2020年・礼子・再会


その写真は、一番奥に、まるで隠すかのようにひっそりとしまわれていた。



 学校に勤めていた祖母はとても、きっちりしたひとで。箱にも、何が入っているか。いつ入れたものかを、細かく書く人だったので。 物置のすみに、なにも書かれていない、その古ぼけた箱はとても違和感があった。


「・・・・!!」


中に、その写真が入っており、わたしはそれを見て動機が激しくなった。


「・・・嘘。」


わたしは思わず呟いた。

動悸が激しくなった。


その、写真の中に、、あの人がいた。

私が、こないだ初めて会って。

一瞬で。

好きになった人。


いや、正確には、その人に、そっくりだった。



 そんな訳は無いのは明らかだった。この写真は、明らかに、だいぶ昔に撮られた白黒の写真だった。虫食いなのか、自然にそうなるものなのか、はしがビリビリで、変色していた。


写真の裏に住所が、書かれてあった。

地名は当時とは多少変わっていても、Googleマップでそこに行くのは簡単だった。頑張れば歩いていける距離だ。


もしかして。


もしかして。


居ても立ってもいられなくて。


私は大胆な行動に出ていた。この写真が、あの人と。つながっているかもしれない。と思うだけではなかった。箱の中には写真以外にも、色んなものが入っていた。この写真を持つべき人は、ここの住所の人かも知れなかった。母に図書館で宿題をするといって家を出た。


 そして。やはり、あの人がいた。


 あの人はこの間会った時はスーツだったけれど、今日はバイカラ―のパーカーを着ていた。私服で新鮮だった。今日は土曜日だから、仕事が休みなのだろうか。


私は頭を下げた。あの人は、この間私にあった事なんて覚えていなさそうだった。私は、名前を名乗り、写真を差し出した。


「・・・・・これ。どこにあったんですか。」


その人は、良哉さんと言うらしかった。

驚いたように何度も写真と裏の住所を交互に見返している。

うん。やはりこの人だった。私はガッツポーズを決めて、飛びあがりたい気分であった。なんとなくその人が住んでると聞いただけで来てみて、こんなに早くつながるなんて。やはり運命なのではないだろうか。 この写真が何なのか、真相はまだ分からないけれど。


「ここの住所という事は、ここに住んでいた誰かのものなのかな。とりあえず・・・・。君が持ったままなのも変なので、・・・見せてもらってもいいでしょうか。ありがとうございます。」


 その良哉さんは、仕事中の人みたいに腰を低くし、私からその箱の入った紙袋を受け取った。おばあちゃんは、良哉さんにもお茶を入れに、台所に行ってしまった。

 私は持ってきた手土産の、クッキーを空いているテーブルのスペースに置いた。

 

「・・・あの。私も見てもいいでしょうか。祖母の家にあったものなので、家にあるものが混ざってるかもしれないし。」


 気になってきたし、ここではいさよならとは言う訳にいかなかった。

それ以上に、その箱の中身が気になった。


「いいですよ。一緒に見ましょう。」そう言ってくれ、私はその人の隣にいる事ができた。


 

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