第56話 スリングショット
「それでよう坊主、お前の言う通りに作って見た奴なんだが……こんな感じでいいのか?」
「おおっ!!ありがとうございます!!」
「お、おう……こんな物を作ったのは初めてだからな、気に入ってくれたのなら良かったぜ。それにしてもこんなお玩具みたなのを付けてどうするんだ?言っておくが、悪戯に使うなよ」
「はい、分かりました」
ゴイルは最後にレナに頼まれた道具を机の上に乗せると、それを見たレナは自分の想像通りの道具が出てきた事に喜ぶ。ゴイルが最後に取り出したのは左腕用の籠手に玩具の「パチンコ」を取り付けたような道具だった。
――この世界には存在しないが、地球では「スリングショット(ゴム銃)」と呼ばれる道具をレナはゴイルに頼んで制作してもらう。外見は籠手にパチンコを取り付けたような見た目だが、必要時以外には腕に装着出来るようになっており、使用時のみにパチンコを使えるように改造していた。
パチンコと言われると威力は大して期待出来ないように思われるかもしれないが、実際のスリングショットも狩猟用として実在する道具も存在する。また、籠手といっても掌の部分は剥き出しになっているため、防御の際に「反発」を使用出来なくなる事はない。
どうしてレナはこのような装備を用意したのかというと、カイの狩猟に付いてきたとき、玩具として持ってきたパチンコを利用してレナは気の上に止まっていた鳥を狙い撃った事があった。
結局は鳥は当たった瞬間に逃げてしまったが、それを見たカイはレナのパチンコの腕を非常に褒め、もう少し威力があれば鳥を仕留められただろうと褒めてくれた。
(これを上手く利用すれば俺も遠距離からの攻撃が出来るようになるかもしれない)
魔術師でありながら後方支援が行えないレナは今までは戦闘の際には接近戦を挑むしかなかった。しかし、先日に赤毛熊との戦闘でビー玉を利用して相手を怯ませた事を思い出し、この籠手型のスリングショットを利用すれば遠距離からの攻撃も出来るようになるかもしれないと考えていた。
赤毛熊と戦闘した時、レナは一撃で自分が致命傷を負った時の事を思い出す。やはり、これからの戦闘の事を考えればどうしても接近戦以外の方法で戦う術を身に付けなければならないと判断したレナは急遽ゴイルに頼んで新しい武具を作り出してもらう。
「ゴイルさん、良かったらこれにも名前を付けて貰えませんか?」
「お、いいのか?なら、実はとっておきの名前があるんだ……こいつの事は「弾腕」と呼ばねえか?初めてこいつを作り上げた時に思いついた名前なんだが……」
「弾腕……良いですね、それにします!!」
レナは新たな闘拳の「紅拳」と「弾腕」を受け取り、最後に鎖帷子を装着する。どの武器も以前の物と比べると重量を増しているため、慣れるのに時間は掛かるだろうが装備品としては間違いなく向上していた。
「それとこいつも作っておいたぜ。鋼鉄から作り出した玉ころだ。これで全部か?」
「ありがとうございます!!」
最後にゴイルは小袋を差し出すと、レナは中身を確認して「鉄玉」が入っている事を確認するとゴイルに依頼金を支払う。
これで赤毛熊を倒した報酬の半分近くはなくなってしまったが、これからの事を考えるとどうしても必要な装備だった。
「ゴイルさん、本当にありがとうございました」
「良いって事よ、また仕事を頼みたいなら素材と代金を用意して来いよ!!」
ゴイルに礼を告げるとレナは早速新しい装備を試すため、数日ぶりに街の外へ出向く事にした――
――赤毛熊を倒した一件以来、街の外へも自由に出入り出来るようになったため、レナは新しい装備の肩慣らしと久しぶりの魔物との戦闘で勘を取り戻すため、今回は街を少し離れて魔物の姿を探す。
「最近、ゴブリンも草原に出没するようになったらしいけど……本当によく見かけるな」
レナは草原を見渡してみると、ちらほらとゴブリンらしき生物を発見し、今回の装備の初めての相手はゴブリンにする事に決めた。
個人的には相手がゴブリンである事に若干興奮を抑えきれず、村を襲ったゴブリン達の事を思い出してレナは目つきを鋭くさせる。
「まずは左手の方から試そう。こいつの射程距離を把握しないとな……」
左手に装着した弾腕のスリングショットを解放させると、小袋から鉄玉を1つ取り出したレナはゴム紐に引っ掛けると、まだ自分の存在に気付いていないゴブリンに狙いを定める。
最初の標的に選んだのは岩の上で呑気に身体を横たわらせているゴブリンに決めると、レナは30メートル程の距離で身体を伏せて狙い撃つ。
「
ゴム紐を話す寸前、レナは弾丸(鉄玉)に付与魔法を施すと、手を離してゴブリンに向けて撃ち込む。その結果、重力も加わって加速した弾丸は見事に寝そべっていたゴブリンの頭部を貫通し、血飛沫が舞う。
「ギギィッ!?」
「ギィイッ!?」
「ギィアッ!?」
突然に岩の上で休んでいたゴブリンが血を流して転がり落ちた事に周辺でたむろしていた他のゴブリン達は戸惑い、その光景を見て居たレナは握り拳を作る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます