すると懐から銀玉を取り出し、迫りくるゴブリンの集団に対して腕を構える。反対の腕で銀玉を握り締めたレナは付与魔法を発動させ、ゴブリンを殺す「弾丸」へと変化させた。
レナが握りしめた銀玉に紅色の魔力を纏わせると、弾腕のゴム紐に3つの「弾」を加えると、迫りくるゴブリンに向けて放つ。重力によって加速した銀玉は弾丸の如く発射され、接近してくるゴブリンの急所を撃ち抜く。
「ギィアッ!?」
「ギャウッ!?」
「ウギィッ!?」
弾丸の数は3つではあるが、肉体を貫通して次々と別のゴブリンの肉体にも届くため、一気に半数近くのゴブリンが倒れた。
最初の頃と比べると射程範囲も50メートル近くまで存在し、更にレナが手元を手繰り寄せる動作を行うと弾丸は彼の元へ戻る。
「よっと……うん、血は付いてないな」
『ギィイッ……!?』
以前はスリングショットを使用する度にゴブリンの血液が付着して汚れてしまった銀玉だが、重力を調整する事で付着しようとする血液さえも押しのけるようになり、今では使用後も汚れる事はなくなった。前と比べると重力操作も磨かれていた。
「ギギィッ!?」
「ギギッ……ギギィッ!?」
仲間が一瞬にして半分も倒れた事で生き残ったゴブリン達は困惑し、前方に存在するレナの姿を見て恐怖を抱く。あの人間が自分達に何かをしたという事は理解しているが、一体自分達が何をされたのかまでは分からず、恐怖を抱く。
だが、ゴブリンの中には一際大柄な個体も存在し、かつて赤毛熊と同じくイチノ街を襲った「ホブゴブリン」が姿を現す。最近ではホブゴブリンも草原に出没するようになり、大抵のホブゴブリンは人間から奪った装備を身に着けている事が多い。
「グギィイイッ!!」
「ホブゴブリンか……どこかの村の兵士から装備を奪ったのか?」
ゴブリンを掻き分けて現れたホブゴブリンは鉄製の鎧兜を身に着け、刃先が掛けた槍を握り締めていた。
その姿を見たレナはため息を吐きながら右腕に闘拳を身に着け、この際に自分がどれほど力を身に着けたのか試すために準備を整える。
「グギィッ!!」
「ギ、ギギィッ!!」
「ギィイイイッ!!」
ホブゴブリンが睨みつけるとゴブリン達は恐怖の表情を浮かべながらレナの元へ駆け出す。それを見たレナはホブゴブリンが力で他のゴブリンを支配している事に気付き、少しだけゴブリンに同情しながらも迫ってくるのならば容赦なく反撃を仕掛けた。
「
「ギギィッ!?」
「ギャウッ!?」
レナが左手を地面に押し付けて付与魔法を発動させた瞬間、地面が流砂の様に変化して迫って来たゴブリン達は足元を奪われ、身体を地面に飲み込まれていく。
慌てて脱出を試みたゴブリン達だが、流砂と化した地面は暴れる程に沈む速度が速まり、遂には完全に地面に埋もれてしまう。
「グギィッ……!?」
「どうした?お前は来ないのか大将?」
配下のゴブリン達が地面に飲み込まれていく光景を確認したホブゴブリンも流石に動揺を隠せず、数歩だけ後退りを行うとレナは挑発するように左手を離してわざとらしく小馬鹿にしたような態度を取る。それを挑発と受け取ったホブゴブリンは怒りを抱き、咆哮を放ちながら接近してきた。
普通のゴブリンよりも知能が高いはずにも関わらず、相手の挑発を受け取ったホブゴブリンは槍を振り回しながら駆けつけ、それを見たレナは両手に紅色の魔力を滲ませる。まずは相手のカウンターを取るために左手に魔力を集中させ、ホブゴブリンが突き出してきた槍に掌を放つ。
「反発!!」
「グギャアッ!?」
突き出された槍の刃先にレナの掌が近づいた瞬間、重力が衝撃波のように拡散してホブゴブリンの槍を吹き飛ばすだけではなく、巨体を倒れさせる。重力操作を調整すれば攻撃範囲も広がり、相手の体勢を崩す事も用意だった。
「グギギッ……!!」
「まだやる気か?今の内に逃げ帰った方が良いと思うけど?まあ、逃がすつもりなんてないけど!!」
上半身を起き上がらせたホブゴブリンに対してレナはため息を吐きながら見下ろすと、単細胞のホブゴブリンはさらに怒り狂い、起き上がってレナの身体を捕まえようとした。
「グギィッ!!」
「遅い」
「グギャッ!?」
レナは迫りくるホブゴブリンを回避すると同時に足払いを行い、簡単に相手を転ばせる。バルとキニクの訓練のお陰で体捌きの方も磨かれ、止めを刺すために新しく覚えた攻撃法の発動を行う。
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