第4話 俺ゲイだよ!
俺が辿り着くよりも、アイツ…
翌朝…
俺は、バイトが終わってからアイツのことを待ち伏せすることにした。気になったらすぐに解決したくなる性格だが、何でここまで気になるのか自分でもわからないけど…ただただ気になるというのが本音だ。
夕方、呼び鈴を鳴らしても出てこないから少し待つことにした。外は風が少し冷たくてこのまま待っても来なかったらまた次にしようと決めていた。すると、足音がこちらに近づいてくるのがわかった。上を見上げるとアイツが俺の目の前にいた。
「ねぇ、俺んちの前で何してんの?」どこかクールでサバサバした口調で言われた。明らかに3年前にイメージとは変わっていることに気づく。
「お、お前!桜花学園出身だって。冬和に聞いたよ。
「…………」アイツは黙ったまま自分の部屋のドアを開けて、「…とりあえず、入って。」と俺を部屋の中に招いたのだ。俺はその言葉に従って、アイツの部屋に入る。俺の背中ごしにドアが閉まる音が響いた。
リビングのような場所に案内されて、腰掛けるように促される。「コーヒーでいい?」と言われたので、「あー。」と短い返事を返した。アイツがコーヒーを淹れている間、変な緊張感が俺を包む。今すぐ逃げ出したくなるような…不思議な感覚だ。アイツは、コーヒーを淹れ終えて、両手にマグカップを持ちながらこちらにやってくる。
「カフェで働いている人の口に合うかわからないけど…」と言いながら、机に置かれたコーヒーを「ありがとう」と言って、一口飲む。「…う、うまいよ」と言うと「そう。それはよかった。」と返された。
その後も少し沈黙が続き、アイツが先に口を開く。「で、何で俺の部屋の前にいたの?」俺の方を見ずに、アイツが質問を投げかける。「…俺、挨拶に来た時、桜花学園高校かって聞いたよな?その時、人違いって…。でも、冬和に聞いたら俺らと同じ学年だったって。だから、何であの時違うって言ったのかな?と思って…。」と言うと、「……それだけ?」と何かを勘づいたようにさらに質問を重ねる。
確かに、俺が気になっていることはそれだけではなかった。あの時、俺が見た光景。男と抱き合ってキスしてた光景が頭から離れなかったからだ。
「…俺、2日くらい前かな。見たんだ。
「そうだよ。俺は男が好きだ。つまり、ゲイだよ。」ときっぱり言われた。俺は、それを聞いて少し驚いたが、それだけだった。抱き合ってキスする瞬間を見た時は、正直驚いて衝撃を受けたが、本人の言葉を聞いて、普通に受け入れていた。「そっか。」って。
だから、そのままのリアクションを正直に返した。「そっか。」そう言うとアイツは「………」言葉を失ったようだった。俺はそのリアクションが意外で「ん?何で?そのリアクション?」と聞いた。
「引かないのか?」と聞かれたから「別に引かないよ。」と答えると「……ゲイだぞ。気持ち悪いって思わないのか?」と、また聞かれたから…。
「うーん、抱き合ってキスする姿を見た時は、正直驚いたし、衝撃的だったけど、今涼風の口から『ゲイだよ』って言葉を聞いたら、潔くて「そっか」ってなった。なんかすんなり受け入れることができたんだ。なんでかわからないけど…。だって、よくよく考えたら女を好きになる人もいれば、男を好きになる人もいるじゃん。誰を好きになろうと、好きな人がいること自体が素敵なことだなって思ってさ。心から愛せる人が現れるってなかなかないことだし、その人と両思いになれるって奇跡じゃんか。そう考えたら、なんか納得いったんだよね。」と答えた。
…………またしてもそこに沈黙が流れた。
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