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「じゃあまず、錬金術では何が一番重要だと思う?」

おっさんに言われ一瞬考えこむ。錬金術で一番大事なのは、その工程を知ることだろう。ならば一つしかない。

「錬金式ですか」

錬金式とは加工前の素材の魔粒子配列を示したものから、順番に使う陣によって、物質が変わっていく最中の素材を素材式を繋いで、完成形までを示す、計算式のようなものである。

「まぁ、魔力制御って言わないだけ、及第点か」

この人そう言ってたら、キレる気満々だったんだな。

「じゃあ、錬金式を書くためには何が必要だ?」

紙とペンって言いそうになったが、そうするとキレられそうなのでやめる。

「素材の知識と、錬金術の知識ですかね」

「そうだな。それも大切だな。だが、錬成した物質の知識も無いとな。錬金術も魔術だから、イメージが無いと使えないぞ」

「なるほど」と頷く。

「ということで、お前には一ヶ月かけてこの世にある、よく使う素材全ての錬金式と特徴などを覚えてもらう」

そう言って、おっさんは【ストレージ】から素材を出して作業中の人を一人呼ぶ。

「おーい。レール、ちょっとこい」

そしてどや顔で自慢なのか分からないことを自慢してくる。

「ここの連中はみんな覚えてるからな」

その鉱石には見覚えがあった。

「この鉱石の式と特徴を答えてみろ」

とおっさんが言うと、その人はすらすらと話し始めた。本当に覚えているのだろう。

「それは、トラコナイト希石で錬金式は#######、魔素の抽出や、挿入に使用します」

「と、まぁこのくらいは言えるようになってもらうぞ」

「本当にそれだけでいいのですか?」

それだけじゃ、その素材を知ったというには少なすぎるだろう。

「何だ?」

「トラコナイト希石は魔素濃縮度85%、半透明の火成岩で280G以上の力や、350度以上の熱で気化し、魔素に還元される。一定量の魔素を流すと光り、その光り方は魔素の性質によって決まる。生体マナの場合は黄色に、外気魔素の場合は白色に光る」

「よくおぼえてるなぁ。小僧」

おっさんの中でお前から、小僧にランクアップしたらしい。

「まぁ、覚えてるならいいことだ。だが、他の鉱石まで覚えてる訳じゃないだろ」

「はい。第二種錬金鉱石までしか、覚えてなくて」

スキル【解析】を使用をする練習のために、家にあった鉱石とか植物とかは何回も訓練を積んだので暗記している程に覚えている。第一種錬金鉱石は銅や鉄などの治金でも加工できる鉱石で、第二種錬金鉱石は希石や魔石などの錬金によって加工できる鉱石である。第三種錬金鉱石はほとんど使う機会はない。

「おお、第二種までか。なら、一から教える必要はないな。じゃあ、明日からの座学では錬金式を学んでもらう」

「はい」

座学以外の訓練が果たしてあるのだろうかとおもいつつ返事をする。

「そういうのは、早い方がいいからな。錬金術は実践が一番だからな。じゃあ、今日はもう休め、明日から早いからな」

「はい」

「それと、魔法と体術も一通りはやってもらうからな。その様子だと形意文字も使えるだろ。じゃあ、実践の相手は俺がやってやるぞ」

「ありがとうございます」

 錬金工房では、武器を使う必要もないから実践訓練なんて無いと思っていたが、あるなら嬉しい。昔思った夢に近づいている気がするから。

「じゃあ、今日は休めよ」そう言っておっさんは工房へ行ってしまった。寮の場所教えて貰って無いのに。すると、さっき呼ばれた人が教えてくれた。「あの人、ズボラだから」と笑いながら。

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