第14話 好きなヤツって誰!?

「早千に好きなヤツがいるって本当なんですか?」と再び尋ねる。「そう言ってたよ。誰かって言うのは聞かなかったけど…。悔しくて、それでも諦めずに何度も気持ちを伝えたけど、ダメだったよ。」と微笑んだ。


「何で笑ってるんですか?」と尋ねると、早千が俺に正直に言ってくれたのがうれしかったし、何よりあいつの瞳は真剣だった。」と振られたと言うのに嬉しそうに語る姿が不思議だった。


「話はそれだけだから、俺は行くよ。カフェラテ美味しかった。ありがとな。」と言いながら最後の不適な笑みを浮かべてカフェを後にした。


俺は、カフェで仕事をしている間も、早千に好きなヤツがいるというコトが気になってしょうがない。直接聞いてみたいという気持ちだけが高鳴る。


「最近、集中力がなくなってる時が多くないか?」マスターに突然声をかけられた。


「すいません。気持ちを入れ替えて仕事がんばります!」というと、「いいんじゃない。平良くんの年齢だったら、悩みの1つや2つあるもんだよ。そうやって悩んで、やり切れなくて悔しい時期を経験しながら、成長していくものだからね。」と笑いながら話してくれた。


マスターが、今日はお客様も少ないから早めに上がっていいよと言ってくれた。「バリスタの勉強をしてから…」という俺に、「今日はダメです。帰って休みなさい!」とまるで兄のような父親みたいな口調だった。


「じゃぁ、お言葉に甘えて…」と上がらせてもらうことにした帰る準備を整えて、マスターに挨拶をし、テイクアウト用のカフェラテとミルクフォーム多めのカフェラテを作って、お店を後にしようとした


期待はしてない。会えるかどうかもわからないし、ただ1つだけ聞きたかった。それだけは聞きたいと思った。作り立ての温かいカフェラテを2杯抱えて部屋を目指す。


まずは下から窓に灯りが灯っているか確認する。確かに灯りはついていた。「早千は部屋にいる。」それを確認して、俺はエレベーターに乗り込んで、自分の階のボタンを押した。


早千の部屋の前につき、呼び鈴を鳴らす。何度押しても早千が出てくる気配がしない。次は、ドアを叩いた。「早千、中にいるんだろ?何で電話もメールも無視するんだ?俺、なんか気に触るようなことしたか?もしそうだったら、謝るよ。俺、早千と話がしたいだけなんだ。電話やメールっていう方法もあるけど、それじゃダメな気がするから。ちゃんと早千と面と向かって話がしたい。」正直な気持ちをドア越しにいるであろう早千に伝える。


それでも反応がないから「わかった。じゃ、せめてカフェラテだけでも受け取ってくれ。玄関の横に置いておくから、温かいうちに飲んでくれよな。」これ以上、早千に迷惑をかけたくないと思った。とりあえず、カフェラテだけを置いて部屋に戻ろうとした。


次の瞬間、ドアが開く音がして早千の姿を久しぶりに見た気がした。

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