昭和の始め・手紙とコスモスと



それからしばらく。


僕たちは、手紙のやりとりを続けた。




あの日しか、僕たちは会っていなかったが。


麗子さんの顔は今でも簡単に、思い出せた。


外で、女学生を見かけると、麗子さんの通っている女学校を、見るたびに、僕は彼女を思い出すようになった。



お互いの事を教えあい、お互いの好きなことを教えあった。 麗子から、わたしは何々です。あなたはどうですか?。に答えるだけの、一見たんたんとしたやり取りにみえて、僕らにとっは そうではないのだった。



麗子は桜が好きだそうだ。



僕はこすもすが好きです。

麗子さんは桜が好きだそうですが。

コスモスは秋の桜という意味があるそうです。

10月になるので、一緒に見に行きませんか?。

麗子さんの庭に咲いたお花、見たいです。



僕はこう書いた手紙を、麗子さん家の使用人のさえさんに渡したのだが。


それきり。


麗子からの手紙はぱったり来なくなった。


手紙が来なくなって、半月を過ぎ。


僕は、麗子さんを訪ねることにした。

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