ミーちゃんとネロの会話
俺とミーちゃんの絆が強くなるにつれて、ミーちゃんと徐々に会話ができるようになった、そんな俺とミーちゃんの会話について話をしよう。
こちらの世界に来た時は、ミーちゃんの話していることがわからなかったのは確かなことだ。
それでも、ミーちゃんの鳴き声や表情でミーちゃんの言わんとしていることはわかっていた。
一方、俺と違ってミーちゃんは人がしゃべっていることを理解できているようで、俺もミーちゃんの言葉がわかればなぁと羨ましくもあった。
俺もミーちゃんとちゃんとおしゃべりができれば、もっと楽しく生活できるのになぁと常々思っていたのだ。
それがいつの頃からだろう? 俺の思いが通じたのだろうか? ミーちゃんのしゃべっていることが頭に響いてくるようになった。
ミーちゃんはいつも通りに『み~』としか鳴いていないのに、頭には『ネロく~ん、お腹すいたよ~』と響いてきたのだ。
最初は空耳かな? っと思ったけど、またミーちゃんが『み~』と鳴くと、『ネロく~ん、どうしたの~?』と可愛らしい声が響き、足元を見ると俺を見上げて首をこてんと傾げて見せるミーちゃんの姿がある。
取り敢えず、ミーちゃんのご希望にお応えして猫缶とミネラルウォーターを用意する。
「お召し上がりください。お嬢様」
「み~」
あれ? なにも頭に響いてこない。やっぱり気のせいなのかな?
この後もそんなことが幾度と続くことで、ミーちゃんの言葉が頭に響いてくる傾向がわかってきた。
それはミーちゃんが強く思ったことが、聞こえてくるということに気がついたのだ。強く思うこと、要するにミーちゃんの興味があることだ。
だから、ただのお返事や興味のあまりないことなどは頭に響かず、『み~』としか聞こえない。
そうとわかればミーちゃんとお話をちゃんできるのではないのか? と考え、試してみることにする。
宿の部屋のテーブルにバスタオルを敷いてミーちゃんを座らせる。ミーちゃんの正面になる場所に椅子を移動させて俺も座る。
「にゃにするにゃ?」
「ペロは黙っていて。これから、ミーちゃんの会話を楽しむから」
「にゃんにゃそれ?」
「み~?」
会話~? てミーちゃんが不思議そうに俺を見る。
そう会話だよ。俺はウイットに富んだ会話をミーちゃんとするんだ!
「ミーちゃんはお船が好きなんだよね?」
『み~ちゃんね、み~ちゃんね! お船が大好きなの!』
耳にはいつものミーちゃんの可愛らしい鳴き声が聞こえ、頭にはミーちゃんの可愛らしい声が響いている。
それにしても凄い喰いつきだ。ミーちゃん、よほど、お船が好きらしい。
「ミーちゃんはお船のどこが好きなの?」
『水に浮いて~どこまでも遠くにいけること~』
「そうなんだ」
『み~ちゃん、水に入ると~ブクブク沈んじゃうの。お船はみ~ちゃんを乗せて~どこまでもいくんだよ~』
そうだね。船は沈まないようにできているからね。ミーちゃんは、水が嫌いじゃないけど……泳ぎが下手みたいだしね。
『お船はね~猫が守り神なんだよ~。み~ちゃんもお船の守り神になるの~』
猫が船の守り神って大航海時代の話じゃないのだろうか? 航海の安全と幸運を司るって聞いたことがある。実際はネズミ対策として船に乗せていたって話だ。
ミーちゃん、あなたお幾つですか? 最近、ミーちゃんが意外に物知りだとわかってきた。もしかしたら俺より年上なのかも……。でも、小っちゃくて可愛いから気にしない。ミーちゃんはミーちゃんなのだ。
その後もミーちゃんのお船談議は続く。何度か船に密航を企むけど、すぐに見つかって
……ま、まあ、頑張れ。
機会があればお船に一緒に乗ろうね。
「み~!」
さて、ミーちゃんのお船スキーは理解した。
次にミーちゃんとお話したいことはあの話だ。そう、あの話だ。
「ミーちゃんは餡子好きだよね?」
『大好き~♪』
「猫缶と餡子、どっちが好き?」
一度、ミーちゃんに聞いてみたかった質問だ。なんて答えてくれるんだろう。ミーちゃん、首を傾げながらう~ん、う~んと悩んでいる。悩めるミーちゃんはとっても可愛いけど、悩んでいるのが餡子と猫缶のこと……。
『神様がたまに食べさせてくれる猫缶が一番なの~? 餡子は二番かなぁ?』
神様がたまに食べさせてあげる猫缶。いつぞや神様が書いていた高級猫缶のことか? やっぱりあるのか? 猫用品の熟練度が上がればでてくるのだろうか?
