第16話 誘拐
「くぅー、今日もいい朝だなぁ」
「そうですね」
クスッと笑いながら相槌を打ってくれるリサ。彼女の笑顔を守るのが、俺のこれからのゲーム生活の課題だと思ってる。
ひとまず朝食をその辺のレストランで済ませて、狩りへと向かう。
今日はリサのレベリングに付き合うと約束したのだ。最低でも24から50までは上げたい。んでもって、まずはお手ごろな【スリム・ベアー】から狩ることにする。
スリム・ベアーとはその名のとおり、痩せているくまの事だ。だが身長はやはり熊なので、めちゃくちゃ大きい。だいたい2mぐらいだろうか。そこまでだったな。
「あの熊から狩ろう。最適な狩り方はスキルブッパだな。硬直時間も考えて、ブッパすること」
「は、はい!」
やつのレベルは36。この東の大陸では高い方だ。西の大陸ではリサのレベルが低すぎるため、レベリングに適していない。俺一人では厳しいからだ。だから、東の大陸に戻ってレベリングをしている。
「こ、こんな感じですか?えいっ!」
「ふふ、当たってねぇな。まだまだだよ。もう少し、腰に力を入れて目の前の敵の動きを確認。行動パターンを見極めていつ隙をつけばいいとか考える。これが、戦闘の基本だから。覚えておいてくれ」
「は、はい!」
リサの双剣による右から左の通常攻撃でありながら2回攻撃の特徴のある攻撃がスリム・ベアーに斬りかかるが、びくともしない。
「まあ、レベル差があるから仕方ないか。エレクトロ・ショット【単体】」
スリム・ベアーは電撃攻撃によって、倒された。一瞬でHPバーが吹っ飛んでくもんだから、俺は強くなったんだなと実感する。
「す、すごい……。最弱職と呼ばれてる片手剣にこんな強さが」
「ふんっ。この強さがなかったら、お前を助けられなかったんだからな。もう少し感謝してくれ」
「はーい」
中学2ぐらいだと思われる彼女はほんとに可愛らしい。やつらを殺して正解だったと思う。でも、殺人犯になってしまったのはとても悔やんでいる。自分はどうしてあんなことをしてしまったのかと。
悪事を働いていても人は人。そんなことを考えていると自然に涙が出てきてしまう。
「どうした……んですか?」
俺は涙を拭いながら答える。
「ううん。なんでもねぇ。さっさと次行くぞ」
彼女がふふふと笑うのでどうしたのかと問うと。
「だって、怖い人じゃないってようやく理解できたから。嬉しくって」
「そ、そうか。怖がらせてたみたいで、すまなかったな。礼に装備を新調してやるよ」
「ほ、ほんとですか!?」
「ああ」
レベリングついでに素材を集め終えた俺は、近くの森林の中の一軒家にいるという腕がたつ鍛冶師に会いに行った。
「ふむふむ。これだけの素材があれば、そこのハイメタル・ソードより少し優れた双剣ができるぞい。どうするんじゃ?」
年寄りNPCであった。
「ぜひ、お願いします」
まあ、リサに内緒でこの鍛冶師の家に来た訳だが。双剣を見せるために、彼女から借りてきた。
「1日。1日、待ってくれんかのう?」
「待てますよそのぐらいは」
年寄りのおじさんと契約を交わして家を出る。近くにあるイデアルという街の宿屋にてリサは寝ている。
「さ、早く帰ろう」
アサシンスキルの瞬間移動を匠に使って、街に早く着いた。リサのいる宿屋に行き、もうすっかり意気投合もしたので同じ部屋で寝ているのだ。
「リサ?いるかい?ただいま」
返事を待たずに、部屋に入る。しかしそこには、リサの姿はなかった。ただ、机上にある手紙しか置かれてなかった……。
「リ、リサ!?」
急いで手紙にかけよる。そこに書いてあったのは
『リサという少女を返して欲しければ、武器を持たずに一人で来い。さもなくば、この子は郊外の砂漠にて公開処刑とする。byMY』
MY……?砂漠……?どういうことだ
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