第3話 ティターン眷属
かくして、ウラノスを追放したクロノスは、兄弟姉妹達を皆、タルタロス(奈落)から救い上げた。
しかしである。
新王の座についたクロノスは、一つ目の三巨人キュクロペス(単数形キュクロプス)と、百腕の三巨人ヘカトンケイレス(単数形ヘカトンケイル)の怪力を恐れ、その六柱の巨人達をを再びタルタロス(奈落)に閉じ込めてしまった。
そして地上に残ったティターン神族で新たに世界の創造に着手したのである。
ガイア(大地)と、先王ウラノス(天空)の子たるティターン神族とは次の十二柱である。
男神が、オケアノス、コイオス、クレイオス、ピュペリオン、イアペトス、そしてクロノス、そして女神が、テイア、レイア、テミス、ムネモシュネ、ポイペ、そしてテテュスであり、これらティターンの神々の大半が兄弟姉妹婚をし、その眷属を形成していった。
ティターン神族の女神で海の豊穣を司る末娘のテテュスは、長兄である大洋の男神オケアノスを夫とし、まず、世界中のありとあらゆる河川を生んだ。河川神のほとんどは男神で、その数は三千を優に上回った。
ついで、テテュスは全ての海や泉などのニュムパイを生んだ。ニュムパイ(単数形はニュムペ)とは、自然現象に宿る下級の女神たる<精霊>のことで、高位の神々のように不老不死ではないが、極めて長寿の存在である。
この聖なる精霊たる姫神達は、オケアノスの娘達はオケアニナイ、あるいはオケアニデス(単数形オケアニス)と呼ばれ、世界各地に散らばっているオケアニナイの数もまた三千を越える。オケアニナイは、地上から地下世界に至るまで世のあらゆる水域の世話に従事していた。後に、この水の精霊達は、アポロンと共に地上にて若者達を育て上げ、豊穣をもたらすという役割をゼウスから与えられることになる。
これらテテュスとオケアノスの子供達、河川と泉の神と精霊の中でも最も位が高いのが長女たる女神ステュクスであった。大河ステュクスの長さは父たるオケアノスの十分の一にも及び、地下世界を九重に取り巻いて流れ、このステュクスこそが後に生と死の領域の境界となった。
ちなみに、オケアニナイの一人メティスは知恵の女神になり、後に、ゼウスの最初の妻となる。彼女こそが女神アテナの母である。
ティターン神族の女神長女のテイアは、兄弟であるヒュペリオンを夫とし、太陽神ヘリオス、月の女神セレネ、そして曙の女神エオスを生んだ。
ティターン神族の男神クレイオスは、ガイア(大地)とポントス(海)の娘エウリュビアと結婚して、アストライオス、パラス、そしてペルセスの父となった。
アストライオスは、テイアとヒュペリオンの娘である女神エオスと結婚し、風の神々を生んだ。すなわち、西風のゼピュロス、北風のボレアス、そして南風のノトスである。さらに、星空の神アスタリオスと暁の女神エオスの間には、暁の明星の男神エオスポロスをはじめとし、数多の煌めく天空の星々が誕生した。
ティターン神族の女神ポイペは、兄弟であるコイオスを夫とし、レトとアステリアの二柱の姉妹女神を生んだ。
後に、レトとゼウスの間に、アルテミスとアポロンが生まれることになる。
一方、アステリアは、クレイオスとエウリュビアの息子ペルセスと結婚し、この二柱の間には娘ヘカテが誕生することになる。
ティターン神族五男のイアペトスは、まず最初に、姉妹であり掟の女神テミスを妻とし、この二柱の間に誕生したのがプロメテウスである。テミスには未来予知の能力が備わっていたので、彼女は息子プロメテウスに予言に基づく様々な英知を与えることになる。
後に、このティターン神族の二柱は離別し、イアペトスは、同じティターン神族のテテュスとオケアノスの娘で、オケアニナイの一人クリュメネと結婚し、アトラス、メノイティオス、そしてエピメテウス等の父となった。
一方、テミスは、後にゼウスの第二の妻となり、エウノミア(秩序)、ディケ(正義)、そしてエイレネ(平和)という季節を司る三姉妹女神ホライ(単数形ホラ)と、運命を司る三姉妹女神モイライ(単数形モイラ)たるクロト(紡ぐ者)、ラケシス(長さを測る者)、そしてアトリポス(不可避の者)を生むことになる。
ティターン神族の五女である記憶の女神ムネモシュネもまたゼウスの妻となり、音楽・詩作・言語を司る女神達ムーサイ(単数形ムーサ)を生んだ。この姉妹神が、カリオペ(美声)、クレイオ(讃美する女)、エウテルペ(喜ばしい女)、タレイア(豊かさ)、メルポメネ(女性歌手)、テルプシコラ(踊りの楽しみ)、エラト(愛らしい女)、ポリュムニア(多くの讃歌)、そしてウラニア(天上の女)という九柱の女神であった。
そして――
新王となったティターン神族末子のクロノスが妻としたのが、姉であるレイアで、この二柱の間には六柱の神、女神に関しては、ヘスティア、デメテル、ヘラ、男神としては、ハデス、ポセイドン、そしてゼウスが誕生することになる。
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