ポロの冒険記
俺の名はポロ。
若い頃から剣の才能に恵まれた俺は村の中でも一目置かれ、おんにゃの子にキャーキャー言われておっかけられたものだ。
そんな俺と村一番の美人のペラとの結婚が決まり、息子が生まれ順風満帆な生活を送っていた。
なのに、どこでこうなった……絶賛、森の中で道に迷ってる。
そう、悪いのはあいつだ。ペラの親友のロナだ。
あいつが誘惑してきたのが悪い。俺の心の隙をついて誘惑しやがって……美味しく頂きました。一夜の情事、それはいい。だけどな、それをペラに告げ口するか普通……誘惑したのはお前だぜ!
あの時のペラは怖かった……本当に怖かった。殺されるかと思ったな……ペラの後ろにオーガが見えた気がしたからな。どんなに俺が悪くないと思っていても口でおんにゃに勝てるわけがねぇ。
ロナのせいで俺は村の生活で肩身が狭くなった。村の戦士長の任も降ろされ、そのせいだけではないがペラとの関係もギクシャクになった。
はぁー、やってらんねぇ。旅にでもでるか。俺は自由を愛する男。こんな狭い村には似合わねぇ。ってことで旅に出た。愛する息子よ、こんな父を許してくれ。ペラをよろしくな。
俺のパトスが道を示すぜ!
って具合で旅に出たはいいが、蝶々を追っかけてたら道に迷った……。俺の狩猟本能が抑えきれなかったんだ。たぶん……。
もう、三日も森の中を彷徨い歩く。俺のパトスもたいしたことねぇな……。食い物は狩りの天才の俺にかかればなんの問題もないが、水がもう心許ない。早く水場を見つけないと干物になりかねん。
水場を求めて彷徨い歩いていると、遠くで争う音が聞こえる。ゴブリンが何かと争っているのだろうか? ゴブリンがいるということは近くに水場があるということだ。ちょっと行ってみるか。
「そちらのパーティーは左から回り込んで、弓を持つゴブリンをけん制してください!」
「「「おぉー」」」
「数が多いですねぇ。この先に集落があるのでしょうか?」
「どうしますか? 一旦、引きますか?」
どうやら、ゴブリンと戦っているのは人族のハンターたちのようだな。俺は木の上で気配を殺してその戦いを伺う。ゴブリンの数が多くハンターたちが苦戦しているのがわかる。ゴブリン如きに情けねぇ。
しかしこれほどのゴブリンがいるとなると集落を作っている可能性がある。もしかしたら、上位種いや、ゴブリンリーダーがいる可能性もあるぜ。厄介だな。
ハンターたちはこのゴブリンの集団を攻めあぐねてる。思った以上に統率がとれていて、弓を使うゴブリンを守るように布陣してやがる。ゴブリンの放つ矢などたいしたことはないが、ちまちまとハンターたちを傷つけ体力を消耗させている。こりゃあ、確実に上位種がいやがるな。
不味いことにゴブリンの援軍が近づいていることに、ハンターたちは気付いていねぇ。このままでは引くことももできなくなるぞ。
仕方ない、一丁貸しを作ってやるか。その貸しで町まで連れて行ってもらおうじゃないか。
そうと決まれば、狙うは弓を使うゴブリンだな。出し惜しみなく最初から必殺技を使っていくぜ。
気配遮断と抜き足差し足猫の足で弓ゴブリンの後ろに回り込み、俺の持つスキル『分身』でもう一人の俺を作りサーベルを抜き同時に切り込む。
「ゴブリンの援軍が来てるぞ! 早く引け!」
「なに!?」
弓しか持たないゴブリンなど俺の敵じゃねぇ。十体ほどいたゴブリンを斬りり捨て、ハンターたちのほうに移動する。ハンターたちはまだゴブリンと斬り合っている。馬鹿かこいつら? さっさと逃げろよ! 指揮官らしき男の所に行って撤退するように伝える。
「これはこれは珍しい御仁と会いましたね」
「おい、わかってるのか? 後ろからゴブリンの援軍が来てるんだぞ!」
「そうですね……ここは一旦引きますか」
その男は持っていた笛を鳴らして、ハンターたちに撤退するように言い放つ。
「あなたはどうします?」
「俺はポロ。一緒について行ってやるよ」
「どう見ても森で彷徨っていたようにしか見えませんが……まあいいでしょう。助けてもらったのは確か。これも何かの縁です。私はヴィッシュ、お見知りおきを」
「……」
ヴィッシュという男、俺を上から下まで見てそうのたまいやがった。確かに服はボロボロ、だけど飢えてはいないぞ! ちょっとだけサバイバルな寄り道をしていただけなんだからな!
その日は森を出て町道沿いで野営して、翌日の昼過ぎにはテルツォという町に着いた。
こ、こんな近くに町があったのかよ……俺っていったい……。
町に入るには金がいるそうだ。村を出て来る時に長から選別で少しばかりだが金をもらっている。衛兵に金を渡そうとするとヴィッシュがハンターギルドの関係者ですと説明して払わなくてもよくなった。
しかし、旅
ヴィッシュに連れられてハンターギルドって所に来た。でかい、うちの何倍あるんだ?
「少しここで待ってて下さい。すまないが、彼に飲み物と食事をお願いします」
酒場のような場所に置いてかれたが、飯を奢ってくれるようだ。ありがてぇ。
しかし、なんだ? 頼みもしないのに周りで食事してる奴らがなぜか俺の皿におかずを載せていく。載せていってくれるのは嬉しいんだが……頭を撫でるな! ガキじゃねぇぞ! 特におんにゃ共!
ふっー。もう食えん……腹が出っ張って足元が見えん……。
疲れた顔のヴィッシュが俺の席の真向かいに座る。
「ポロはこの町に知り合いはいるのですか?」
「いないな」
「なら、うちに来ますか?」
「いいのか?」
「家族が喜ぶと思いますので」
「悪りぃな。世話になるぜ」
こうして、村を出て初めての町の生活が始まった。
スローライフ?
何を言ってやがる。俺の冒険譚はこれからだ!
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