16

 ご飯を食べ終わって、部屋に戻るとアキナはクローゼットの僕の服を物色していた。

「あの~?何してるんですか?」

「う~ん」

と言いながら更に物色を続けている。聞いてないな。

「何してるんだ?」

と言いながら、首根っこを掴んで持ち上げる。すると恐る恐るアキナは振り返る。

「こんなデザイン性も何もない服を着て恥ずかしく無いんですか?」

「そうか?どうせ訓練か、座学しか無いし、別に気にしなくていいだろ」

「そんなぁ、ファッションは意外と大事ですよ。イメージ的な意味で、特にマスターには重要です!」

「地味にひどいこと言って無いか?」

すると、いつからいたのか後ろからルリも批判してくる。

「いえ、ローグ様のファッションセンスは壊滅しています!」

「やっぱ、ひどいよね。君達」

「服買いに行きましょうよ」

と、ルリが提案してくる。

「いいですね。マスター!買いに行きましょう。私が服を選ぶの手伝いますから!」

「でも、お金ないよ。工房では基本的にお金は要らないからって、持たせてもらえなかったし」

「え?マスターは貴族じゃなかったんですか?」

「いや、貴族だよ。無駄遣いが嫌いな貴族も最近は多いからね?」

「そうなんですか…」

どうやら『当時』はいなかったらしい。

「うん」

すると先ほどよりも顔を明るくして提案してくる。

「じゃあ、せめて、マスターの服に刺繍でもしましょう。安上りですし、多分姉さんが用具くらい貸してくれるよ。ルリも昼間は暇だし、内職ってことにして教えてもらえば…」

「じゃあ、任せるよ」

そんな細かい作業は僕向きじゃない。昼間は二人とも暇だし、やることが出来たというとこだろう。

いえ、マスターの服なんですから、マスターもしてください!」

「え…、僕もするの?」

「多分、錬金術でも、細かい作業は必要になるでしょうし、集中力付ける練習だと思えば…」

無理やりな理由をマキナが押し付けてくる。

「それ、だいぶ強引じゃない?」

「ルリも、ローグ様と一緒に、したいです!刺繍」

「そうか、ならするか…」

こんなに期待されたら、やらざるを得ない。

 そうして、昼間は武術と座学、夜は刺繍の日々が始まったのであった。

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文明が発達した異世界を書いたら、ファンタジーじゃなくてSFになるって知らなかった件 kana @umihimekaho

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