第3話 同級生の秘密

次の日、バイトが休みだった俺は、高校からの友達である冬和とうわの誘いで何故か大学にある学食を食べに来ていた。「意外にうまいな。学食って…」「だろう〜」とりとめのない会話をしながら昼飯を食べ、カフェでコーヒーを買って大学内を見学する。


大学内を歩いていると、偶然、発見した。涼風早千すずかぜさち、アイツだった。「あっ、アイツ…」思わず声が漏れてしまった。


「あれ?平良たいら、あいつのこと知ってるんだ。ってか、高校の時あいつ眼鏡なんかしててさ、目立たなかったよな〜」驚いた。「お前知ってるの!?アイツのこと。」


そう、冬和とうわに尋ねると「あー、俺の隣のクラスだったかな?3組。その時の彼女がちょうど3組でさ。授業中によく窓の外ばっか見てて、不思議な奴だったっていってたような…。」俺のモヤモヤは確信に変わった。


「やっぱりか!」俺の目は間違いじゃなく、正しかった。


そう思ったら次の疑問が生まれた。

『なんでアイツは、桜花学園高校だったことを隠すのか…?』ということだ。


クラスが違うし、全く面識がないから俺のことは知らないのは当然だが、さすがに高校は忘れるわけねぇだろ。「おい!平良!!何ボーッっとしてんだ?」その声で、我に返った。「ごめんごめん」と返しながらも、俺の中に新たなモヤモヤが生まれただけだった。


マンションに戻る道でも、あのことが頭から離れない。直接聞いてみるかとも思ったが、さすがに唐突すぎるか…。そんなことを考えながらエレベーターに乗り込み、自分の部屋の階のボタンを押す。


エレベータに乗っている時も考えるのは同じこと。エレベーターは、どこの階にも止まらずに俺の部屋の階まで直行した。チン!という音と共にエレベーターのドアが開く。部屋に続く廊下をトボトボ歩いていると、ドアが開く音がした。その音に反応して、顔を上げると開いたドアの先には、涼風早千すずかぜさち、アイツがいたのだ。


「おっ…」と自分を押し殺して隅の方に身を潜める。一瞬、『俺何やってんだ』という素朴な疑問も浮かんだが、すぐに忘れた。ずっとアイツの方を見ていると、アイツと一緒に1人の男が出て来た。年齢は…そう、俺よりも少し年上のような雰囲気で、スーツを着ているサラリーマン風の装い。


なんか楽しそうに話して、抱き合う。驚いたが、『あ〜、海外から帰国して間もないからそういう習慣を持った人なのだろう。』その答えで驚きはおさまった。すると、次の瞬間、サラリーマン風の男がアイツと手をつないだまま、自分の方にアイツを引き寄せると同時に、キスをする光景が目に入った。


人間、言葉を失うとはこういうことなのだろう。初めて見た衝撃の瞬間だった。俺は、その場から動けずしばらく身を潜めた。誰かの足音がこちらに近づいてくる。俺はすかさずスクッと立ち上がっていた。


ふと自分の部屋の方を見ると、こちらを見てサラリーマン風の男を見送っているアイツと目が合う。アイツの目が大きくなったのがわかったから、あくまで平常心を保っているようだった。サラリーマン風の男がエレベーターに乗り込み、ドアが締まる。エレベーターが下りたと同時に、俺は駆け出していた。


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