2020年・良哉・その一枚の写真
親が離婚してから、僕は一人暮らしを続けている。
気楽な時もあったが、最近は忙しい。
不倫とか通い妻がいるというわけではなく、痴呆を患った祖母が、しっかり薬を飲か確めないといけないのであった。無視したい時もあるが、祖母が一人で散歩に行ってしまうと大騒ぎになるので、僕たちが保護しにいかないといけなくなるのだった。
それでも、昼間は親切な人たちに力を借りれるだけましだったが、そんな、ある朝。
祖母の家に来てみて僕は驚いた。
いつもひとりのはずの祖母が、若い女の子と2人でお茶を飲んでいたのだから。
女の子は僕の顔をみて、立ち上がった。
ふんわりとした花柄のネイビーのワンピースに、半そでのカーディガンを来て、足の爪はワンピースと同じネイビーの色をしていた。
一瞬だけ・・・。どこかで見た女の子だと思った。
「こんにちは。」
女の子は頭を下げた。
「私がお茶を飲んでって言ったんだよ。」と祖母の声がする。そうでしょとも・・・。祖母はそういう人だから。
お年寄りを狙った詐欺というのが頭をよぎったが、高校生くらいの女の子だ。そんな風には見えなかった。その子は何か訴えたそうな顔で僕の顔をじっ・・と見ていた。
「あの。覚えてますか・・・。」
女の子の消え入りそうな声を僕は聞き逃した。女の子は、切り替えたように僕に言った。
「私。岩名礼子といいます。これ、・・・この写真、祖母の家から出てきたんです。この住所はここですよね。」
差し出されたのは、一枚の写真だった。
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