第40話 コボルト
「ガアアッ!!」
「ガウッ!!」
「うわっ……」
「ほらほら、敵は1体だけじゃないんだよ!!油断するんじゃない!!」
1体のコボルトを倒した途端、危険を察したのか今度は2体のコボルトがレナに向けて駆けつけ、左右から同時に襲いかかって来た。それを見たレナは後方へ下がると、攻撃を躱しながら左手を地面に押し当てる。
「
『ギャウンッ!?』
「へえっ……そんな事も出来たのかい」
レナが魔法を発動させた瞬間、草原の地面が盛り上がると「槍」のように変形してコボルト達の腹部を打ち抜き、怯ませる事に成功した。
但し、あくまでも土砂を操作して作り出した槍なので柔らかく、現段階ではせいぜい怯ませる程度の効果しか存在しない。
それでも相手の隙を作り出すのには十分なのでレナは駆け出すと、片方のコボルトの上空に向けて跳躍し、頭上から闘拳を振り下ろすように叩き込む。
「重撃!!」
「ギャインッ!?」
「ガウッ!?」
コボルトの頭部に闘拳がめり込み、そのまま地面へと叩き潰す。それを目撃したもう片方のコボルトは驚愕の表情を浮かべ、後退してしまう。
しかし、それを確認したレナは即座に落ちていた小石を拾い上げてコボルトの顔面に投擲する。
「喰らえっ!!」
「ギャンッ!?」
「……中々良い腕してるね」
小石を的確にコボルトの目元に的中させたレナにバルは感心した声を上げ、相手の急所を攻撃するだけではなく、上手く意表を突いた事に彼女はレナの判断力を改めて見直した。
この小石を投げる技術はカイも得意としており、最後に彼が狩猟に出かけた時にゴブリン相手に使用した投石術を真似て磨いた技術である。
予想外の攻撃に顔面を抑えて隙だらけのコボルトに対し、レナは闘拳を地面から引き抜くと先ほどのように飛んでから攻撃を行うのは間に合わないと判断して左手を突き出す。
「反発!!」
「ギャインッ!?」
「ウォンッ!?」
掌底を繰り出してコボルトの顎に叩き込むと、体勢を崩したコボルトは身派手に土煙を舞い上げながら地面に倒れ込む。
その様子を見ていた別のコボルトはレナに恐れを抱いたように後退ると、その背後から大柄なコボルトが接近し、怖気づいたコボルトの頭を掴んで地面へ叩きつける。
「ガアッ!!」
「ギャウッ!?」
「えっ……」
「ちっ……」
唐突に仲間割れを起こしたコボルト達にレナは呆気に取られ、バルは気に入らなそうに舌打ちを行う。大柄のコボルトは自分の配下であるコボルトを地面へ叩きつけて蹴り飛ばす。どうやら餌である人間を相手に怯えた事が気に喰わなかったらしい。
その様子を見たレナは今の内にコボルトに攻撃を仕掛けるべきか悩んだが、コボルトはある程度まで痛めつけると満足したのか怖気づいたコボルトを解放し、レナと向かい合う。暴行を受けたコボルトは一目散に逃げ出し、そのまま立ち去った。
「グルルルッ……!!」
「こいつは厄介だね……レナ、もういい下がりな。ここはあたしが相手をしてやるよ」
「…………」
「……レナ?」
大柄のコボルトの相手はレナでは務まらないと判断したバルが闘拳を装着して前に出ようとしたが、レナは彼女の指示に従わず、仲間に危害を加えたコボルトに視線を向け、足元に落ちていた小石を拾い上げる。
先ほどのように相手を怯ませるために投げつけるのかとバルは思ったが、小石を握り締めたレナは付与魔法を発動させた。
「
「おい、何を……」
「ガアアッ!!」
小石に紅色の魔力を滲ませたレナにバルは話しかけようとすると、先に大柄のコボルトが動き出し、正面からレナに迫る。
慌ててバルも動くがコボルトの方が距離が短く、先にレナに辿り着く位置に存在した。彼女は咄嗟にレナに逃げるように指示を出そうとしたが、その前にレナは小石を投擲した。
「だあっ!!」
「ウォンッ!?」
「上に!?」
レナは先ほどの投擲とは打って変わり、コボルトにではなく上空へ向けて小石を投擲してしまう。その行動にコボルトは一瞬だけ呆気に取られたが、すぐに気を取り直してレナに向かう。
だが、レナに攻撃を仕掛ける前にコボルトの上空へ投げつけられた小石が軌道を変更し、コボルトの頭上へ向けて一気に降下する。
「どうだ!!」
「ギャウンッ!?」
「おおっ!?」
上空へ投げ込まれた小石が見事にコボルトの頭上へ的中し、砕け散った。あまりの衝撃にコボルトは脳震盪を起こしたようにふらつくと、レナは跳躍してコボルトの顔面に闘拳を振り下ろす。
「重撃!!」
「アガァッ!?」
「……やるじゃないかい」
渾身の一撃を叩きつけられたコボルトは顔面を陥没し、そのまま地面へ倒れ込む。どう見ても絶命しているコボルトを確認したレナは汗を拭うと、付き添いのバルに顔を向ける。
「バルさん、どうでしたか?」
「そうだね、初めての集団戦を相手にしてはよくやったよ。まあ、満点とは言えないけど及第点は超えてるね」
「そうですか……あの、コボルトの素材はギルドで買い取ってくれるんですよね」
「ああ、ほら急いでこいつらを解体するよ。あんまりぐずぐずしていると血の臭いを嗅ぎつけた他の魔物が来るからね!!」
レナとバルは急いで解体用のナイフを取り出し、倒したコボルト達の牙や爪や毛皮を剥ぎ取って街へ帰還した。
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