【トンボの羽根に秘められたパワー!?……な、なに、そ、そんなものまで斬っているのかよ!?】
トンボって好きか?
私はそこそこ好きな虫だ。
昆虫なんて、基本的に好きくないわけだが……トンボについては、あまり嫌悪感とかを抱くこともないよな。
よくよく見るとグロテスクだし、肉食昆虫だから噛みついてる。
好戦的なタイプのトンボだと、噛まれちまうぞ……っ。
デカいオニヤンマとかなー、ガブっと噛まれちまうぞ。
死ぬほど痛いな。
まあ、甲虫みたいなそこそこ硬そうな甲殻を噛み砕いて食べられるんだから、それぐらいパワフルじゃないと出来ないってことだ。
ちなみに。
オニヤンマクラスのでけートンボさんになってくると、天敵が少なくなってくる。
スズメバチを体当たりでのして、空中で捕獲して、そのままモグモグ食っちまうような個体も珍しくない。
そんなの、もう鳥ぐらいしか天敵がいなくなっちまうよな。
南米あたりのデカいトンボには、巣を張っているクモを餌にしちまうヤツもいるんだぞ。
クモの巣にいるクモに体当たりして捕獲、そのまま巣からかっさらってモグモグ・タイムにしちまうんだな。
……巨大なトンボってのは、もう何でもありかもしれない。
ハイスペックだよな!
そこもトンボさんにグッと来ちまうポイントではある!
ちなみに、ハンティングの方法は体当たりして、前足で獲物を絡めとる。
前足にはトゲみたいな硬い毛が生えていて、個体によれば『返し』までついているな。
グラップリングに適しているというかな。
相手に絡みつくには適した脚だ。
相手に組みついたまま、噛みつくぞ。
強いアゴで噛みついて、ダメージを負わせる……弱らせてからモグモグしちまうんだわ。
同じような捕食のスタイルには、『体当たり』からの『噛みつき』……からの『しばらくの放置タイムで弱らせる』というホオジロザメとかいるな。
トンボの場合はホオジロザメよりも貪食というか、大食いだ。
30分もあれば、自分の体重と同じぐらいは食べてしまう。
有能なハンターということだ。
トンボは優れた殺し屋なんだが、殺しているのは獲物ばかりとは限らない。
意外なものまで殺している。
何をか?
ばい菌を殺しているんだな。
どういうことかと言うと、トンボの羽根には『殺菌効果』がある。
白血球とかの免疫の細胞を使っているわけじゃない。
植物みたいに殺菌作用のある液体を分泌しているわけでもない。
どうしているのか?
斬り裂いている。
トンボの羽根は取りついた細菌を斬り殺しているのだ。
じつはトンボの羽根の表面には、ナノサイズの『突起』が無数に生えている。
この突起……まあ、『トゲ』みたいなものは、あまりにも小さすぎるために羽根に付着して来た細菌に突き刺さってしまうんだ。
細菌ってのは、小さな風船みたいな生き物だ。
細胞膜っていう袋のなかに、生きるために必要なモロモロがセットになって入っているだけのシンプルな生き物だ。
風船に針を突き刺したら、どうなるかな……。
破裂しちまうな。
トンボの羽根の表面の上でも、同じようなことが起きている。
トンボの羽根に取りついた細菌は、刺されて斬り裂かれて死滅しているというわけだ。
こういう物理的な構造に頼った殺菌ってのは、構造が失われるまでは半永久的に機能するよな。
だから、商業利用することも考えられているアイデアだ。
病院とかで薬を使って殺菌していると、その薬に対して強い『薬剤耐性菌』っていうハイリスクなばい菌が生まれやすくなる。
でも、ナノサイズのトゲで斬り裂くだけなら、耐性菌が生まれないんじゃないかという期待が出来る。
やたらめったら頑丈な細胞膜をばい菌が獲得することは、おそらくない。
分厚くなるほどコストがかかるし、細菌にとって不利益そうだからだ。
ナノなトゲを採用した医療現場の器具とかが、そのうち普及するかもしれないな。
トンボさんの羽根にも、ひそかにワクワクがあるんだよ。
トンボさんを研究することで、殺菌業界は新たなヒット商品が生まれるかもな!
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