第5話 魔法の性質・種類
「し、信じられん……レナ、本当にこれを一人でやったのか?」
「うん、すっごくがんばったよ!!」
「有り得ない……い、一体どうやって?」
小さな子供が一人で、しかも道具も無しに畑を作り出せるはずがなく、カイとミレイはどのような手段でレナが空き地を耕したのかを尋ねると、レナは両手を広げて説明する。
「えっとね、はじめはじーじがおいていったどうぐをつかおうとしたんだけど、おもくてはこぶこともできなかったの。だからね、こうしてじめんにてをあててやったんだよ」
「地面に手を当てて……まさか、素手で地面を耕したのか!?」
「まさか、そんな事……!?」
「ううん、ちがうよ?こうしたんだよ」
レナが両手を地面に押し付ける姿を見てカイとミレイは素手で地面を耕したのかと驚くが、当のレナは首を振ると、両手を地面に押し付けた状態で目を閉じて何かを集中するように唸る。
「むむむっ……あれ、ちょっと待ってね、えいっ!!えいっ!!」
「レナ?一体何を……」
「お、お爺さん、地面を見て下さい!!」
踏ん張るように掛け声を上げるレナにカイは不思議に思うと、ミレイがレナの手元の地面を見て驚きの声を上げた。何事かとカイも地面に視線を向けると、レナの両手が紅色に光り輝き、掌を押し当てた箇所の土砂が動き出していく光景が広がっていた。
「やああっ!!」
「ぬおっ!?」
「きゃあっ!?」
一際大きな掛け声をレナが上げた瞬間、レナの前に存在した土砂が盛り上がり、大きな砂山を生み出す。それを目撃したカイとミレイは動揺を隠せず、一方で勢い余って転んでしまったレナは身体中が泥だらけになりながらも笑顔を浮かべて振り返る。
「ね?こうやってはたけをつくったんだよ」
「…………」
「お、お爺さん……もしかしてレナちゃんが使ったのは……!?」
カイは唖然とした表情を浮かべて言葉も口に出来ず、ミレイの方も激しく動揺しながらもレナの目の前に形成された砂山を見て冷や汗を流し、目の前でレナが繰り広げた行動を二人は理解した。
「レナ……お主、今のは「魔法」を使ったのか?」
「まほう……?なにそれ?」
「信じられない……まさか、レナちゃんが魔法を使えるなんて!!」
ミレイは興奮したようにレナの身体を抱き上げ、カイは戸惑いの表情を浮かべながらも出来上がった砂山に手を伸ばす。だが、当のレナ本人は二人が何をそんなに驚いているのか理解出来ずに首を傾げる。
――この世界には魔法を使える人間は「魔術師」と呼ばれ、彼等は魔法と呼ばれる現象を引き起こす事が出来る。だが、魔法を使える人間は滅多に存在せず、およそ1000人に1人の割合で魔術師が誕生するといわれていた。魔術師として生まれた人間はある年齢を迎えると自然と魔法を扱う事が出来るようになり、まるで子供が言葉を覚えるように何時の間にか魔法の力が芽生えていく。
魔法を扱える人間は滅多に存在しないが、他の種族の場合だと森人族は大抵の者が魔法を扱える。但し、巨人族は魔法を覚えた者はこれまでに存在せず、獣人族や小髭族の場合は人間よりも魔法を扱える者は少ない。また、魔物の中にも一部の生物は魔法と酷似した能力を扱う種も存在する。
魔法にはいくつかの種類が存在し、まず基本的には「風」「火」「水」「雷」「地」「聖」「闇」の7つの属性に分かれていた。それぞれの属性には特徴が存在し、例えば風属性の魔法は比較的に森人族が覚えやすく、火属性の魔法は人間や小髭族が覚えやすいといわれていた。
全ての種族の中でも魔法の知識や技術が盛んなのは森人族であり、彼等が魔法の技術で作り出した「
例えば魔道具とは異なるが、この世界には「魔石」と呼ばれる鉱石が存在する。この鉱石は魔法の力の源である「魔力」と呼ばれるエネルギーを宿す。また、各属性の魔力を宿した魔石によって性質が異なり、例えば火属性の魔石の場合は「燃焼」の性質が高く、高温で熱すると爆発を引き起こす危険性を持つ。
ちなみに魔術師の場合はこの魔力を体内で生産する能力を持つが、全ての属性の魔力を生み出す事は出来ず、基本的に魔術師が扱える属性は「2~3」あるいは「3~4」の属性が限界だと言われている。
但し、魔術師以外の人間が絶対に魔法の力を利用出来ないわけではなく、前述の「魔道具」と呼ばれる特殊な道具を扱えば普通の人間でも魔法の力を使えなくもなかった。例えば一般人が最も利用しているのは火属性の魔石を利用して火を生み出す魔道具も存在する。魔道具に火属性の魔石を装着するだけで魔石の力を利用し、炎を生み出す。この炎を利用して人々は料理や暖房などを行い、生活に役立てていた。
他にも水属性の魔石を利用して水を作り出したり気温を下げる効果を生み出す魔道具も存在し、雷属性の魔石を金網型の魔道具に装着し、外部から侵入しようとする輩に対して金網に電流を流して撃退するなど、魔道具にも様々な種類が存在した。
――だが、本来の魔石の使い方は魔道具の材料ではなく、魔術師の能力を高めるために存在する。魔石の真の力を使いこなせるのは魔術師だけであり、彼等以外で魔石の力を全て発揮できる存在はいない。
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