第13話 正直な気持ち

俺は、花をカフェに呼び出した。


「今日は花にこの前の返事をしようと思って…」というと、突然下を向いてしまった。「真面目な話なんだから顔上げろよ。」と言ったら何かぼそぼそと呟いた。


「え?なんて言ったんだ?」と聞き返すと「だから!…言わなくてもなんとなくわかるよって言ったの」と面と向かって言われた。「…………」俺は言葉が出ずに黙ってしまった。


「でも…せっかく平良が話してくれるから聞くよ。」と俺の顔をじっと見つめる。


どこから話していいのかわからず、少しの間沈黙が続く。「最初に、ごめん。俺は花の気持ちには答えられないんだ。正直、花の気持ちは嬉しかったし、ありがたいと思ってる。でも、自分の気持ちに嘘をつくことはできなくて、この思いが実らなくても自分の気持ちに嘘だけはつきたくないって思うんだ。だから…」と話を続けようとすると…。



「もういいよ。平良の気持ちはわかったから。ありがとう。話してくれて。」と優しく微笑みながらお礼を言われた。



俺が軽く頷くと花は、「もう行くね。」と席を立ち、その場を後にした。俺は心の底からいい友達を持ったと確信した。


早千には、部屋の前で会って以来、会っていない。もちろん連絡も取れず、俺の中の心配は募るばかりだった。毎日メールして電話して、しつこいヤツだと嫌われてもいい。そう思えるくらい早千のことが気になっていた。


ある日、俺がカフェのバイトをしているとお店のドアがゆっくり開いた。「いらっしゃいま…せ」俺は思わず言葉を失ってしまったのだ。だってそこには、あの時早千と一緒にいた早千の元カレらしきスーツの男が立っていたのだから。


サラリーマン風の男は、カウンターでカフェラテを注文すると「ちょっと話せる?」と俺に問う。それを聞いていた店長が何かを察したように、「ここは俺に任せて」と融通を効かせてくれた。俺は、「すいません。ありがとうございます。」とお礼を言って、注文されたカフェラテを作り、席まで運んだ。


テーブルの上にカフェラテを置きながら「お待たせしました。」といって声をかけた。「それで、何のご用ですか?」と尋ねると、「早千のことだよ。」と言われた瞬間、『やっぱりか…』と思った。


「あの日さ…君と早千の部屋の前でハチ合わせた時、早千に復縁を持ちかけたんだ。」と言われた。「………そんなこと言うために来られたんですか?」と冷静さを保ちながら再び尋ねる。


「俺は、あの時早千に復縁を持ちかけた。別れた後もまだお前が好きだ。だから、俺にもう一度チャンスをくれないかってさ。そしたら、あいつ『もう気持ちはない』ってさ。他に好きなヤツでもできたのか?って尋ねると、首を縦にだけ1回振ったんだ。」……早千に好きな人ができた。


この人が復縁を持ちかけたこと以上に、俺の中では早千に好きな人いるという事実の方が大きかった。

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