エピソード5 厚切りベーコンとマッシュポテト

見渡す限りの乾いた砂漠と目の前を横切る舗装された道路。

彼は厚切りベーコンとマッシュポテトをフォークを使って口に運んでいた。

機械的な動きをじっと見ている彼女。

店の中には音楽が流れている。

単調なリズムを刻むギターリフとつぶやくようなボーカル。

それに寄り添うベースとドラムス。

「あの女はどこから来たの」

彼女は男にきいた。

「腰に布切れを巻いていた」

「白いワンピースだよ」

女はドクターペッパーのビンにストローを差してゆっくりと啜り上げる。

「どうして、直接瓶から飲まないんだ」

男が彼女に言った。

「いいじゃない」

「炭酸は嫌いかい」

「そんなことないけど」

彼女は手でちぎったハンバーガーを口の中に入れる。

「森から逃げて来たんだよ」

「あたしたち?」

「あの女だよ」

「若い男がいるのよ」

彼女の言葉に彼がニヤリと笑う。

「若い男はここに居るだろう」

「ねえ、海まではどのくらい」

「わからない」

「砂漠の先は海じゃないの」

「砂漠の先は砂漠さ」

ステーションワゴンが夕日を受けて輝く。

「今日も車で寝るの」

「埃っぽいモーテルがいいのかい」

「シャワーが浴びたいの」

「それじゃ海まで突っ走るしかないか」

男は皿に残った最後のマッシュポテトをすくい上げた。


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