エピソード6 コンクリートの森

まるで廃墟のような裏通り。

男は暗闇に潜む光を見つけた。

ペプシの瓶が転がるコンクリートの上を歩いている。

足でペプシの瓶を蹴飛ばしながら暗闇の光に近づいていく。

狼のような鋭い眼。

「大人しくしなよ。いいもの上げるから」

女が立ち上がって男の横をすり抜ける。

男は彼女を追いかけた。

「それで見つかったの、その狼は」

女が彼にきいた。

「あの女は森にいたんだ」

男はミラーの瓶を持って、一気に口の中に流し込む。

「どこの森」

「海の近くだよ」

「川を下ったビーチ?」

そう言って、彼女が考え込む。

「でも、あの辺に森はないわよね」

「もう森には行かない」

彼は彼女を見つめる。

「どうしたんだい」

「砂漠の先なんでしょう」

「男と女が抱き合っていた」

「ねえ、どうしたらいいの」

彼女はピザを一切れ丸めて口の中に。

「ミラーはいいのかい」

「クアーズにする」

「同意できないね」

彼女はピザを飲みこんで紙ナプキンで口を拭った。

「コロナビールちょうだい。ライムなしで」

「同意できない」

「かまわないわ」

彼女はコロナのビンを持ったまま立ち上がる。

「どこに行くんだい」

「森に行くのよ」

男が彼女を追いかけていく。

「行かないんじゃなかったのかい」

「コンクリートの森よ」

「羊が迷い込んでるかも」

女は振り返って彼に言った。

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