12
食事を終えて、部屋へ戻る。ルリもついてきたが。風呂は済ませてきた。ベットに寝転がり、ポッケからさっきしまった勾玉を取り出す。今までよりはるかに赤みと透明度が上がっている。勾玉を布団の上に置いて、第一陣で純粋な生体マナを流す。するとやはり勾玉の周りの空気と魔素が凝縮されて人の形に収束する。すやすや眠ったマキナが具現化された。
熟睡していたはずだがすぐに目を覚ます。
「マスタ~、おはよう~。でもまだ、マナが足りないのです」
寝ぼけてるなマキナは、言動はいつもと違う。
「マナがもっと欲しいのです。もっと~」
そして僕の頬を持って顔を近づける。そして唇を近づけてくる。その唇に右手の人差し指と中指を当ててそれ以上の前進を止める。そして、左手で陣を開いて生体マナを半ば無理やり流し込む。
「ボフッ」
とマキナは謎の声を出しうずくまる。
「酷すぎます。こんなの酷すぎます」
「何が?」
マキナがうずくまっている状態のまま顔だけ上げて抗議する。
「マスターがまだ、マナの補給が完全じゃなかったのに勝手に呼び出して、その上マナの供給をあんなに適当な方法でするなんて」
「それはごめん」
「別に謝ってほしかったわけじゃなくて…。ただ、これからは気を付けていただきたいかな?と、少し思っただけです…」
マキナは僕の謝罪に戸惑っている。従者に主人が感謝の意を述べるだけでも異常なことなのに謝るとかどうしたら分からなくあるのもうなずける。
「というか、なんでそんなに早くマナが無くなるんだ?精霊は大きなマナの保有量があるはずだけど」
「それは私が信仰によって生まれた精霊ではなく、個人の意思によって生まれた精霊だからです。信仰によって生まれた精霊は本質的には悪魔と何ら変わりはないのです」
精霊は聖に属するもので、悪魔は邪に属するものだ。全然違うはずだ。
「生まれ方はどちらも同じ、人間からの信仰です。精霊は主に救済を望んだものなので、女体が多く、力はある程度しかありません。逆に悪魔は破滅を望んで生まれたものなので、怖い見た目をしていて、圧倒的な力を持っています。ただ、それだけの違いなのです。私は精霊なので、力はほんの少ししかありません。一部、アキナの記憶を受け継いでいますが、人間に劣っているこの体ではまともに魔法も使えません」
「精霊なのにか」
「気にしてることをそんなにサラッと言わないでください。凄く不便なんですから」
「すまない。じゃああれか、悪魔に聖の望みをすれば聖のために力を使うのか」
「はい。ですが、人々の邪な心を大きく向けられてしまった悪魔は、文字通り『悪魔』となってしまいます」
「じゃあ、精霊もか?」
「はい」
僕は少しばかり邪なことを考えてみる。
「いや、影響されませんから」
「バレてるのか」
「従者にはマスターの感情が終始流れているのですよ。例え、マスターが無意識の内でも」
「じゃあ、夢とかもか」
「はい。昨日夜は最悪でした」
「僕は何も覚えてないけどな」
「夢ですからね」
凄く話がずれてしまったので戻す。
「それで、マナはどのくらい持つものなのか?」
「一日、だいたい日が上ってから、落ちるくらいまでです」
「魔法を行使たら?」
「すぐに勾玉なります。それで三日は動けません」
「じゃあ大魔法なんて行使しようとしたら…」
「数年は動けないでしょうね」
「じゃあ、くれぐれも使わないでください」
「そんなに私のことを大切に思ってくれているのですね」
「ああ。そうだよ」
別に包み隠すことでもないと思ったのだが、マキナの顔は真っ赤である。
「凄く大切に思ってるからな」
「し、知ってますから!改まって言わなくても…」
と言うと布団にくるまってしまった。そして、そのまま勾玉に戻っていた。今日はおっさんの無謀な訓練のせいで凄く疲れてるし、明日もそれが待っているので、僕もそのまま早めに寝ることにした。勾玉を両手で握って。
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