第15話 自分の気持ちに嘘はつけない
「平良…」か細い声で早千が俺の名前を呼んだ。「ずっと、連絡取れなかったし、顔見れなかったから心配したんだぞ!」と強い口調で言ってしまった。「…ごめん。」早千がまたか細い声で謝る。
「俺こそごめん。急に大きな声上げたりして…何かあったんなら話してよ。友達じゃん。俺にできることがあったら協力するからさ。」平常心を装って早千に言った。
「そっか。友達か…そうだよね。」と早千が静かにつぶやいた。「とりあえず、中に入って。」とカフェラテの袋を持って中に入った。
「…平良、さっき話したいことがあるって言ってたじゃん。何?」と言われたから、「あっ、今日さ、早千の元カレが俺の店に来たんだ。話がしたいって」と言うと、早千は驚いた表情になったと同時に、何とも言えない悲しいような心配そうな複雑な表情をしていた。
「なんか言われた?」と早千が心配そうな表情で聞くから「早千に復縁を迫ったけど、振られたって。」と軽い口調で答える。「それと…早千には好きなヤツがいるって…。」どこか不安な気持ちが言葉に乗ってしまう。俺が一番聞きたい部分だからだ。
早千は、黙ったまま言葉を発しようとしない。俺は咄嗟に「あっ、ごめん。言いたくなかったら言わなくてもいいんだ。気になることがあると、ハッキリさせたくなるタチでさ。でもこればっかりは、早千の気持ち無視するわけにもいかないし…。」と言いながらも気になってる自分がここにいる。
聞きたい気持ちが言葉に乗って溢れて来るようだ。「俺にできることがあったら協力するよ。早千の恋を応援しようと思う。頑張ってみたらいいんじゃないかな。」早千の恋の後押ししてどうするんだ。俺はどこまでお人好しなんだ。自分への怒りがフツフツと音を立てて膨れ上がる。
「…平良さ。どこまでお人好しなの?バカじゃん。バカだよ。」と言う早千の声が微かに震えていることがわかった。「…泣いてるのか?」と聞くと、怒ったように「泣いてないよ!平良があまりにもバカだから。」と言われて「バカ、バカ言うなよ。」と返すと「…本当。バカで鈍感でお人好しで…。全然変わってない。」と早千がはにかんだ。
不意に見せられた笑顔に胸がドクンと高鳴るのがわかった。まるで、自分が早千のことをどれくらい好きなのか思い知らされているようだ。「………」言葉がなくなった。どちらかと言えば諦めのいい方で、納得できる理由であれば、自分から身を引いたり諦めるのも平気だった。
でも、今回は話が違う。早千に優しい言葉をかけるたび、胸の奥が針で刺すように傷んで、モヤモヤしかしない。次の瞬間…「やっぱ、無理だ。早千の恋を応援するとか。」と呟いていた。
「えッ…」早千は驚いた表情で俺の方を見ていたが、もう構っていられなかった。
「俺は、早千の恋を応援できない。ごめん。自分の気持ちの嘘つくことなんてできないし、偽りたくない。もし、早千が他の誰かを好きであっても構わない。素直に伝えるよ。」と言うと、早千の方をしっかり見つめながら「俺は、早千のことが好きだ。これは友達としてじゃない。早千の一番でありたいし、誰よりも早千のそばにいたいっていう意味の好きだ。」
……早千は言葉を失っていた。この沈黙に耐えられず立ち上がろうとした俺の腕を早千が掴んでいた。
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