『たまに食べれる猫缶はみ~ちゃんのほっぺが落っこちゃうほど、美味しいんだよ~。でも、ネロくんが作ってくれる餡子もほっぺが落ちちゃうのぉ……』
それはそれは大変恐悦至極でございます。でも、餡子のどこが気に入ったの?
『舐めるとトロ~と溶けて甘~いの。でね~お口に残った粒粒を舌で潰すとサラサラ~ってお豆の味が広がるでしょう。残った皮もカミカミするとちょうどいい渋みが出てくるんだよ~』
ふむぅ。ミーちゃんはなかなかの通ですな。渋みがいいなんて乙なことを言う。
でも、ミーちゃんはまだ、粒あんしか食べたことがない。確かに粒あんは甘さの中にほんの少しの渋み、そして小豆そのものの風味を活かした餡子だ。
それに対してこしあんは皮を取ることよって渋みを取り除き、すっきりとした味わいで滑らかな舌触りに仕上げる餡子。
作るのが面倒だけど、俺はこしあんのほうが好きだ。
そのこしあんをミーちゃんが味わったらなんて言うだろう。おそらく、どっちも好き~♪ って言うに違いないね。
「み~?」
「今度、暇なときに今の餡子に少し手を加えた、こしあんというのを作ってあげるね。ミーちゃん、気にいると思うんだ」
『ほんとう!? み~ちゃん、楽しみに待ってるね!』
「ペロはまだ餡子食べたことにゃいにゃ……食べてみたいにゃ~」
ぐっ。ここで腹ペコ魔人登場は不味い。
ミーちゃんも俺を見つめてイヤイヤと首を振っている。ミーちゃんにしては珍しい、とても真剣な表情でイヤイヤされるとペロには悪いがうんとは言い難い……。
「ペロ。ミーちゃんの食べてるものは、選ばれた高貴な者しか食べられないんだ。俺は作っているから味見はするけど、食べてないだろう?」
「こ、高貴にゃ者だけにゃのか?」
「そうだなぁ。お金持ちなら食べようと思えば食べれるかなぁ」
なんといっても、餡子の半分は砂糖と言っても過言ではないからね。さすがにすべて砂糖で作るととても材料費が高くなり、愛するミーちゃんといえど毎日食べさせてあげることは困難なので、砂糖の代わりにハチミツを代用してるのは周知の事実。それでも、とても高価なお菓子には違いない。
いつか、ギルドのお姉さんたちに言われて作ったけど、請求書を見せた時お姉さんたち顔が引きつってたのを思い出す。それでも、ギルドの受付嬢のお姉さんたちは高給取りだから、ポンと出してくれた。
「ペロはお金持ってる?」
「も、持ってるにゃ! 五百レト持ってるにゃ!」
それって、俺がお小遣いであげたお金だよね?
「足りにゃいにゃ……?」
「全然、足りないよ」
「にゃ……」
ミーちゃんのためとはいえ、ペロが少し可哀そう。なので、希望だけでも与えよう。
「今度、ペロのハンター資格を取ろうよ。そうすれば、依頼をこなしてお金を稼ぐことができる。お金を貯めれば餡子どころか、いろんな美味しいものを好きなだけ食べれるようになるからね」
ペロの場合、あるだけに買い食いしそうでちょっと不安。
「おぉー、ハンター資格を取るにゃ! 美味しいもの一杯食べるにゃ!」
今でも十分、お腹一杯食べてると思うのは俺だけだろうか?
ペロの説得に成功してミーちゃんを見ると、ほっとした表情からニコニコ顔に変わった。正直、そこまでのことなのだろうか……?
それにしても、ミーちゃんとの会話は上手くいった。これからもたまにはこうしてミーちゃんとの会話を楽しみたい。
「ミーちゃん。また、お話しようね
『ミーちゃんね、ミーちゃんね。ネロくんとお話するの楽しいよ~♪』
こうして、ミーちゃんとの会話する方法を手に入れた俺は、益々ミーちゃんと楽しい生活を送り絆が深るのを感じていくのであった。
ちなみに、不死身のミーちゃんであるが、死ぬ前に食べたい物は餡子なのだそうだ……。
死ぬほど食べても……ミーちゃん、死にませんから!
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