夢の中なら案外できる！？

AFTER ～1年後～

「・・・大丈夫のようですね。でもまだ無理はしないで、何かあったら来てください。」

「はい！ありがとうございました、先生！！」

診察を終え、元気そうに病院内の会計に向かう女性を見て、看護師たちがひそひそ話をしている。

「ねぇ、今歩いて行った方、1年前までずっと眠っていた人でしょ？」

「そうそう。ちょうど20歳の時「眠り病」にかかって、以来7年近く起きなかったんだけど、1年前突然意識が戻ったのよね。」

「不思議なことがあるものよねぇ。」

「・・・風が気持ちいい」

私は髪を押さえながら思わず口に出してしまう。

1年前まで、私は20歳から約７年眠りっぱなしだったらしい。

「眠り病」と名付けられたその病は、今に至るまでその原因はわかっていない。どんな検査をしても正常値。ただ眠り続けるという病。

なので、私が起きた際は結構騒然。

お医者様に色々聞かれたけど、正直自分はその時の記憶とか無かったので、特に何も答えられなかったのがちょっと悪かったと思ってる。

実は、ちょっとだけうすら覚えている光景と言うか、人？　がいるんだけど、それはなぜか言えないでいる。

それから大学を中退し、リハビリを経て、就職活動をし晴れて採用！

今日がその初日だ。どんな職場だろう。

そして、どんな人たちと出会うのだろう？

あの夢から1年が過ぎた。

劇的に変わったことなど、何もない。

ただ、少しだけ自信がついた気がする。

それが良い方に向いたのか、職場でも少しずつ信頼を得てきているような気がする。

以前からやりがいのありそうな、「新人教育」という職務を与えてもらったのもその表れかもしれない。

さて、自分が始めてみることになる新人社員はどんな人かな？

「初めまして、本日からよろしくお願いします！」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

目が合う。「「あ！？」」

果たして、あれは本当にただの夢だったのだろうか？